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第3話  連携という選択

 洞窟の奥は、静かだった。


 ぴーちゃんを連れてから、空気が少し変わった気がする。


 気のせいかもしれない。


 でも――


「……さっきより、楽だな」


 思わず口に出す。


「気のせいだ」


 祖父は即答した。


「……いや、でも」


 足が軽い。


 視界も、少しだけはっきりしている気がする。


 ぴーちゃんが、手の中で小さく揺れた。


「……だいじょうぶ」


「……お前、何かしてる?」


「……してない」


 即答だった。


 ……たぶん嘘だ。


 その時。


 足音がした。


 人の足音。


「止まれ」


 祖父の声で、即座に動きを止める。


 気配は前方。


 複数。


 数秒後。


 暗がりの奥から、二人の影が現れた。


「……人か?」


 低い声。


 警戒している。


「そっちもな」


 祖父が答える。


 距離、約十メートル。


 互いに、動かない。


 先に口を開いたのは、向こうだった。


「……ここ、ヤバくないか?」


 少し軽い声。


 でも、緊張しているのが分かる。


「ヤバいな」


 祖父は即答した。


「……だよな」


 その男が、少しだけ肩の力を抜く。


「俺、蓮斗」


「悠真だ」


「……白峰」


 もう一人が短く名乗る。


 眼鏡をかけた、冷静そうな男だった。


「……二人か」


 祖父が小さく呟く。


「そっちは?」


「三人だ」


 俺は答える。


 ぴーちゃんも含めていいのかは分からないけど。


「……三人?」


 蓮斗が首を傾げる。


 その瞬間。


 ぴーちゃんが、ひょこっと顔を出した。


「……」


「……」


「……何それ」


「……ぴーちゃん」


「いやそういうことじゃなくて」


 空気が一瞬だけ緩む。


 でも、それはすぐに終わった。


 奥から、音がした。


 ズルッ、と何かを引きずるような音。


「……来るぞ」


 祖父の声が低くなる。


 全員の視線が、同じ方向を向く。


 暗闇の奥。


 黒い影が、ゆっくりと現れた。


「……さっきのと同じか?」


「いや、数が多い」


 白峰が即座に答える。


 確かに。


 一体じゃない。


 二体、三体……それ以上。


「どうする?」


 蓮斗が一歩前に出る。


 考える。


 一瞬だけ。


 でも、すぐに分かる。


「……一人じゃ無理だ」


 口に出す。


「組むぞ」


 その言葉に、蓮斗が笑った。


「いいね、それ」


 白峰も頷く。


「合理的だ」


 祖父が、短く言う。


「前は任せる」


「了解!」


 蓮斗が飛び出す。


 速い。


 迷いがない。


 黒い影が腕を振り上げる。


 でも。


「そこ、来るぞ」


 思わず声が出た。


 蓮斗が、ギリギリで避ける。


「お、助かる!」


 ……見えてる。


 さっきと同じだ。


 どこに来るか、分かる。


「右からもう一体!」


「分かってる!」


 蓮斗が拳を叩き込む。


 黒い影が揺れる。


「動きが単純だな」


 白峰が冷静に言う。


「パターンがある」


「じゃあ崩せ」


 祖父が短く返す。


 連携。


 それぞれが、勝手に動いてるのに。


 妙に噛み合っている。


 ぴーちゃんが、小さく光った。


「……だいじょうぶ」


 その瞬間。


 身体の重さが、少しだけ軽くなった。


「……やっぱ何かしてるだろ」


「……してない」


 絶対嘘だ。


 最後の一体が崩れる。


 静寂。


「……いけたな」


 蓮斗が息を吐く。


「……悪くない」


 白峰が淡々と呟く。


 祖父が、こちらを見る。


「どうする」


 その意味は分かる。


 ここで別れるか。


 それとも――


「……組もう」


 自然に言葉が出た。


「一人より、確実だ」


 数秒の沈黙。


 そして。


「いいね、それ」


 蓮斗が笑う。


「合理的だな」


 白峰も頷く。


 祖父は、何も言わなかった。


 でも、否定もしなかった。


 ぴーちゃんが、小さく揺れる。


「……いっしょ」


 その一言で。


 少しだけ、安心した。


 まだ何も分からない。


 でも。


 一人じゃない。


 それだけで、少しだけ――


 戦える気がした。



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