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第24話 「置いていかれた側」


 進む。


 足は動いている。


 戦える。


 問題はない。


 でも。


「……」


 違和感があった。


 玲奈。


 あの戦い。


 一人なら勝てるかもしれない。


 そう言った。


 実際。


 少しだけ、見えていた。


 俺には、見えなかったものが。


「……なあ」


 蓮斗が声をかけてくる。


「どうした」


「いや、お前」


「静かすぎねぇか?」


「……そうか?」


「そうだよ」


 白峰も、少しだけこちらを見る。


「思考が内に向いている」


「珍しいな」


 祖父は、何も言わない。


 ただ。


 見ている。


 分かっているんだろう。


 俺の中で。


 何かがズレていること。


「……別に」


 言葉が、軽くなる。


 でも。


 本当は違う。


 分かっている。


 さっきの戦い。


 あの存在。


 俺は。


 何もできなかった。


 見えなかった。


 追いつけなかった。


 繋げなかった。


 今までやってきたこと。


 全部。


 通じなかった。


「……置いていかれてるな」


 ぽつりと、出た。


 蓮斗が止まる。


「……は?」


「玲奈は見えてた」


「俺は見えてない」


「それだけだ」


 簡単な話だ。


 でも。


 重い。


 白峰が、静かに言う。


「比較する必要はない」


「役割が違う」


「……分かってる」


 分かっている。


 でも。


 納得はしていない。


 祖父が言う。


「焦るな」


「……焦ってない」


「嘘だな」


 即答だった。


 少しだけ、息が詰まる。


「……」


 言い返せない。


「……いい」


 祖父は、それ以上言わない。


 でも。


 分かる。


 今の俺は。


 ズレている。


 ぴーちゃんが、小さく揺れる。


「……だいじょうぶ」


「……ああ」


 小さく返す。


 でも。


 本当は。


 分からない。


 大丈夫なのか。


 このままでいいのか。


 その時。


 気配。


 来る。


「……来るぞ」


 現れたのは。


 疾影。


 裂爪。


 速い構成。


「……行く」


 動く。


 でも。


 ズレている。


 踏み込みが遅い。


 判断が遅い。


「……っ!」


 疾影が来る。


 避ける。


 でも。


 ギリギリ。


「遅い!」


 祖父の声。


 分かっている。


 でも。


 身体が追いつかない。


 玲奈が動く。


 速い。


 処理する。


 もう一体。


 蓮斗が止める。


 白峰が指示する。


 終わる。


 静寂。


「……大丈夫か」


 蓮斗が言う。


「……ああ」


 でも。


 分かっている。


 今の戦い。


 俺がいなくても。


 成立していた。


 むしろ。


 俺がズレたせいで。


 危なかった。


「……」


 言葉が出ない。


 ぴーちゃんが、静かに寄ってくる。


「……いっしょ」


「……ああ」


 その一言で。


 少しだけ。


 戻る。


 でも。


 消えない。


 この感覚。


 置いていかれている。


 追いつけていない。


 それが。


 今の現実だった。


 祖父が、静かに言う。


「いい」


「そのまま行け」


「……は?」


「止まるな」


 短い。


 でも。


 意味は分かる。


 今は。


 考えすぎるな。


 進め。


 それだけ。


 小さく頷く。


 まだ。


 足りない。


 でも。


 止まらない。


 それだけは。


 決めている。


 置いていかれているなら、追いつけばいい。


 それだけの話だ。


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