第15話 「生き残るための形」
進む。
奥へ。
さっきの戦闘から、空気が変わっていた。
「……さっきの、良かったな」
蓮斗が肩を回しながら言う。
「優先順位の変更が有効だった」
白峰が淡々と補足する。
「……でも」
自然に口に出る。
「まだ、安定してない」
「まあな」
蓮斗が頷く。
「たまたま上手くいった感じだし」
「再現性が必要だ」
白峰の言葉。
祖父が言う。
「形にしろ」
短い。
でも、分かる。
今までと同じだ。
偶然を、必然にする。
その時。
気配。
しかも。
多い。
「……来るぞ」
奥から現れたのは。
影獣。
そして。
重殻。
「……硬いのも来たか」
蓮斗が舌打ちする。
さらに。
後ろに。
統制核。
「……またかよ」
白峰が低く言う。
「強化構成だ」
影獣が速くなる。
重殻が前に出る。
「……厄介だな」
祖父が言う。
「どうする」
考える。
今までなら。
指揮型を先に落とす。
でも。
今回は違う。
重殻が邪魔だ。
進めない。
「……順番変える」
「どういうことだ?」
「まず壁を崩す」
白峰がすぐに理解する。
「合理的だ」
蓮斗が笑う。
「任せろ!」
「蓮斗、重殻押さえろ」
「おう!」
ぶつかる。
「っ……硬ぇ!」
止まる。
それでいい。
「玲奈、側面」
「……いく」
横から入る。
でも。
「……通らない」
刃が弾かれる。
「耐久が高すぎる!」
白峰が言う。
なら。
「……崩す」
無駄を削る。
力を一点に集中する。
「一点に当てろ!」
「了解!」
蓮斗が同じ場所を叩く。
玲奈が、そこに重ねる。
繰り返す。
何度も。
無駄なく。
同じ場所に。
ひびが入る。
「……来た」
「あと一撃!」
蓮斗が叩き込む。
重殻が、崩れる。
「よし!」
その瞬間。
「次、統制核!」
玲奈が抜ける。
今度は、止めるものがない。
一瞬で距離を詰める。
「……落とす」
一閃。
統制核が崩れる。
影獣の動きが鈍る。
「今だ!」
残りを処理する。
あっという間だった。
静寂。
「……さっきより良くねぇか?」
蓮斗が笑う。
「優先順位の最適化が進んでいる」
白峰が言う。
祖父が短く言う。
「形になってきたな」
小さく息を吐く。
確かに。
さっきより。
安定している。
偶然じゃない。
選んだ。
判断した。
それで勝った。
ぴーちゃんが、小さく揺れる。
「……すごい」
ノワールが、静かに歩く。
何かを見ている。
床。
そこに。
また、“因子”が落ちていた。
今度は、二つ。
少しだけ、光が強い。
「……増えてるな」
「個体差か」
白峰が言う。
「強い敵ほど、多い可能性がある」
蓮斗が笑う。
「いいじゃねぇか」
「ガンガン取ろうぜ」
その言葉に。
少しだけ、違和感が走る。
さっきと同じだ。
“取る”ことに、慣れていく。
それが。
正しいのか。
分からない。
その時。
また、声が響いた。
【報酬を付与します】
少し遅れて。
【……正常です】
白峰が呟く。
「……またズレたな」
祖父が、静かに言う。
「……ああ」
ぴーちゃんが、震える。
「……やだ」
その一言で。
確信が強くなる。
この“力”。
この“仕組み”。
何かがおかしい。
でも。
今はまだ。
使うしかない。
生き残るために。
その中で。
何を選ぶか。
それが。
この先を決める。
形は、できてきた。
あとは、それをどう使うか。




