表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陽菜の一日  作者: KI☆RARA
5/13

12月6日 火曜日


 陽菜は携帯電話を手に、たった今送ったばかりのメールを見返していた。たった一言、おはよう、と送った久しぶりのメール。机の上に置いて、化粧を始めた。

 ぶぶ、と携帯電話が震えた。

 見ると、昨夜「おやすみ」とメールを完結させた、合コン相手からだった。

 思わずもう一度携帯電話を置き、鏡とマスカラを手に取った。返信を待っていた相手ではなくてがっかりしたものの、このままメールが返ってこなかったらどうしようという不安が、少し軽くなっていた。自分のことを気にかけてくれる人がいるということに、心がほっこりと暖かくなる。

 30分後、おはようメールを送った相手からも返信が来た。おはよう、と返してくれた言葉に、今日の彼の仕事のことを一言添えている。

 陽菜は、彼とのメールが好きだった。もともとメールは好きではないが、この少ない文字数で何度も送り合うのが楽しくて携帯電話を何度も確認するうちに、自然と彼以外とのメールも増える。彼とメールをしていない時の陽菜は、非常に筆不精なのだ。

 こうしてたった一言、何の意味のないメールにすぐに返信してくれるのが嬉しい。そうしたメールがその日何度か続き、夜までメールをした。



 終業後、暗い路地を陽菜は家に向かって歩いていた。カツカツとヒールの音が響く。

(好きになった方が、負けか)

 今回の恋、あの“男友達”への気持ちは、叶いそうもない。都合のいい相手として思われてもいい。それでも、彼がいることで、もっと色んな人と関わって、もっと色んなことがしたいと思える。

(メールくらいが、一番いい距離なのかもしれない)

 陽菜の恋愛経験と言えば、付き合った人数が3人、身体だけで終わった相手は“男友達”も含めて3人。

(付き合った人は、3人ともが向こうからメールしてくれて、電話してくれて)

 そのため、自分の方の気持ちが大きいときにどう頑張ったらいいのか分からない。恋愛がパワーゲームなら、一度負けてしまったらそこからどう覆せば逆転出来るのか見当もつかないのだ。

(好きになってくれた3人とも、結局たいして深く関わることもなく、プラトニックなまま終わっちゃったな)

 周囲には、恋愛の話題に事欠かないと言われている。しかしその割に、陽菜には恋愛の土台となるものがなかった。そのアンバランスで不安定な価値観を隠したままここまで来てしまったことが、現在の陽菜の弱さに繋がっている。



 恋愛が出来ないなら、お見合いでもいい。


 それとも、もう一人で生きていく覚悟を決めて、そのための術を身につけることに専念してしまおうか。


(その選択肢も悪くはない)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ