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第22話 「傷と代償」



 静かだった。


 さっきまでの戦闘が嘘みたいに。


 でも。


 空気は重い。


「……まだ痛むか」


 祖父の声。


「……ああ」


 蓮斗が、腕を押さえる。


 ぴーちゃんの回復で、傷は塞がっている。


 でも。


 完全じゃない。


「……動くけど」


「違和感あるな」


 白峰が言う。


「回復は完全ではない」


「損傷は残る」


 玲奈が、静かに自分の腕を見る。


「……同じ」


 彼女も、無傷じゃない。


 自己回復。


 それでも。


 無限じゃない。


 祖父が言う。


「覚えとけ」


「ダメージは消えない」


「積み重なる」


 短い。


 でも。


 重い。


 俺は、手を見る。


 震えている。


 気づかなかった。


 疲れている。


「……これ」


 自然に口に出る。


「戦い続けたら」


「そのうち、動けなくなる」


 誰も否定しない。


 それが現実だった。


「……ならどうする」


 蓮斗が言う。


「休むしかねぇだろ」


「それだけじゃ足りない」


 白峰が言う。


「回復手段が必要だ」


 ぴーちゃんが、小さく揺れる。


「……がんばる」


「……頼む」


 でも。


 分かっている。


 ぴーちゃんだけじゃ足りない。


 その時。


 床に落ちていた因子。


 さっきの戦闘のもの。


「……これ」


 蓮斗が手に取る。


「回復系とかねぇのか?」


 白峰が言う。


「可能性はある」


「だが」


「内容は不明だ」


 祖父が言う。


「使うか?」


 また、その問い。


 俺は、少しだけ考える。


 強くなる。


 回復できるかもしれない。


 でも。


 あの違和感。


 世界の声。


 ぴーちゃんの反応。


「……まだやめる」


 蓮斗が、少しだけ笑う。


「まあ、そう言うと思った」


「でもよ」


「いつかは使うんだろ?」


「……ああ」


 その時は来る。


 でも。


 今じゃない。


 玲奈が、ぽつりと言う。


「……使ったら」


「どうなるか、分からない」


 その言葉。


 全員が理解している。


 これは。


 ただの“強化”じゃない。


 何かがある。


 ぴーちゃんが、小さく震える。


「……いや」


 その一言で。


 少しだけ、確信する。


 これは。


 簡単に使っていいものじゃない。


 祖父が言う。


「なら、別の手段を探せ」


 それが答えだった。


 回復。


 維持。


 継続。


 戦うためには。


 必要なものがある。


 今までは。


 戦い方だけだった。


 でも。


 これからは違う。


 生き残るための“準備”。


 それが必要になる。


 俺は、前を見る。


 まだ、奥がある。


 でも。


 その前に。


 やるべきことがある。


 強くなるだけじゃ足りない。


 続けられる強さが必要だ。


 ぴーちゃんが、小さく揺れる。


「……いきる」


 その一言で。


 全部、繋がった。


 勝つためじゃない。


 生きるために。


 そのために。


 準備する。


 整える。


 選ぶ。


 そして。


 進む。


 強さには、必ず代償がある。


 だから。


 それを理解して、使う。



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