CM6
読んで貰えれば幸い(@_@)
この前提出したレポートが駄目だったのか?頭の中には悪い考えが意識もしていないのにおせっかいにも湧いて出てきた。こんなに記憶力あったのか?って思っちゃうぐらい。授業も一応、目を付けられるほどサボってはいない(と思っているだけか?)し、居眠りもまだ2回ぐらい(記憶では・・・)しかしていない。そんなことを怒られる前に言えば墓穴を掘っているかもしれないが、そうは言っても先に謝っといたほうが得策か?直人なんかよりももっと不真面目で呼び出しを喰らってしかるべき奴は山ほどいる(と思えた)。だから本当に心当たりはない。
別の考えも過ぎった。ひょっとしたら直人よりもサボっている奴らはとっくに呼び出しを喰らっていて、単に今度は直人の番なだけかもしれない。周りに親しい仲間もいないので確かめようがない。奈美恵は三上の講義を受けていないし、ほかではそんなことはないというのでますます不安になった。
あまり(というか一度だって)来たことのない教授の部屋の前。普段講義を受けている教室がある校舎とは別の建物。小中高でいう職員室のようなものが『室』から『舎』に変わったって感じだ。呼び出されていい気はしない。全くない。
扉の前に立ちながら、今通ってきた扉の数々と、この先にある扉を見比べた。雑に使おうが丁寧に使おうが、扉に大差はない。扉はそんなには、普通傷まないだろう。緊張しているのか、直人は余計なことを考えてはこの部屋に入ることを拒んでいた。時間稼ぎにもならないけど。
前後が誰の教室かなんて知らないしわからない。興味もない。呼ばれた生徒はこの日、午後の授業を取っていないから呼び出されて向かったのは昼飯を食べた後の13時の少し前。当然呼び出したのだから、三上にも授業はないが(時間はいつでもいいと言っていた)、両隣の教授には授業があるらしい。物音・・・特に人がいる気配に繋がる音は一切聞こえてこなかった。普段からそうなのか。ほかの教授たちも講義をしていて少ないからなのか、ここに着くまで廊下は足音だけしか聞こえないほどに静かだった。外の雑音も聞き取れたかもしれない。
「・・・トイレ・・・行かなくてもいいかな?でも、いっとこうかな」
携帯を見たら、1時までにはまだ時間があるし、辺りを見回せばトイレも見える位置にあった。1時というのは俺が決めた時間だから、三上が指定してきた時間ではないので俺が遅れるわけにはいかない。直人は結論を出した。時間はあまりなさそうだ。
「・・・行っておくか」
まるで特撮ヒーローみたいにトイレに行くと決断を下しただけで、誰も見ていない誰もいない廊下で一人、それっぽく呟き浸った。むしろ、誰も見ていないからこそできたことだった。トイレから戻り、小便器に緊張も一緒に流せたのか。
一息ついて三上の部屋の戸をノックした握るだけの拳は、すでに力強く震えも鳥肌も立ってはいなかった。手をちゃんと拭かなかったからか、やっぱり緊張でもしているのか?ノックのため握った拳が、徐に開けば手のひらの中心はしっかりと水に濡れていた。指先でなんとなく感触を確かめてから、直人は無意識に服の袖で拭いた。
ノックをすると中から声が聞こえた。
「入れ」
偉そうに。扉を開けたないことをいいことに、思いっきり顔を歪ませてみせた。すぐに直人は顔を戻して一応辺りを見返す。誰もいない。今の顔は誰にも見られちゃいないし、やはり今の返事はこの部屋から聞こえたのだろう。
「失礼します」
部屋の戸を開けると、一応教授らしく本棚に本が何冊も並んでいるのが初めに飛び込んできた情報。直人と違って、当たり前だがマンガ本などない。自宅の部屋じゃないんだからそんな奴はいないだろう。(どんなやつやねん!!)心の中で自分に突っ込みを入れた。
難しいそうな経済の本が不規則に並んでいる。背比べをしているようだ。まだ、背の順にはならばしてもらえていない。その本棚と机の間に、文字通り挟まれて三上は座っていた。彼は真剣なのか眠たそうなのか、よくわからない顔でこっちを見ている。癖なのか、一瞬で見定められたような気がして生徒は口を歪ませた。
三上は相変わらずのスーツ姿だが、いつもと違って胸元がだらけている。暑くて息苦しいのだろう。クールビズ。OK。(古いな!)
三上は直人をまじまじと鑑定すると、少しだけ目を瞑り、手前にある誰も座っていない椅子を指差した。
「まあ、座りなさい」
「・・・」
直人は黙って台本にあらかじめ記載されていたような指示に従った。何故呼ばれたのかもわからないから、ここは素直に従った方がいい。でも、直人は自分なりに素直に言うことを聞いていたつもりだったのだが、三上には少し違って見えたらしい。
直人が座るのを待って、三上は普段はしない、ぎこちなくではあるが少し笑って見せた。
「偉そうに感じたか、加藤君。肩書上、私は教師なのでな。君たち生徒には少し距離があるようだが、これも私の性格だ。直そうとしているのだがうまくはいかない。気にしないでくれ」
申し訳なさそうな風に話しながらも、あくまでも『風』である。
「まあ、構わないですけど」
そう答え、三上はくすりと笑った。
「加藤君も、慣れない敬語は使わなくていい。そんなものでは私に対しての尊敬も、私に対しての好意も何も感じられない。本音で話してくれ。今は授業中ではないのだから、何も遠慮することはない」
直人は顔をしかめてみせた。三上の口ぶりは、直人の印象としては嘘は感じない。彼がそれこそ素直に変なこと、変な口調を使っても、たちまち単位をくれない。などというドッキリにはめられたような罠ではないだろう。
「わかり・・・ったよ。で、先生。・・・教授って言った方がいい・・・ですか?」
ははは。と、三上は子供っぽく笑った。(そう簡単にため口が言えるか!!)
「呼びやすく呼んでくれればいい。私が呼ばれていることに気が付けばいい。そうだろ?」
「そうだ」なんて言えるわけがない。(なんだ、この男は?俺は別に、この男とろくすっぽ話なんてしたこともない。なのになんだ?)直人は段々と頭が混乱してきた。自覚できた。
「じゃあ、先生って呼ぶよ。・・・三上せんせ。で、あのー、俺に何の用ですか?この間のレポートの出来でも・・・悪かったのですか?」
三上は答える前に後ろを向き、何かを見ている。そこには机がある。何を見ているのかは、ここからではわからない。三上の体が死角を作っているようだ。なにかのチェックが終わると、三上はその手に紙を持ち、振り返った。
「君には、出来が悪かった自信でもあるのかな?手を抜いてやったという後ろめたさでもあるか?呼び出すというのは何も、その者を叱ったり、怒るためではない。君には教師に褒められるという経験が少ないようだね。御世辞でもなく私の印象では、君はそんなに劣等生には見えないがな」
三上は相変わらず笑っている。御世辞も嘘も言っているような印象は今のところない。せれでも直人は三上の言うことを100%信用したわけではないためぶすっとした態度になり、隠そうともせず不満げに片目を閉じた。
「馬鹿だと見せないようにはしてるんだよ。でも、いっつも怒られてきたから。先生って人たちには。少しずれてんのかな?別にいいけど」
一瞬立ち上がろうとしたがやめた。メリットがないからだろう。単に座りすぎて座り位置を直しただけか。三上の動きを見ていたら直人も腰を浮かせて座りなおした。
「君は、君が感じているほど馬鹿ではない」
(馬鹿ではない?その言い方)三上は真顔だ。対する返事はそっぽ向いて、手でどうもと仕草で示した。うっすらと目を開いて、この態度はやりすぎか?教師にするには生意気だったとやってから気が付いたが、気にした様子もない。
読んでくれた方、ありがとう^m^まだ続きます




