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49 新たな仲間

 



 ポイントによる能力の集中強化。

 それを決意した俺は、ひとまず現在の自身と召喚獣の能力情報を表示させる。



――――――――――

冒険者名:ソーマ

職業:召喚士Lv14

現在位置:ログアウト


装備:初級魔術師の杖

   初級魔術師のローブ

   初級冒険者の上衣

   初級冒険者の下衣

   初級冒険者の靴


固有技能:【召喚術】

技能:【指揮】【鑑定Ⅱ】【分析Ⅱ】


称号:《小鬼の天敵》


所有ポイント:3753P

――――――――――


――――――――――

個体名:クロード

固有名:黒狼(ブラックウルフ)Lv1

種族:魔獣

契約者:ソーマ

関係:信頼

特殊技能:【暗殺】


召喚制限:(0:00/3:00)

――――――――――


――――――――――

個体名:ヒスイ

固有名:魔梟(マギオウル)Lv1

種族:魔鳥

契約者:ソーマ

関係:良好

特殊技能:【風術Ⅱ】【飛行】


召喚制限:(0:49/2:30)

――――――――――



「……改めて確認すると、恐ろしいペースで経験値も稼げてたんだな」


 いつの間にか十四まで上がっていた【召喚士】の職業レベルに、俺は驚き半分、呆れ半分で呟く。

 なお、呆れの部分はそんな重要な点すら見逃していた自分の愚かさに向けてであった。


 確か朝の段階でレベルは十一だったはずなので、午前中だけで三つも上昇したことになるな。

 まあ、あれだけのゴブリンの群れを相手にしてれば当然か……と俺は納得しておく。


 正確な個体数を数える暇はなかったが、一つの群れは平均三、四匹で構成されていた。多いときは十匹近くも現れる。

 しかもそれが一回の戦闘で、下手をすると五つも六つも誘き寄せられてきたのだ。第二階層は情け容赦がなかった。


 そんな戦闘が十数回も繰り返されたのだから、この結果にも納得がいくと言うものである。


 午前の合計で、三百匹はゴブリンを狩っていただろう。

 それを六人のパーティーで均等割りするので、成果としては一人につき五十匹以上になる。


 第一階層では一日に七十匹くらい討伐していたので、数の上では減っている。が、経験値とポイント効率では比べ物にならないんだよな。


 恐らく……と言うか想像になるのだが、第二階層からは他の《冒険者》とパーティーを組んでいることを前提に設定されている気がする。

 そりゃあ、一人での攻略も不可能じゃないだろうけど、あまりに条件が厳しすぎるだろう。


 下層で基本的な《冒険者》の仕組みを体験させて、上層からはお互いが自然と協力するように促す。何故だかウサギのそんな思惑が感じられた。

 第一階層は本当に温かったんだなぁ……と俺は独りごちてから、脱線していた思考を切り替える。


「召喚獣たちには、当たり前だけど変化はなし……いや、関係が良くなってるな」


 クロードは『良好』から『信頼』に、ヒスイも『良』から『良好』になっている。

 関係が悪化してくると命令に従ってくれなくなったり、最悪だと契約が打ち切られたりもするので、これは喜ばしい結果だ。


 ……うん。逆に言えば、それ以外の部分は召喚制限時間の拡張を除いて、全くの手付かずと言うか、一切の強化をしていなかった訳だが。


 致し方なかったのだ。初期状態からゴブリン相手に無双できていた召喚獣をさらに強くするより、優先度が高い他の強化先が多すぎたのだ。

 事実、今まではレベルを上げたり新たな技能を覚えさせずとも、クロードもヒスイも魔物達と対等以上には戦えていた。


「だけど、そろそろ厳しくなってきてるよな……」


 今日の戦闘の様子を振り返りながら、俺は痛くなってきた頭を押さえる。


 クロードは敵を仕留めるまでの時間が長引いて来てるし、複数を正面から相手にすると、どうしても足止めに徹しなければならない場面も出てきていた。

 特にヒスイは主な攻撃手段が魔術である関係上、一戦一戦の消耗が馬鹿にできないほど大きくなっている。精神力という残弾を気にして、召喚しているにも関わらず戦闘に参加できないこともあった。


 この辺りで召喚時間以外にも、彼らに何らかの強化を施しておいた方が良いのは明白だ。


「さて……しかし何処か手をつけるべきか」


 俺自身が新しい技能を習得する……と言う選択は、今回は見送って構わないと思う。

 正直、現状で俺は【指揮】の行使に戦闘中の思考の大半を割かれている。ここで更に別の技能を得たところで、持て余してしまう未来しか見えてこなかった。


 あれこれ手を出してすべてが中途半端になるよりは、一つのことを完璧にこなせた方が良い。


「と、なると……やっぱり『召喚獣たちの能力の底上げ』か、《換金店》で『上位の装備に買い換える』辺りが現実的な選択だよな」


 現在の改善点と言うか、第二階層で安定した攻略を進めるために必要なのは、とにかく一回の戦闘での疲労を抑えることである。

 すると必須になってくるのは、個人の戦闘能力の向上か、あるいは援護や回復などサポート手段の充実だろう。


 はっきり言って、一対一なら第二階層のゴブリンだって怖くはない。多少強くなった程度で、負けるような差ではないのである。

 アイツらが厄介なのは、徒党を組んで襲ってくること。まさに戦いは数だよ兄貴っ!


 こちらは人数の関係上、常に一対複数で相手をしなければならないので、その分だけ消耗が激しいのだ。

 そして戦闘に時間がかかれば、また新たな群れが追加される……と。本当に面倒な魔物だった。


 まさに一匹見たら三十匹はいるとまで言われる、あの台所の黒い悪魔を彷彿とさせる。ゴブリンとかマジで滅べば良いのに。


 まあ、愚痴を吐いても現実は変わらない。第二階層への対策を続けよう。


 これまで出てきた案としては、


 ・既存の召喚獣の強化。

 ・俺の装備の更新。


 ――が、ある。


「他には……新しい召喚獣と契約するって方法もあるけど」


 それって、けっこう不確定要素が強いからな……と、俺は眉根を寄せる。


 相手の数が多いのなら、こちらも数を増やせばいいじゃないか! という作戦とも呼べない単純な発想。

 それは間違いではないが、どんな召喚獣と契約を結べるか、実際に召喚してみないとわかんないんだよなぁ。


 ある程度の方向性は表層の欲求や深層心理から読み取ってくれるものの、召喚者の適性やらなんやらでランダム性が強いのが、【召喚術】という魔術だ。


 一例を挙げよう。


 例えば、『戦闘特化の召喚獣が欲しい』と願って召喚を行った時。殆どの場合で、契約できるのは戦闘能力を有した召喚獣だろう。

 しかし、確率によっては俺自身が把握していない『願望』を読み取られて、全く別の特性を持った個体と契約してしまう事があるのである。


 極論、今回の件では役に立たない……と言うことはないはずだが、戦闘向けではない、例えばクロのような超斥候特化の召喚獣が出てくる可能性も否定できない。流石にかなりの低確率だとは思うけど。


 だが、味方が増えるのは素直に魅力的なんだよな。


 現在のところ、俺はクロードとヒスイの二体の同時召喚が可能とは言え、継続戦闘時間を優先してどちらか片方しか呼び出していないことの方が多い。つまりは枠を一つ余らせている状態な訳で、これは勿体ない。


 ここにもう一体、前衛をこなせる召喚獣が入ってくれば、かなり前線が安定すると思うのだ。


「堅実策を取るか、召喚獣(アタリ)に賭けてみるか……なんだが」


 デバイスの画面の前で指をさ迷わせていた俺の脳裏に蘇るのは、今日のベルの活躍。戦場を縦横無尽に駆け回り、奇襲に続く奇襲で敵陣を刈り取っていく姿だ。


 でもあれって、本来ならクロードの(・・・・・)立ち位置(・・・・)なんじゃないか?


 湧き上がってくる確信じみた疑問に、答えは返ってこない。

 けれど、考えれば考えるほどに、それは俺の中で声高に叫んで主張し始めた。


 一番最初に俺と契約を結んでくれた存在であり、それ以降も俺の剣であり盾となってくれている召喚獣。

 だが、思い出してみると、クロードが初期習得していたのは【暗殺】――奇襲時の能力に一時的な補正を与える技能である。

 これまでは近接戦ができる召喚獣がクロードしかいなかったから前衛を任せていたけど、方向性としては明らかに遊撃向きの能力だった。


 実際、強化項目の『召喚獣技能習得』の一覧を開いてみれば、クロードの欄には【気配遮断】や【気配察知】など、斥候系の技能が比較的低いポイントで覚えやすくなっている。

 《冒険者》の場合、技能の習得コストは職業との相性によって増減することを考えれば、この事実は俺の推測の裏付けにもなる。てか、本気で斥候系に進ませるなら【気配遮断】は絶対に欲しい。


 必要なのは500ポイント。今なら躊躇なく払える数字だった。


 ヒスイは……念のために確認しておいたが、取れるのは魔術関連の技能が多い。こっちはこのまま後衛を続けさせても大丈夫だろう。


 ザッと流し見したが、覚えさせておきたいのは精神力の回復を早める【瞑想】の技能だな。

 一切の行動を禁止され、その場から動けなくという欠点もあるが、ヒスイの体躯なら俺の肩に掴まって移動できる。どうせ戦闘中には使えないので、実質デメリットなしだった。


 こちらは習得するのに必要なポイントは700。少し重いが、十分に払える額だ。


「となると、ますますもう一枚壁がいるな」


 前線で活躍させていたクロードを遊撃に回すとなると、どうしても壁の数が足りなくなる。前衛が不足する。

 明日はその一翼を担ってくれていたゴウキさんが抜けることを加味すると、近接戦ができる仲間の補充は必要不可欠だった。


「考えれば考えるほど、契約枠の拡張が正解に思えてくるが……」


 くしゃり、と俺は視界にかかってきた髪を掻き上げながら、これまでの考察に見落としがないか、更に深く思考を進めていく。


 確実に前衛特化の召喚獣と契約できる保証はない。最悪、強化に使用したポイントを丸々無駄にしてしまう結果にもなりかねないが……いや、違うな。

 使った分のポイントは無駄にはならない。将来的には必ずプラスになる。それはいつかの【鑑定】と【分析】の技能が証明していた。


「鬼が出るか、蛇が出るか……なんて例えは、この場合は適切ではないのかな?」


 固まりかけた決意に、高鳴る心臓を抑えるよう俺は胸に手を当てる。

 気分的には、スマホのソシャゲでガチャを回すかどうか悩む課金兵だろうか。自分でもこの例えはどうかと思うけど、状況的には近いものがあった。


 そうだ。最悪失敗しても、もう一度引き直せば良いのだ。契約枠拡張は二度目なので、かかるのは1000ポイント。

 三回目は1500ポイントになるが、合わせても2500ポイント。今の俺なら払える数字だ。


 ヤバい。考え方が片寄ってきていることを自覚する。当たらないなら当たるまで回せば良いじゃないとか、何処のガチャ廃人だって話だよ。


 だけど、うん、ねぇ……。


「やる前から失敗したときのことを考えるな、ようは一回目で目的の召喚獣を引き当てれば良いんだ!」


 結論。


 俺は契約枠拡張にポイントを振った。

 後から振り返ってみれば、この時の俺は頭が煮え立っていたのだろう。そうに違いない。


 召喚獣の契約が召喚者の欲望を汲み取ってくれると言うのなら、まず外れないよう強く願いながら召喚すれば良い。

 この世界には『物欲センサー』なるものがあるらしいが、そんなことは知ったことではなかった。


 俺は操作を終えたデバイスを消し、寝転がっていたベッドから身体を起こす。ここが現実世界の自室だとか、そう言えば《冒険者》の姿のままだったとか、もう全部思考から抜け落ちている。


「さあこいっ! 前衛こいっ! メイン盾こいっ! 肉壁こいっ!」


 俺は気付けば床に転がっていた杖を拾い上げ、念じるように口の中で呟く。

 最後のは何やら違っている気がするが、それすらも頭の片隅に追いやりながら俺は目を瞑って強く想像した。


 カエデやゴウキさんのように、その力と身体と技術で魔物としのぎを削り、後衛を守り抜く守護者としての存在を。どんな状況でも崩れぬ、最高の盾を。


「――【召喚(サモン)・――】ッ!」


 そして、召喚魔術は発動した。


 眩い輝きを放ちながら、フローリングの床に描かれた召喚陣。

 それは丁度、俺が使用する転移門と同じくらいの大きさで、契約に答えてくれた召喚獣も俺と同程度の体躯だということを知らせていた。


 これは期待が持てるのではないか。

 最低でも、ヒスイのような小型の種族は回避できたことに、俺は安堵の息を吐く。





 ――だが。


「なん……だと……っ!?」


 召喚の光が晴れた時、そこに存在していた召喚獣の姿に、俺は目を見開いて絶望的な呟きを漏らすのだった。


 いや、だって、コイツ――


 現実は……あまりに残酷だった。

 これが、これが人間のやることかよぉっ!










 その後、俺はクロードに【気配遮断】を、ヒスイに【瞑想】を習得させた。

 そして即座に反射的に、二度目の契約枠拡張を行い、二体目の召喚獣との契約を結ぶのだった……ぐすん。



 

 

 現在の《冒険者》ソーマの戦力。

 自身&クロード&ヒスイ&新規召喚獣×2。


 なお、召喚獣のレベルはそのまま、単体でまともに活動できるダンジョンの階層と同等だと考えてください。

 レベル一のクロードとヒスイの場合、一戦だけならともかく、第二階層で放っておくとゴブリンの群れに袋叩きに遭います。数の暴力こわい。そしてせっかく稼いだポイントもスッカラカン。

 

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