第5話 「初めての連携」
玲奈が加わってから、空気が変わった。
それは、強さの問題だけじゃない。
前提が違う。
「……速すぎだろ」
蓮斗が苦笑する。
目の前で、黒い影が崩れる。
一瞬だった。
玲奈が一歩踏み込む。
刃が閃く。
それだけで終わる。
「……無駄がない」
白峰が小さく呟く。
「……普通」
玲奈は短く返す。
いや、普通じゃない。
どう見ても。
「お前、それでよく一人でやってたな」
「……そうするしかなかった」
それ以上は語らない。
ノワールが、玲奈の足元であくびをする。
完全にリラックスしている。
ここが安全だと思っているように。
「……こいつ、ほんと何なんだ」
「……知らない」
玲奈は猫を一瞥するだけで、それ以上気にしない。
その時だった。
奥から、重い音が響いた。
ズン、と地面が揺れる。
「……デカいな」
祖父が低く言う。
気配が違う。
さっきまでの敵とは、明らかに。
暗闇の中から現れたそれは。
一回り大きい“黒い塊”だった。
「……中型か」
白峰が即座に分析する。
「数は?」
「一体。ただし――」
言葉の途中で、黒い塊が動いた。
速い。
「来るぞ!」
蓮斗が前に出る。
拳を振り上げる。
ぶつかる――
「待て、硬い!」
鈍い音。
弾かれる。
「……防御が違う」
白峰が冷静に言う。
「じゃあ削るしかねぇな!」
蓮斗が再び踏み込む。
その瞬間。
「右、来るぞ」
俺が言う。
蓮斗がギリギリで回避する。
「助かる!」
……やっぱり見える。
動きが分かる。
「パターンは単純。ただし耐久が高い」
白峰が続ける。
「前衛は足止め。削りは継続」
「了解!」
蓮斗が動く。
さっきよりも、無駄が少ない。
玲奈が、横から入る。
速い。
でも、今回は一撃じゃ終わらない。
「……硬い」
短く呟く。
その瞬間。
黒い塊の腕が振り下ろされる。
「玲奈!」
間に合わない。
そう思った瞬間。
玲奈の身体が、強引に動いた。
避けきれない。
でも。
当たる前提で、踏み込んだ。
鈍い音。
そのまま、刃を叩き込む。
黒い塊が、大きく揺れた。
「……無茶すぎるだろ」
蓮斗が呟く。
玲奈の腕から血が流れている。
でも。
「……まだいける」
傷が、ゆっくり閉じていく。
自己回復。
その間に。
「今だ、蓮斗」
「おう!」
蓮斗が全力で踏み込む。
拳が叩き込まれる。
白峰が言う。
「あと二撃で崩れる」
「分かった!」
連携。
誰かが止めて。
誰かが削って。
誰かが見る。
そして。
最後の一撃。
黒い塊が、崩れた。
静寂。
「……今の、良かったな」
蓮斗が笑う。
「最適ではないが、悪くない」
白峰が頷く。
祖父が短く言う。
「形になってきたな」
ぴーちゃんが、ふわっと光る。
「……だいじょうぶ」
疲れが、少しだけ抜ける。
玲奈が、小さく息を吐く。
「……連携、か」
その一言に。
少しだけ、重みがあった。
ノワールが、静かに座っている。
戦いを見ていた。
逃げることもなく。
ただ、そこにいる。
俺は、少しだけ前を見る。
まだ先がある。
でも。
さっきより、確実に進めている。
一人じゃない。
それだけで。
戦い方は、変わる。




