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第17話 「遅れた一歩」

“重なる動き”。


 それを掴んでから、戦闘は変わった。


 速い。


 ズレない。


 崩れない。


「……いい感じじゃねぇか」


 蓮斗が笑う。


「効率が上がっている」


 白峰も頷く。


 祖父が短く言う。


「慢心するな」


「分かってるって」


 軽口。


 でも。


 確かに、余裕があった。


 その時。


 気配。


 複数。


「……来るぞ」


 現れたのは。


 影獣。


 疾影。


 そして――


 裂爪。


「……新しいのか」


 細い。


 鋭い。


 明らかに攻撃特化。


「高火力タイプ」


 白峰が言う。


「一撃が重い」


「なら当たらなきゃいい」


 蓮斗が前に出る。


「行くぞ!」


 動く。


 今まで通り。


 重ねる。


 合わせる。


 順調だった。


 影獣を削る。


 疾影を捌く。


 問題ない。


 でも。


「……っ!」


 一瞬。


 ズレた。


 ほんの、わずか。


 踏み込みが、遅れた。


 その瞬間。


 裂爪が、来た。


「――!」


 間に合わない。


 蓮斗の腕に、深く入る。


「っ……!!」


 血が飛ぶ。


「蓮斗!」


 後ろに跳ぶ。


 でも。


 傷が深い。


「……やべぇな」


 歯を食いしばる。


 ぴーちゃんが、強く光る。


「……だめ!」


 回復。


 でも。


 完全じゃない。


「……遅れたな」


 祖父の声。


「……ああ」


 分かっている。


 ほんの一瞬。


 それだけで。


 崩れる。


「立てるか!」


「立てる!」


 蓮斗が前に出る。


 でも。


 さっきより動きが鈍い。


「無理するな!」


「無理しねぇと終わるだろ!」


 その通りだった。


 白峰が言う。


「優先順位を変更する」


「裂爪を最優先」


「了解!」


 動く。


 さっきまでとは違う。


 慎重。


 正確。


 でも。


 遅い。


「……まだズレてる」


 焦る。


 その瞬間。


 疾影が来る。


「っ!」


 避ける。


 でも。


 また遅れる。


「……落ち着け」


 祖父の声。


「一歩でいい」


「完璧を狙うな」


 その言葉で。


 少しだけ、戻る。


 そうだ。


 一歩。


 それでいい。


「……玲奈、合わせる」


「……うん」


 動く。


 完璧じゃない。


 でも。


 ズレない。


 裂爪が来る。


 今度は。


 遅れない。


「……そこだ」


 当てる。


 玲奈が重ねる。


 削る。


 蓮斗が踏み込む。


 止める。


 崩れる。


 残りも処理する。


 終わり。


 静寂。


「……はぁ……」


 蓮斗が座り込む。


「やっぱ一発重ぇな」


「遅れたのが原因だ」


 白峰が言う。


 祖父が言う。


「いい経験だ」


 頷く。


 今、分かった。


 どれだけ強くなっても。


 完璧じゃない。


 ズレる。


 遅れる。


 その一瞬で。


 終わる。


 ぴーちゃんが、小さく揺れる。


「……こわい」


「……ああ」


 本当に。


 怖い。


 でも。


 それでも。


 進むしかない。


 止まれば。


 終わる。


 だから。


 次は。


 遅れない。


 その一歩を。


 積み重ねる。


 一瞬のズレが、命を分ける。


 それが。


 この世界だった。


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