表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陽菜の一日  作者: KI☆RARA
2/13

12月3日 土曜日

 風邪を引いてしまって…すみませんが、今日は行けそうにありません。


 陽菜は布団に横になりながら、携帯電話のメール送信ボタンを押した。昨夜は飲み会から帰ってきてすぐに、敷きっぱなしの来客用の布団で寝てしまった。昨日の朝から落としていないメイクでまぶたが重い。肌は乾燥し、頬の辺りがアトピー肌のように乾燥している。

(今日は一日、家から出たくないな)

 そんな気分のまま、ランチデートの約束をキャンセルした。

 すぐに相手から「いいよ」という返信が来た。

(いい人なんだよね)

 相手は、最近知り合った2歳年上の男の人。今回会っていれば3回目のデートになるはずだった。日本人ならば誰でも知っている有名大学を卒業し、堅実かつ高収入の仕事に就いている。

 良くも悪くも、遊んでいなさそうな人。

 それが、その彼の印象だった。

 陽菜の方は、彼よりはかなり下の大学になるものの、彼女が住んでいる地域では一番の大学を出ている。地元の合コンで出身大学を言うと決まって「すげぇ!頭いい」と言う男たちの、ちょっと引いた態度にうんざりしていただけに、地元で自分よりも高学歴な人間と出会う機会を無駄にしたくはないと思う。

(なのに何でだろ)

 なぜ、自分はワンルームのマンションで一人ネットマンガや小説を読んでいる方を選んでしまうんだろう。


 そもそも陽菜は「平成23年は恋愛をしない年」と決めていて、実際、恋愛する気もなかったはずだ。

 友達が結婚を意識し始め、さみしさはある。しかし、自分は自分、と習いごとを始めたり「もっと楽しいことはないか」と今まで興味はあってもしなかったことに挑戦したりした。新しい自分にどんどん気づいて、とても充実していた。

誰がどう思うかを気にしていなかったからこそ出来たことだ。恋愛をしていたら、きっと「失敗してもいい」と思い切ることは出来なかっただろう。

 それが変わってしまったのは、やはり1カ月前。ジーンズの男と再び素肌を合わせてから。思い出してしまったのだ。人に触れる心地よさを。

「また会いたい」という気持ちは「いつ終わるんだろう」という不安に、簡単に取って代わる。相手に自分の心をすべて与えてしまいたい、という陽菜の本心と、不安から来るブレーキがバランスを取った結果が、今回のランチデートだ。

 気のない相手に自分の気持ちをぶつけてしまったら、きっと終わってしまう。どこかで気を紛らわせなければ。

 大切にしてくれない男と一緒にいるために、他に大切にしてくれる男を必要とするなんて。

(本当は、こんなことしてても仕方ないって、分かってるんだけどなぁ)

 考えれば考えるほど、陽菜の気持ちは沈んでいく。


 陽菜の土曜日は、こうして過ぎて行った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ