第28話 「条件を揃える」
進む。
でも。
止まった。
「……ここだな」
自然に口に出る。
少し広い空間。
奥に続く一本道。
「……何もいねぇぞ?」
蓮斗が言う。
「だからいい」
「戦う場所を決める」
白峰が頷く。
「地形の固定か」
「……ああ」
今までは。
出会った場所で戦っていた。
でも。
それじゃダメだ。
条件が、相手に寄る。
だから。
「……こっちに寄せる」
戦場を作る。
「何するんだ?」
「準備」
それだけ。
周囲を見る。
壁。
床。
高さ。
全部使える。
「……蓮斗」
「おう」
「ここ、削れるか?」
「任せろ」
拳で叩く。
壁が崩れる。
「玲奈」
「……うん」
「通り道、限定する」
余計なルートを潰す。
一本道にする。
「白峰」
「位置管理か」
「……ああ」
距離を測る。
視界を調整する。
祖父が言う。
「遅い」
「……分かってる」
でも。
これが必要だ。
ぴーちゃんが、小さく揺れる。
「……すごい」
少しだけ、時間がかかる。
でも。
完成する。
一本道。
逃げ場なし。
見通し良好。
「……これでいい」
蓮斗が笑う。
「罠ってやつか」
「違う」
「条件だ」
白峰が言う。
「環境による優位性確保」
祖父が頷く。
「ようやくか」
その時。
気配。
「……来る」
全員が構える。
影。
あの存在。
人型。
同じ。
あの時と。
「……ここでやる」
逃げない。
でも。
正面でもない。
条件を揃えた。
それで。
どうなるか。
試す。
影が、動く。
速い。
でも。
「……見える」
一本道。
動きが制限される。
予測が効く。
「今だ!」
蓮斗が前に出る。
止める。
玲奈が抜ける。
今までより。
通る。
「……当たる」
白峰が叫ぶ。
「効いている!」
影が、少しだけ揺れる。
初めて。
“通じた”。
「……いける」
でも。
次の瞬間。
影が、止まる。
そして。
壁を、壊す。
「……は?」
一撃。
通路が崩れる。
広がる。
「……適応してる」
白峰が呟く。
あの言葉。
【適応を開始します】
現実になる。
影が、動く。
さっきより速い。
「下がれ!」
祖父の声。
即座に距離を取る。
「……くそ」
蓮斗が歯を食いしばる。
「通じたのに」
「すぐ対応された」
白峰が言う。
「学習している」
玲奈が、低く言う。
「……やばい」
ぴーちゃんが震える。
「……だめ」
俺は、前を見る。
一瞬。
通じた。
でも。
すぐに、崩された。
つまり。
これだけじゃ足りない。
もっと。
重ねる必要がある。
条件を。
さらに。
その先へ。
勝つためじゃない。
勝てる形を作るために。
戦いは。
まだ。
始まったばかりだった。




