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第8話 「崩れない形」

 役割を決めてから、戦闘は変わった。


「……さっきより全然楽だな」


 蓮斗が笑う。


「当然だ。無駄が減っている」


 白峰が淡々と返す。


「……最初からやれ」


 祖父が短く言う。


「だから無理だっての」


 軽いやり取り。


 でも、余裕がある。


 さっきまでとは違う。


「……来る」


 祖父の一言で、空気が締まる。


 奥から現れたのは、黒い影。


「三体」


 白峰が即座に数える。


「いけるな」


 誰も迷わない。


「行くぞ」


 蓮斗が前に出る。


「こっちだ!」


 敵を引きつける。


 玲奈が横から入る。


「……削る」


 速い。


 白峰が言う。


「右は遅い。先に処理」


「了解」


 動く。


 俺は、その間を埋める。


 ズレをなくす。


 無駄を消す。


 繋ぐ。


 黒い影が、一体。


 崩れる。


 次。


 また一体。


 そして最後。


「今だ」


 蓮斗が止める。


 玲奈が切る。


 終わり。


 静寂。


「……完璧じゃね?」


 蓮斗が笑う。


「ほぼ最適だ」


 白峰も頷く。


 祖父が言う。


「悪くない」


 それは、かなり高い評価だった。


 ぴーちゃんが、ふわっと揺れる。


「……いいかんじ」


 小さく息を吐く。


 確かに。


 崩れない。


 どれだけ動いても。


 誰が何をしても。


 形が、維持される。


 その時。


 玲奈が、ぽつりと呟いた。


「……でも」


「ん?」


 蓮斗が振り返る。


「……これ、弱い敵だから」


 静かな一言。


 でも。


 空気が、変わった。


「……どういうことだ?」


「……強いの来たら」


 少しだけ間を置いて。


「……崩れる」


 誰も、すぐには否定できなかった。


 確かに。


 今のは、通用している。


 でも、それは。


 相手が対応してこないからだ。


 白峰が、静かに言う。


「……現状の構成は“固定”だ」


「固定?」


「そうだ」


「つまり、読まれる」


 蓮斗が眉をひそめる。


「じゃあどうすんだよ」


「変化を入れるしかない」


 俺が言う。


「……崩れない形じゃなくて」


「……崩しても戻せる形」


 口に出して、気づく。


 それだ。


 今の形は、強い。


 でも。


 壊れたら終わる。


 祖父が、小さく頷いた。


「いい視点だ」


「……まだ途中だな」


 蓮斗が笑う。


「完成じゃねぇってことか」


「……うん」


 玲奈が小さく頷く。


 ノワールが、静かにこちらを見ている。


 何も言わない。


 でも。


 その目は、どこか分かっているようだった。


 ぴーちゃんが、小さく揺れる。


「……まだ」


 その一言だけで。


 はっきりした。


 この形は、完成じゃない。


 もっと強い敵が来る。


 もっと、崩される。


 その時。


 どうやって、戻すか。


 それが。


 次に必要なことだった。


 崩れないだけじゃ、足りない。


 崩れても、戦える形へ。


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