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陽菜の一日  作者: KI☆RARA
3/13

12月4日 日曜日


(あれ、メールくれたんだ)

 朝起きて、携帯電話を見た陽菜は、意外な思いでそのメールを開いた。金曜日の合コン相手からだ。「金曜日はありがとう。また飲みに行こう」という特に続きのない内容だった。

(やっぱり、義理のメールってことね)

 楽しく飲んだものの、特に自分を気に掛けている人はいなかったな、という直感の通りだ。陽菜はお決まりの「ありがとうメール」を返信して、再び布団に沈んだ。



 陽菜が再び布団から離れたのは、昼を過ぎてからだった。

 本当は予定があったのだが、昨日に引き続き、キャンセルしてしまった。

 昨日は一日家の中にいた。今日は一度くらいは外に出たいと思っていたが、いかんせんお金がない。財布には千二百円。貯金はそれよりも少ない。車は持っていないので、外に出ようとすれば公共交通機関を使うことになる。手持ちの金から交通費を引いてしまったら、一体何が出来るだろう。

 外食も買い物もお金がかかる。もちろん外に出るだけなら、お金がなくても出来る。しかし、もし歩き疲れてしまったらカフェに入りたくなるだろうし、ウインドウショッピングをすればその商品を買いたくなる。お金があれば、不測の事態が起こっても―――例えば、怪我をしてタクシーが必要になったり、偶然友達に会って近くでお茶しようということになったりしても―――解決出来る。

 お金がないということはなんとも心許ない。

 考えれば考えるほど外に出る気がなくなってしまう。

 することがないので、仕方なく部屋の隅に散乱している請求書の明細書類を整理することにした。手に取って見れば、9月のものまである。

(いやぁ、なんて言うか、思い切ったお金の使い方してるなぁ)

 乾いた笑みを浮かべながら、数字を目で追っていく、平成23年は心機一転、今まで中途半端にしていたことすべてに一度きりをつけて、今までしたことのないことをしようと、自分磨きに専念した一年だった。脱毛、美容院、エステ、さらに自己啓発に目覚めたおかげで、習い事や資格の勉強を始めた。

 そのすべてに費用がかかっている。生きて、充実した生活を送るために、お金は必要不可欠だ。お金のあるなしは、ただ単に物が買える買えないという物理的な面だけでなく、心に余裕のあるなしという精神的な面にまで影響を与える。心に余裕があれば、他人に対してオープンになり、優しくなれる。

 お金がない状態は、まるで極寒の地に丸裸でいるようなものだ。他人同士が作り出す社会の中で何の装備もなしに無防備でいれば、正常な判断が出来なくなってしまう可能性さえある。

 裏がありそうな上手い話に思わず飛びついてしまったり、逆に必要以上に他人を警戒してしまったり、大きく構えているときには決してしないような行動をしてしまうことがある。

 陽菜がこうして人に会うのが嫌になり、外に出る気がしなくなるのも、お金が影響しているのかもしれない。

(来年は節約と貯金を趣味にしようかな)

 心の、ひいては身体の健康のために、お金を貯めると決心した。


 陽菜の日曜日は、こうして過ぎて行った。





―――と、一日が終わりかけた頃、一通のメールが入った。


 今朝メールした金曜日の合コンの相手から、ランチの誘いだ。



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