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数日後彼女から一通のメールが届いた。
この間の話、お願いします。
携帯電話をパタンと閉じる。機械に疎い僕は機種変しても頑なに折りたたみ式の携帯電話を使っている。
さて、正直言うと僕はそんなに女性に自信をもって連れていける美味しい店に詳しいわけでもないし、女性のファッションセンスに口出しするほど洒落てもいない。エステなんてもってのほかだ。あの時は半分ノリで……もちろんもう半分は本気だったが。実際さぁやろうと始めようとしてもお手上げだった。
参った……
そこで一人の友人の顔が浮かび上がった。友人……と言っていいのかわからないがこの言い方が僕たちの関係に一番近く好ましい言い方だろう。しかし、その友人に相談しようにも何と言って相談したらいいだろう? 困る。
女性を連れていく美味しい店やエステや服屋を知らないかい? なんて聞いたらまず詳しい理由を聞かれて気まずいしめんどくさい。
さてさて…… さてさて……何と言ってきりだせばいいものか……
そうだ
どこで彼女と出会ったかは置いておいて、単純に仕事の依頼で頼めばいいんだ。その友人は元々大学の時小さな劇団をやっていたのだが、近ごろはイベンター、催し物の盛り上げや、個人のパーティーなどでのサプライズ演出の会社を始めたのだ。
せっかくだからお願いしてついでに美味しいお店などもセッティングしてもらうということにしよう。
……僕の通帳の残高がかなり減ってしまうだろうが、しかたがない。どうせ特に使うあてのない金だ。そう思い立った後はすぐに行動できた。友人の番号に電話をかけ相手が出るのを待つ。
しかし、そこから話はこじれ、結果僕の貯金は減らなかった。