(俺+過去の傷)×ゲーム×引きこもり=今に繋がる道
そういえば俺がゲームやアニメ、そういった趣味を持ち愛するようになったのはいつだろう…
そう…アレはまだ俺が小学生の頃から始まったのだったか…
俺には血の繋がった親が居なかった、というより居なくなっていた。
まだ物心付く前に他界していたのだ。
なんていうと暗い話が始まりそうなもんだが、まぁおおむねそうである。
長い盥回し生活の末にとある良家の養子になった俺だったが、俺の出自には不釣合いな良家に引き取られてしまっただけに大変だった。
良い家に引き取られようとも俺の生まれは一般庶民だ。
新たにできた家族はとてもいい人達だったが、中でも特に義姉さんは俺のことを大層かわいがってくれた。溺愛されていたといっていい。
とはいえ運がよくいい家にめぐり合おうとも、その先の未来がいい未来であるとは限らない。限らなかった。
小学校も当然のようにいい学校に入れてもらったのだが、ここからが本題。
俺はさも当然のようにイジメにあった。
出自のことが主だった理由であったのは確かだが、容姿や学力なんかを言われたこともあったか。
そんな俺は、それでも入学した1年から卒業する6年までの年月をイジメに耐え抜くことができた。
しかしそのまま中学に上がって同じ生活を続けることはできなかった。
俺は中学生にはなれず、引きこもりにジョブチェンジしていた。
養子にもらわれた分際で引きこもり…とも思うが、当時の俺にそういった立場的なことを考える余裕は無かった。
引きこもり、ゲームにどっぷり嵌った。
半年もするとゲームも消化し、初めてアニメに手を出した。
アニメから原作漫画、ライトノベルに派生した。
そうこうしているうちに中学生を終える歳になった頃には義理の両親との仲は悪くは無いが壁を感じる、という程度の気まずさを、距離を感じる関係になっていた。
とはいえそんな中でも、義姉の、朱葉詩音は、俺との距離を保ち続けた。
保ち続けてくれていたのだ…
「ねぇ、ゆぅ君…ずっとテレビゲームばかりしていないで、お姉ちゃんとお外にでましょう…?きっと楽しいことが一杯あるよ?」
「遠慮するよ…ゲーム以上に楽しいことなんて無いよ。」
「…お姉ちゃんと一緒にいるのは嫌なの…?」
「…ここ以外に俺が居ていい場所なんて…外にはそんな場所は、きっとどこにもないよ…」
「なら、ここにずっと居続けていいって…ずっとこのままでいいって…そう、思っているの…?」
「………」
全くその通りだ、ずっとこのままで良いなんて、そんなことはない。
しかし、そんな分かりきったことを分かっていながら、朱葉家の好意に甘えて引きこもりという生活を送り、負い目を感じている俺には、その言葉は深く刺さった。
「わかったよ…外に出るよ…」
「…!そう!じゃあお姉ちゃんと一緒にお出かけしよっか♪」
「…もうこれ以上、朱葉の世話にはなれないから、俺はこの家を出るよ」
「………え?」
今にして思えば、俺はこのときいじけていたのだ。
いままで溺愛してもらってきた義姉に、自分の痛いところを突かれて、いつも義姉に甘やかされていた反動が来たのかもしれない。
こうして俺は朱葉家の人々、主に義姉の反対を無視して、家を出て、なんの当ても無くさまよい、高校も大学も出ずに、いつの間にか探偵なんていう安定収入を見込めない仕事につき…そしてあの夏、異世界の少女と出会い。
そして。
こんなどうしようもない昔話を思い出したのはとある事件の後。
2月14日、バレンタインの事だった。