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闇鍋なパーティー  作者: 朧 月華
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離縁上等

この作品は、ツイッターデ交流している方の発案を基に作成された物語です。

異世界から召喚された女性に恋人が盗まれ、それをパンチで制裁を加え、三下り半を突き付けた後、恋人が変な道に目覚めればいい・・・、みたいな。


すみません、Aさん、私にはこれが限界でした・・・。

 ふざけてらっしゃるの?

 それとも本気ですの?


 ――いいえ、もうお答下さらなくてもよろしいですわ、礼実様。


 ぐっ、と、爪が白くなるまで握りしめた手で、狙うは、少し前に夫婦の契りを交わしたばかりの、都一の伊達男であらせられた旦那様こと、藤原礼実ふじわらのあきさね様、御年27歳。


 宮家の姫たる私を捨ててまで、その女性と一緒になると仰せになるのならば、もうそれ相応のお覚悟は、十分お出来になられておられますわよね?


「礼実殿、お覚悟なされませっっ」

薔子しょうこ?」

「勝手に私の名前を呼ばないで下さいませっ、私の名前が穢れますわ!!」


 先日までは愛おしいと思えていたその声も、今では最早汚らわしい。


 ――バシンッッッ・・・。


 私が渾身の力で振り下ろした平手打ちは、乾いた音を奏で、見事に浮気な殿方の元恋人の大変麗しい顔に命中し、私の手形はその方の頬にくっきり浮き出しました。


 それを茫然と見守っていた私よりも年下の女性に、私は今日の為に書きあげておいた書状ソレを投げつけ。


「お望み通り、離縁してさしあげますわ!!ただいまを以て、即刻我が屋敷から出て行って下さいませ。二度と顔も見たくありませんわ。」


「え?えぇ?ちょっ、シナリオと違うんだけど?」


 しなりお?

 なんですの?それ。

 でもまァ、もう私には関係ありませんわよね? 


 妙なことを口走る女性を、私の屋敷に勤める優秀な女房達に言付けて追い出し、私は行儀悪いと乳母めのとに叱責されるのも覚悟の上で、袴を手で引き上げ、階から蹴り落としましたの。

 その際、かの人の冠が取れたのを見て、私は少し溜飲が下がりましたわ。


 でも、そこで決して気を緩めてはいけません。

 油断こそ命取りになるのですから。


 私は最後の最後の極め付けに、そっと影のように付き従っていた腹心の女房から茶色の壺を受け取り、その中身を鷲掴みにして、かの人へと投げつけましたわ、ふふふ。


「薔子?おい、薔子!!」


 さすがに塩は目に痛いのでしょう。

 ひと投げ、二投げ、そしてもう一投げすると、浮気な最低な殿方は我が屋敷を出て行かれましたわ。


 何も「側室を持つな」などとの狭量な事は私は申し上げません。

 私達貴族にとって子を産み残すのは仕事の一つです。

 ですが、よりによって私の妹の部屋で閨を共にするとは、どういった神経をなさっておいでなのかしら?

 妹は身仏の元へと旅立ちはしましたが、今でもあの部屋に時折戻って来るのです。

 それなのに、それなのに!!


「私が愚かでしたわ!!あんなもの覚えの悪い方だったとは!!伽耶かや牛尾うしおに言いつけて門前に立たせておきなさい。給金は弾むから!!」


「はい。畏まりました。姫様ひぃさま。」


 こうして私は、葉月の望月の夜、夫婦の約束を交わしていた殿方を屋敷から追い出したのです。

 私達の世界が、私達の知らない人の手によって創り上げられた世界とは知らずに。

 そして本来であれば、夫婦となる約束を交わしていたあの男が愛する筈の女性を、私が優しく受け入れるはずだった事も知らずに。



 時は流れ、霜月の下旬。


 私は伊勢参りの参篭の帰りに、一つの噂を耳にしたのです。

 曰く。


 ――都に物の化に憑かれた女性がいるらしい。その女性は、事ある毎に話が違う、何故その者を選ぶのだと声高に叫び、遂には帝の寵愛する梅壺の女御様まで愚弄したらしい。と。


 それを聞いた私は、かつて我が屋敷にて不届きな振る舞いに及んだ人物を思い出し、気分が悪くなってしまったのです。

 ただでさえ私の気分を害する人物が、先の月から私に付き纏っていると言うのに。


 ああ、ほらまたっっ!!


「それ以上、私に近寄らないで下さいませ。もう既に私とアナタは他人ですのよ?」

「そんな冷たいことは言わないで下さい。――アア、でもそんな貴女も私は等しく愛しているのも事実なのです。」

「ひっっ、」


 ――ゲシッゲシッ、ゲシゲシ・・・


 思わず草履で彼の方の顔を二度三度と蹴りつけてしまいました。

 ですが、私は悪くないと御自負しておりますの。

 何故なら誰でもねっとりとした熱い眼差しで、足元に縋りつかれては、こんな反応を示すと断言出来るからですわ。


 私だけではありませんわよね?

 誰かそうだと仰って下さいませ!!


 私に足蹴にされた事で更に恍惚の笑みを浮かべになられた礼実様は、私にもっとと、それを強請るように頬を紅潮させ、瞳を潤ませ、私に擦り寄ってきますの。


 私はそれを疎ましく思いつつ、時には罵詈雑言を吐きつつ、時には諦めの境地に立ちつつ、彼との関係を行ったり来たりを繰り返しながら、結局は、まぁ。


 はぁ、少し早まってしまいましたかしら?

 今ならまだ間に合うかしら?


「私に近寄らないで!!」

「そんなに照れなくても大丈夫だよ、私の愛しい人。」

「きぃぃ~っっっ!!」


 やっぱり離縁したい!!

 こんなことなら最初から付き合わなきゃ良かった!!


 今日も都の何処かで、私と礼実様、そして名も知らない、この世界に迷い込み、この世界の禁忌に触れたあの女性の、永遠に終わらない日々が巡ってゆく。





 ――時は巡りて、死にゆくもの在れど、その者、仏の怒りに触れたりて、永久に時を巡る者也。


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