恋が生まれる30秒前
独立短編
多少のボーイズ表現あり。
茜色に燃える夕陽が、修二と誠を祝福する様に照らした。漸く念願が叶い、自分の想いを伝えられた修二はその嬉しさのあまり我を失っていた。ここが学校であり、公の場であるという事を。
高鳴る鼓動、色付く吐息。その雰囲気に飲まれるかの様に修二は誠を抱き寄せた。そして激情の成すがままに今までの想いを伝えるかのように誠のその薄い唇を貪った。もう誰にもコイツはやらない。悲しませたりしない。
「誠、好きだ」
「修二っ、」
このままここで抱いてしまおうか。コイツも反抗しないだろう。先程の深い口付けのせいで息がすっかり上がってしまっている誠の学生服のスラックスのファスナーに修二は欲望に身を任せ手を伸ばした。
もう二人は既に周りの状況が見えていなかった。どうでも良くなっていた。
自分達の耳に聞こえるのは、猫が水を舐めるかの様な淫靡な水音と、甘い中にも乱れた呼吸音。
あぁ、このまま溶けあえたのならどんなに幸せだろうか。やがて訪れた快感と絶頂に、修二は意識を失った。
〇 〇 〇 〇
「はい、確かにお預しました。お疲れ様でした、嶋谷先生」
最後のエンターキーを気力だけで押した瞬間、私は果てた。
三日連続の貫徹の死闘の末、私がたった今無事書き終えた小説は男×男の官能恋愛小説で、世間ではBL本と言われる類のモノで、序に私の記念すべき初シリーズの一冊目でもある。
私、嶋谷 雪流こと、本名、初瀬谷 雪奈は、つい先頃デビューしたばかりの新人BL作家。
普段はコンビニのアルバイトや、叔母の開く料理教室の手伝いで生活費を稼いでいるまだまだ駆け出しだけど、頑張ればきっと売れるからというのは、私をこの地獄に叩き落とした張本人の担当編集者さんの鬼嶋さん。
その名が表す様に鬼嶋さんの性格は鬼か夜叉だと私は思う。
だけどそんな事は間違っても言わない。だって私はまだ死にたくないし。
「先生、そこで潰れるのは勝手ですけど、そろそろバイトの時間じゃないんですか?遅れると最悪クビですよ?」
「うぅ、解ってますよぉ~」
幾ら眠たくても、生活費を稼ぐ為には仕方がない。ここは一発、濃ゆ~いコーヒーでも飲んで頑張りますか!!そうと決まれば、さっさと着替える。
今日は朝の十時から夕方の十六時までがコンビニのバイトでその後が叔母の料理教室での手伝い。
死ねる、確実に死ねるよね?私ore。
でも、頑張るしかないんだと思う。
私はジーンズにTシャツと言う至ってラフな格好で、鬼嶋さんとマンションを出て、鍵を閉めた所で、隣の部屋からも誰かが出てきた。しかも、出てきたのは何とも形容しがたい完璧な美貌の持ち主である男性。
見蕩れたって仕方がない。いや、むしろ見惚れない方が人としてオカシイと私は思う。私はそう思いながらも、神の采配を恨んだ。
きっとこの人は神様から幾つものプレゼントを受け取っているのだと。でも、それは大きな思い違いだった。その人は私が自分を見ていると気付いたのかにっこりと微笑み。
「あらヤダ、初めまして、アタシ、最近隣に引っ越してきた 榊 郁美て言うの。よろしくね?」
その人は、超綺麗な、今流行りのオネエ系の人でした・・・。
ご要望があれば、続きがあるかも?




