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一章 04 死にかけの狐と


 狐を見る。死にかけて、荒かった呼吸も静かになってきた。

 でも、死んでない。まだ生きている。

 それなのに見捨てるのか。

 さっきの誓いは何だ。心まで化け物になる気か。

 迷ってる暇はない。踏ん張れ。

 今オレが動かなければ本当に死んでしまう。


 体の震えが止まった。


 狐に素早く近づき、体で包む。

 呼吸はできるように頭だけ出して、そのままその場を離れた。

 とにかく、人間に見つかるとまずい。


 移動しながら狐を〈解析〉し、〈錬金術〉を発動させる。

 今現在、作れるなかで一番効果の高い「体力回復薬」を作り、狐にかけた。

 効果はすぐに表れた。淡い緑の光が狐を覆い、傷口が塞がっていく。

 驚いたことに、千切れかけた足も、大きく斬られた背中もきれいに再生されていった。


 思わず移動を止めたが、感心している場合ではない。早く遠くへ逃げなければならない。

 〈解析〉した結果、この狐は魔物のようだった。少ないが魔力も持っている。

「魔力回復薬」もかけておく。


 だが、狐は目覚めない。まだどこかに傷があるんだろうか。

〈解析〉を進める。

 魔神様は、〈アビリティ〉は使えば使うほど使い勝手が良くなると言っていた。

 まだ体内のことがわかるほどレベルが上がってないのか。

 オレが見落としているのか。


 大きな木の根元に、穴が空いてあるのを見つけた。

 一旦ここに隠れて、まずは狐の治療に専念することにした。

 焦ってもロクなことにはならない。

 穴はオレと狐がなんとか入れる程度の狭いものだった。

 出入り口も小さい。これなら見過ごされるかもしれない。


 狐を一番奥に置き、枯れ葉で出入り口を隠した。

 気休めかもしれないが、これで狐に集中できる。

 〈解析〉は続けていた。細い触手を何本も出して、隅々まで調べる。

 傷はない。

 毒を受けた形跡もない。

 こんな時、ゲームなら薬を使えばすぐ動けるのに。

 現実はそうはいかない。オレには知識もない。

 どうしよう。焦りばかりがつのる。


 ふと、ひらめいた。

 ゲームになくて現実にあるもの。


 血液だ。

 この狐は魔物だが、血が通う動物に近い体を持つ。

 あれだけの大怪我だ。体に必要な血液を失っている可能性は高い。

 すぐさま〈解析〉で調べる。

 予想通り、必要な血液の量に足りない。

 答えは出た。輸血だ。

 〈変幻自在〉で、触手の一つを針状に変え、狐の前足の血管に刺す。

 あとはオレの体を〈解析〉した狐の血液に変え、流し込むだけだ。


 たぶんこれでいいはず。

 きっと。

 絶対じゃないけど。

 間違いじゃないと思う。

 違うかな。

 ダメかな。

 治るといいけど。


 不安で仕方ない。

 オレの前世が超絶技巧を持つ天才的な動物の医者とかなら良かったのに。

 思い出せる限り、平々凡々な人生しか出てこない。


〈解析〉をして、様子をみる。

 とりあえず、なんとか必要な量の血液は入れられたみたいだ。

 針を抜いて、回復薬を少しかける。

 あとは意識を取り戻してくれれば、安心なんだけどな。


 うーん。あれ、輸血って短時間で一気に入れたらまずいんだっけ? 関係ない?

 本人(本狐?)の血液だから大丈夫かな?

 もうダメだ、ぜんぜんわからない。自分の行動に対する不信と不安しかない。

 ごめんな、狐。オレの頭がもっと良かったら、的確に治療できるのに。

 治ってくれ。頼む。


 触手を出し、頭を撫でようとして、できなかった。

 体が動かない。

 そういえば、音も聞こえないような気がする。


 いや、気のせいじゃない。実際に聞こえない。

 暗い穴の中で気づかなかったけど、視界も閉じかけてる。

 慌てて、自分に向けて〈解析〉を発動する。

 体が縮んでいた。最初の大きさの半分以下、四分の一より少し大きいってところだ。


『それから、素体は魔力で構成されていると言ったが、使えば減る。

 一定量を割れば身体を支えられなくなり、消滅する。要は死ぬ』


 魔神様の言葉がよぎる。〈記録保存〉でバッチリ思い出せる。

 代わりに視界が閉じて真っ暗になった。


 〈アビリティ〉は魔力で動かす。魔力がなければ動かせない。

 つまりこうして〈アビリティ〉が使えなくなっているのは、残りの魔力が切れかかっているってことだ。


 そして、オレが考えたり複数の〈アビリティ〉を同時に使えたりするのは……

〈並列思考〉のおかげであり……


 でも〈並列しこう〉も〈あびリティ〉のひとつだから……


 まりょくをしょうひするげんいんであって……


 あれ なんだ か きゅう にね む  い



 思考が定まらない。

 言葉が浮かんでは消えていく。

 死とはこんなにも不定形な穏やかさを持つのか。


――やがて、オレの意識は闇に沈んだ。


《与太話》

これにて10話目、2ケタ突入でございます。ばんざーい。

更新するたびに読んでもらえていることを確認し。

何もない日に読んでいる方がいるのを確認し。

何万もある投稿作、書籍化作品にランキング上位作品、上を見ればキリがないこの場所で、拙作を読んでいる方々がいらっしゃる。

有り体に言って、幸せを噛み締める日々でございます。



みんなー!! ありがとぉーー!!!!!(感情の大爆発)

文字数少ないくせに更新遅くてごめーーん!!!(ホントにすまないと思ってる)


とっぴんぱらりのぷう

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