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第26話 「届かない背中」



 進む。


 足は止まらない。


 でも。


 視線は、前にある。


 玲奈。


 少し前を歩いている。


 距離は、ほんの少し。


 でも。


 遠い。


「……来る」


 玲奈が、小さく言う。


 全員が構える。


 気配。


 速い。


 疾影。


 裂爪。


「……またか」


 蓮斗が前に出る。


「行くぞ!」


 動く。


 でも。


 その瞬間。


 玲奈が、消えた。


「……は?」


 一瞬。


 見失う。


 次の瞬間。


 疾影が、崩れている。


 さらに。


 裂爪も。


「……速すぎる」


 白峰が呟く。


 玲奈が、戻ってくる。


「……終わり」


 それだけ。


 息も乱れていない。


 蓮斗が笑う。


「おいおい」


「やばすぎだろ」


 白峰が言う。


「単独処理能力が上がっている」


「さっきより明確に」


 祖父が言う。


「見えてきているな」


 玲奈は、何も言わない。


 ただ。


 前を見る。


 その背中。


 小さい。


 でも。


 遠い。


「……」


 俺は、動く。


 でも。


 遅れている。


 理解している。


 見えているものが違う。


 踏み込みが違う。


 判断が違う。


 全部。


 少しずつ。


 届いていない。


「……なあ」


 蓮斗が声をかける。


「気にすんなよ」


「……気にしてない」


「嘘つけ」


 即答だった。


「顔に出てる」


 白峰も言う。


「比較しているな」


「……してない」


「している」


 否定できない。


 祖父が言う。


「見ろ」


「……何を」


「背中だ」


 玲奈。


 前を歩いている。


 止まらない。


 迷わない。


「……届かない」


 自然に出た。


「今はな」


 祖父の声。


「今は?」


「そのうちな」


 短い。


 でも。


 否定じゃない。


 白峰が言う。


「差はある」


「だが」


「埋まらないとは言っていない」


 蓮斗が笑う。


「追いつけばいいだけだろ」


 簡単に言う。


 でも。


 それが正しい。


 玲奈が、少しだけ振り返る。


「……くる?」


 その一言。


 挑発じゃない。


 ただの確認。


 でも。


 それで十分だった。


「……行く」


 小さく答える。


 玲奈が、少しだけ頷く。


 それだけ。


 また前を向く。


 進む。


 距離はある。


 でも。


 止まらなければ。


 近づく。


 いつか。


 追いつく。


 そう思えるだけで。


 十分だった。


 ぴーちゃんが、小さく揺れる。


「……いっしょ」


「……ああ」


 小さく返す。


 まだ届かない。


 でも。


 届かないままじゃない。


 進む。


 そのために。


 強くなる。


 一歩ずつ。


 確実に。


 届かない背中は、追いかけるためにある。


 だから。


 止まらない。



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