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「じゃあさ告白しちゃいなよ。」


「え?」


彼女はまだあふれ出てくる涙や鼻水などをぬぐいながら聞き返した。


「告白って私が?」


「そう、君がだよ。もうすぐ誕生日なんでしょ? その日に結婚のプロポーズをするんだよ。きれいな服着て、綺麗に着飾って、その前に美味しいもの食べて、エステにも行って、彼に飛び切り綺麗な姿で告白するんだ」


「でも彼浮気したのよ? なんで私から……」


「単なる当てつけだよ。もし彼がそれで断ったらそれはそれですっきりと区切りがつくし、OKの時は今度は君が考えればいい浮気を許すのか、この人と結婚して大丈夫なのかどうか……その時に決めればいい。もちろん彼の言い訳を聞いた後でね。要は彼にこんな綺麗な彼女がいたのになんで浮気してしまったんだろうって思わせるのが目的なわけ、面白そうだろ?」


またしばらく彼女が落ち着くのを待った。

泣いて涙と鼻水でぐじゃぐじゃだったし、僕に突然こんなことを言われて混乱もしているだろう。それにすぐに決断しなければいけないことでもない。

……僕はけっこう乗り気だが。

そのうち彼女は持っていたハンカチでチーンと鼻をかんだ。

「よしっ」と小さくつぶやいた後彼女は言った。


「帰りましょう」




 帰りの車内はお互い無言だった。途中一言だけ


「さっきのは本気だよ」と言っておいた。念のため


彼女はというと「わかってる」とだけ答えた。わかっているのならよろしい。

 夜の海沿いの道をひたすら走っていくとまだ夕食を食べていないことに気が付いた。彼女にもそういうと黙って後ろの座席からからランチパックを取り出した。

どうやらさっき買い物したものの中にあったらしい。

「本気で?」

どこかファミレスにでも寄ってくれると思ったのだが、これで我慢しろということらしかった。

「本気よ」

さっき僕が言った言葉を返された。


「美味しいでしょ? ランチパック」


……おいしいけどね、ランチパック


 それからもまた暗い夜道をランチパックを食べながらぼーっとしているとふとおもった。彼女は中学時代のあの事件の時、僕が熊の絵を自分の机に書くという意味不明な行動をどう思ったのだろう? 当時は全く気にしていなかったが今思い返せば僕に対して不快な思いを抱いてしまった可能性もある。


……大いにある


そうおもうと……どうしよう? 今謝っておくべきだろうか? いやでも向こうから言い出さないってことは別に気にしていないか、又は忘れているか、もしくは……まだ恨んでいて復讐のチャンスをうかがっているとか?

彼女の顔をチラ見してみる……

普通に運転している。

……うん、大丈夫だろう

 もし何かをするのだったらさっきの海岸で海に突き落とすなり置き去りにするなりするのが今日彼女と出会ってから想定する最悪のパターンだったはずだ。今の時点で何も言ってこないということはその程度のことだったのだろう。あの熊のラクガキは些細なことだったのだ。僕にとっても、彼女にとっても。


しかし、そんな僕の平和な自問自答タイムも思わぬ形で終わりを告げることになる。


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