5月21日 月曜日
久しぶりの更新です。
陽菜がその後、短い恋をし、終わったところから始まります。
章と別れてから数カ月が経過した。
その間、何度かメールや電話をしたが会うことはなかった。
この日は久しぶりの食事、いや、よく考えてみれば、久しぶりどころか出会ったころ以来のことだ。
章と出会ってから、彼のことをたくさん考えていた割に、思い出は少ない。
どこかへ一緒に行ったとか、一緒に何かをしたとか、具体的な行動がないのだ。
心の中では、いつも彼のことを考えていた。ずっと、一緒にいたいと思い、彼がいま何をしているのか、いつも気になっていた。
しかしそれが、行動につながらなかった。
言葉も、そう。
章が言った言葉は覚えているのに、自分が言ったことは思い出せない。思っていたことの半分も伝えられていなかった。
好き、一緒にいたい、大好き、もっと私を見て、もっと私を好きになって、他の女の子とメールしないで……。口から出る前に、しぼんでしまった。
恥ずかしいとか、今伝えなくても、ということが言い訳になるだろうか。
陽菜が章の言葉を欲しいと思っていたように、章が陽菜の言葉を待っていたと、どうして否定できるだろう。
恋したほうが負け、なんて気にしないで、伝えてあげればよかった。自分がどう見られるかなんて、どうでもよかったのに。相手を喜ばせてあげることのほうが大切なのに。
ただ、一緒にいると、そんなことに気づくことができなくなってしまう。
心が満たされて、すべてが別にいいか、と思えてしまう。
章と会えることはうれしい。会う前は、気持ちが悪くなるくらい緊張した。
好きかと聞かれれば、すぐに好きだと答えることができる。
しかし、付き合いたいかと言われれば、迷うところだ。あの不安定な苦しみを再び味わうことにしり込みしてしまう。
食事は何事もなく、本当にただ食事をしに来ただけだった。
最近どうしているのか話すのはただのついでで、食べて、携帯を見て、お店でついていたテレビを見て、あっさりとお別れ。
その後、そのまま家へ帰る気にはなれなかった。
目的もなく外をぶらつき、どこにも行くところがなかったので、本屋へ立ち寄った。買いたいものがあるわけではない。ただ、居ても立ってもいられなかった。章と出会ってから、CDや漫画の数が増えた。
(一人でいたくない)
それをごまかすために、本屋やCDショップに寄っては、大量に買い物をするのだ。漫画や自己啓発本を読んだり、CDを買って曲をかけながらベッドの上でうずくまったりする。
気を紛らわせてくれるならば、なんでもいい。
別の男友達にメールして遊びに誘うが、予定があると断られてしまった。他に、すでに進みつつある別の遊びの計画相手にメールをし、婚活サイトものぞいた。
そうでもしないと自分を保っていられない。
『オレと付き合ってると、陽菜にとってマイナスなんじゃない?』
章に別れ際に言われた言葉が脳裏によみがえる。
章と会うと、こんな自分では駄目だと自分を否定してしまう。それは、陽菜にとってマイナスなのだろうか。しかし、章がいなければ、陽菜は気力がなくなってしまう。未来の希望を失ってしまう。
好きなことを好きだと堂々と言う章が好きだ。
思ったらためらう間も置かず、すぐに行動に移す章が好きだ。
ずっと一緒にいようと、陽菜に未来への希望を見せてくれた章が好きだ。
でも。
でも。
でも。
そばにいるのはつらい。
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