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第14話 「勝つためじゃない」



 戦闘のあと。


 誰もすぐには動かなかった。


 疾影。


 今までとは違う敵。


 そして――


「……これ」


 手の中の“黒い粒”。


 まだ、微かに光っている。


「それが因子、か」


 白峰が言う。


「……そう呼ぶのか」


「仮だ」


 蓮斗が覗き込む。


「それで強くなんのか?」


「……多分」


 正直、それしか分からない。


 でも。


 身体の奥で、何かが反応している。


 取り込めば、変わる。


 そんな感覚。


 祖父が言う。


「使うか?」


 短い問い。


 でも、重い。


 俺は、少しだけ考える。


 強くなる。


 それは間違いない。


 でも。


 ぴーちゃんの言葉が、引っかかる。


「……ちがう」


 あの一言。


 何が違うのかは分からない。


 でも。


「……今はやめる」


 そう答えていた。


「は?」


 蓮斗が声を上げる。


「なんでだよ」


「……分からない」


 正直に言う。


「でも、今じゃない気がする」


 白峰が、少しだけ考える。


「合理的ではない」


「分かってる」


「だが」


 そこで言葉を止める。


「……違和感を優先するのは、悪くない」


 祖父が、小さく頷く。


「いい判断だ」


 蓮斗が頭をかく。


「まあ、お前がそう言うならいいけどよ」


 玲奈が、ぽつりと呟く。


「……使わないの?」


「……今は」


「……そう」


 それ以上は聞かない。


 ただ、それだけだった。


 ぴーちゃんが、小さく揺れる。


「……いい」


 その一言で。


 少しだけ、安心した。


 少し休んでから、再び進む。


 奥へ。


 静かだ。


 でも。


 さっきとは違う。


 何かが変わった。


 自分の中で。


 選んだ。


 強さを。


 拒んだ。


 それだけのことなのに。


 妙に、はっきりしている。


 その時。


 奥から、音。


 重い。


 複数。


「……来る」


 姿が現れる。


 影獣。


 そして――


 その奥に。


 別の影。


 少しだけ、浮いている。


「……なんだあれ」


 蓮斗が眉をひそめる。


「……指揮型」


 白峰が言う。


「周囲を強化している」


 影獣の動きが変わる。


 速い。


 硬い。


「……厄介だな」


 祖父が言う。


「先に落とす」


「了解」


 動く。


 でも。


 さっきまでとは違う。


 連携。


 崩さない。


 でも。


 固定もしない。


「蓮斗、押さえろ」


「任せろ!」


 前に出る。


「玲奈、抜けろ」


「……うん」


 横から入る。


「白峰、位置」


「中央奥。浮遊」


 見える。


 全体が。


 最適が。


 でも。


 今回は。


 それに頼りすぎない。


 考える。


 選ぶ。


 動く。


 玲奈が、抜ける。


 影獣を無視して。


 指揮型へ。


「……落とす」


 刃が届く。


 その瞬間。


 影獣の動きが止まる。


「……切れた」


 白峰が呟く。


「強化が消えた」


「今だ!」


 蓮斗が叩き込む。


 影獣が崩れる。


 次々に。


 終わり。


 静寂。


「……さっきより楽だな」


「優先順位を変えただけだ」


 白峰が言う。


 祖父が、こちらを見る。


「……分かったか」


 小さく頷く。


 勝つこと。


 それだけじゃない。


 どう勝つか。


 何を選ぶか。


 何を捨てるか。


 それが。


 戦いだった。


 ぴーちゃんが、小さく揺れる。


「……いいね」


 俺は、手の中の因子を見る。


 まだ使っていない。


 でも。


 いつか、使う。


 その時。


 何を選ぶか。


 それが。


 これからの戦いを決める。


 勝つためじゃない。


 生きるために、選ぶ。



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