6.転機
どっもあじすとです。
また少し期間が空きまして第六話であります。
先程出来た武器の説明をしておこう。
見た目は刀そのもので、切れ味は木材程度なら易々と切れる。耐久力は、少し上等な剣ぐらい。以上、説明終わり。
『イチ様、せっかく作った剣なのですから、名前をつけてみては如何でしょう?』
『名前かぁ...』
何か気恥ずかしいなぁ
『そうだな。まぁ無難に「春」で。』
『春、ですか。』
『始めて造った刀と言うのと、始まりの季節と言うのをかけてみた。』
『良い名前だと思います。』
刀改め「春」を抜いてみる。表面はまるで鏡のように輝いていてとても綺麗だな。それに自分の魔力で作っただけあってとても手に馴染みそうだ。
ん?ちょっと待てよ?自分の魔力ってことは......試してみるか。
『ミケ、ちょっと離れていてくれ。』
『?はい』
春に魔力を流してみる。
.............流れた...と言うことは春は私の体の一部と同じ扱いになっている?
それはつまり...
『ミケ、そこにある板を投げてくれるか?』
『?はぁ..』ヒョイッ
よし、春に魔力を流し、周囲の空気を複製、そして出来た高密度の空気を薄く刃に纏わせ、切る。
スパッッッカランカラン
軽快な音と共に木材は真っ二つに割れた。あ、ダメだこれやばいもん作っちゃった。刃に魔法を纏わせられる剣とか、唯の魔剣ですねはいわかります。
動揺のしすぎで口調がおかしくなったな。
それはそうと、ただの護身用の剣を作るつもりがとんでもねえもん作っちまったよ。ははっ
『.........』
『.........』
『これは人前では使えないな......』
『そうですね...』
『と、とりあえず帰ろうか。』
『はい...』
と、そんな時だった。父から呼び出しがかかったのは。
「イチ様、当主様より、至急執務室へとのことです。」
「分かりました。すぐ向かいます。」
『なんでしょうかね今更。』
『分からない、だが至急と言うことはそれほど火急の用件なのだろう。』
コンコンコン
「イチです。入ってもよろしいでしょうか?」
「入れ」
「失礼します。それで何の御用でしょうか。」
「ああ、単刀直入に言う。今この町に大量の魔物が接近しているとの情報が入った。」
「ッッッ!?そんな...」
「原因は分からないが調査隊の報告によると明後日にはここに到着するだろうとのことだ。」
「回避する方法はないのですか?」
「もちろんあるぞ?今ここには飲むと魔物を呼び寄せる効果のあるポーションがある。さらに今私の前には何の使い道もない無能が一人。ここでお前がどうすべきか、分かるよなぁ?」
父が今まで見たことのないような顔で私にそう言ってきた。この顔をどう形容していいのかわからないが、唯一つ言える事はその顔は間違いなく外道のそれであったことだけだろう。
「少し、考える時間を頂けませんか。」
「勿論だとも、こんな決断子供一人に出来ることではないからな。」
「ありがとうございます。では...」
「そういえば、我が家にはもう一人とても優秀な子供が居たっけなぁ。ん?いやなにこちらの話だ、気にするな?」
それで、頭も使えると言うのだから尚、たちが悪い
「ッッ!!しつれい...しました。」バタンッ
――自室――
『イチ様...』
『あぁ..何でこんなことになったんだろうなぁ。』
こころが、曇っていく。
『何で私がこんな目にあわなくちゃいけないんだろうな。』
頭ではうすうす分かっていた、いつかはこんなときが来ることが。
思えば、転生する前でも少し考えればこんなこと簡単に予想ができた。
転生した先で必ずしも良い親に恵まれるかなんて分からないことぐらい。
戦争の無い日本での恵まれた環境が判断力を鈍らせたのだろう。ここは、戦争が当たり前のように行われている世界で、日本とは比べ物にならないぐらい「命の重さ」が軽い世界なのだ。
こころに、ひびが入る音がした。
分かりきったことじゃないか、そんな世界でこのような緊急事態が起きたとき、真っ先に生贄にされるのは私のような無能なことなんて。だから対策のしようはいくらでもあったはずだ。
だが私はそれをしなかった。きっと心のどこかで無意識の内に考えてしまっていたのだろう、この世界は、本当はやさしくて、どんなに最悪の場合でも、大事には至らないだろうと。そんな甘い考えを持ってしまうくらいに、私はあの恵まれた生活に依存してしまっていたのだろう。
ひびが広がっていく。
この世界の危険さを正しく理解できていれば、こんなことにはならなかったこと等、火を見るよりも明らかだった。
「そうだよ。もう何もかも手遅れなんだ、何をやっても、もう無意味なんだよ。」
ココロガ、コワレ――――
『イチ様』パチンッ
不意に頭に来たのは衝撃だった。頬をたたかれたのだろう、頭の中から一切の雑念が取り払われ、思考がクリアになったことで、ようやく我に返った。
「は......」
『まずは落ち着きましょう。考えるのはその後です。』
「そ、そうだな、すまなかった」
『はい。落ち着きましたか?』
「あぁ、ミケのおかげで我に返ったよ。ありがとう。」
我に返ったことで、自分がどんな状態に居たのか理解すると同時に、ミケが居なかったら、自分がどんなことになっていたのかを想像し、恐怖した。
『主をそれでは作戦会議と行きましょうか』
『ああ、まず敵の数は?』
『ざっと見積もった限りでは、少なくて400、多くて600は居るでしょう』
『正面きって戦った場合の勝率は?』
『1%もないかと』
『まぁ、そうだよな。じゃあ近くの山の洞窟へ誘導するか、あそこなら前からくる敵だけ相手にしてればいいし、まず細かな作戦を立てたところであの圧倒的な物量に通用するわけがない。こちらも死ぬ気で、それこそ腕の1本や2本くれてやる覚悟で挑む。そんな犠牲ですむのかは分からないが。』
『明後日になれば分かりますよ。』
さっきの思い雰囲気が嘘のようだな。
『死ぬ気で生き延びるぞ、ミケ、着いて来てくれるか?』
『勿論ですとも』
よし、まずは少しでも生存率を上げるために、危険だからと長年お蔵入りになっていた魔法を実用段階にしよう。
その魔法と言うのは、まぁ雷魔法だ。ロマンだな。
まず、冬に調べた静電気の起きる服に着替える。
そして魔力を流し、電子を増やす。
「よし、行くぞミケ。」
そして手でミケに触れる。すると
バチッ!!!!!
「いったぁぁぁぁぁぁ!」
『で、でも成功ですね。』
『うん、そうだな』
いまやったのは地球でもよくあった冬に人とかに触ってバチッいったぁていうやつ。あとはこれを倍の魔力でやればもうね皆さんお察しの光景のできあがりってな。
『問題は、使用者にもダメージが来るって言う事だが...』
『どうしたものですかねぇ』
『体を魔力で覆ってみるか。』
結果、魔力はそんなに万能な物質じゃない。以上。
『もう日付が変わってしまうし、これは明日考えるか。』
『そうですね。』
『んじゃお休みミケ』
『お休みなさい、イチ様。』
以上第六話です。あざしたぁ




