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陽菜の一日  作者: KI☆RARA
9/13

12月10日 土曜日



 昨日のことがあってから、陽菜はすっかり男嫌いになっていた。男なんて、一つ許すとどこまでも付け込んでくる生き物だ。その勢いで、貴宏にもメールを送った。

 部屋に置いたままの荷物を返すから会おう、と。その際、外で会うことを伝えるのも忘れない。


―――家で会うのは

 却下

―――合いカギを渡すのは

 もってのほか

―――優しくしたい

 食い尽されるだけ


 貴宏に会うのは、今度で最後だ。何も馬鹿正直に伝える必要はない。察しのいい彼のことだ。ただ「ないと不便でしょう」と言って渡せば、陽菜がもう貴宏と会う気がないことに気づくだろう。

 昨日までは荷物を返す日が来なければいいと思っていたのに、今はすぐにでも返してしまいたかった。



 本日の陽菜の予定は、昼から夜まで美容関係ばかりだ。

 まずいつも化粧品を頼んでいる人と会い、自分でも購入できるように登録した。そして次に、エステ。クーポンサイトで買ったチケットで、リンパマッサージをしてもらった。そして最後に、まつ毛のエクステ。これもクーポンだ。

 その中でも陽菜が気に入ったのはエステ。陽菜が下着姿になった時に、エステティシャンはすかさず「サイズが合っていない!」と言い、下着を持ってきた。そういう商売ね、と思わないでもなかったが、本当に付け心地が良かったのだ。陽菜のバストのサイズはEカップなので、今までしっかり支えられるブラを見たことがなかっただけに、これはいい、と興味津々だった。しかし、3万円という値段に手が届かず、ひとまず保留。また買えるようになったら買いに来ようと心に決めたのだった。ちなみに、陽菜が今付けているものは、3千円のものだ。さらにマッサージの間に、陽菜の身体から様々なことを読み取り、アドバイスをくれた。

(私はもっときれいになれるんだわ)

 そう思うだけで、楽しくなってくる。また、そう思わせてくれて、やる気にさせてくれる相手は、美容関係者としてとても優秀なのだと思う。

 陽菜の恋はもうすぐ終わるが、また自分磨きが待っている。恋をしている間は、どうしても男に頼りたい気持ちが出てきてしまい、自分で何とかしようだとか、自分を何とかしようという気が殺がれてしまう。

しかし、新しい自分を発見することは人生のだいごみだ。

(恋が終わっても、その先に楽しみがある)



 陽菜の物語は続く。



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