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序章 1 そびえ立つ誰か


 オレは死んだらしい。


 らしい、というのも、どうにも記憶があやふやで、どうやって死んだかも定かでなく、目の前にそびえ立つ誰かに教えてもらったからだ。

 そびえ立つなんて、まるで山に使うような表現だが、実際にそうとしか言い表せないのだから仕方ない。


 でかい。もうめっちゃでかい。むちゃくちゃでかい。


 オレの体の何倍もある巨人がそこにいた。座ってその大きさだから、立ち上がったらどれだけ大きいのか。

 ぽかんと見上げるうちに、いつかどこかで見た大仏様を思い出す。

 死んだ記憶はないのに、なんでそんなことは思い出せるんだ、オレよ。


 そして残念なことに、巨人の胸は小さかった。小さいというか、ない。ぺったんこだ。

 どうやら男のようだ。

 切れ長の金の目に、透き通るような白い肌。

 顔立ちは一見すると女性のようにも見えるが、しっかり喉仏があった。

 深い青紫の髪は伸ばしたまま滝のように流れ落ち、手入れをしている様子もないのにつやつやと輝いている。

 いや、よく見ると髪の毛自体が光っているようだ。おかげで後光が差しているように見える。


 男の豪華さに比べると、着ている服はいくらか地味だ。

 あくまで比べたら、の話であって、たぶんオレが着たら服の方が勝つと思う。

 乏しい知識で例えるなら、ギリシャ神話に出てくる神様の格好が近いだろうか。真っ白な布を体に巻くあれだ。

 ただその布には、色とりどりの刺繍や宝石のような石が付いており、派手と言えば派手だ。


『――どうした? そんなに呆けて』


 男が口を開けずに喋る。腹話術ではない。頭に直接響いてきた。やはり人間ではない。

 オレは返事を返そうとして、口が開かないことに気づいた。

 別に何かで塞がれてる訳じゃない。そもそも口の感覚がない。

 とっさに手を当てようとして、手もないことに気づいた。


 なんだかおかしい。おかしいぞ?


 改めて自分の姿を確認する。下を見る。右を見て、左も見る。体をねじって後ろも見る。

 丸くて、真っ白で、下の先端がキュッと細くなってる。

 地面から浮いているしどう見ても人間じゃない、何となく覚えがあるこの形状。

 これはたぶん、魂ってやつだ。いや人魂かな。漫画とかアニメで見たことあるあれだ。


 ってなんでだよ!!


 なんで!? なんで魂だけなの!? オレ死んだの!?

 死んだわ!! 今さっき言ってたわ!!


 巨人に気を取られて考えなかったが、というか考えたくなかったが、どうやらオレは死んだらしい。

 あ、これもさっき言ったか。


 落ち着け。まずは落ち着こう。

 周りをぐるりと見渡す。目の前の巨人から出発して右に視線を巡らせる。

 赤茶けた大地に同じ色の岩がゴロゴロ落ちてる。

 どこを見ても草の一本もなく、生き物の気配はない。

 中途半端に明るい灰色の空には何も浮かんでおらず、薄曇りの空模様を思わせた。


 うん。あー、うん。


 これはもしかしたら夢かもしれない。そうだきっと夢だ。

 あーでもオレの夢ならこのでっかいお兄さんじゃなくておっきいお胸のお色気お姉さんがたくさん出てくるはずだから違うなー。違うかー。残念だなー。


『やはりどこか具合でも悪いのか? できるだけのことはしよう』


 心配そうな声に我に返る。

 そうだ、返事しなきゃ。

 でもどうやって?


『心で強く思えば、こちらで読み取ることができる。さぁ、もし痛みがあるなら言ってくれ』


 両掌に乗せられて、ゆっくりと持ち上げられた。

 心配そうな顔が近づく。やっぱりでっかい。じゃなくて。


『えぇと、その。痛くはないです。具合も良いと思います』

『そうか。それならば良い』


 ほっと顔をほころばせるお兄さん。よかった、通じた。


『動かないかと思えば、突然激しく身悶え始めたからな。さすがに驚いた。』


 それは驚くわ。オレもビビると思う。


『お見苦しい姿をさらして申し訳ありません』

『いや、何もないなら良い』 


『さて』、と。

 お兄さんは居住まいを正し、オレに向かってゆっくりと語り始めた。


『異界より来たりし魂よ。よくぞ参られた。

 私は天上の神々よりこの地獄に封じられた魔神。どうか私の願いを聞いてはもらえないだろうか』



初投稿です。

よろしくお願いします。

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