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第12話 「無駄を削る」

戦い方は、変わり始めていた。


 役割を持つ。


 でも、固定しない。


 その中で。


「……一番邪魔なのは何だと思う?」


 白峰が、唐突に言った。


「は?」


 蓮斗が眉をひそめる。


「敵じゃねぇのか?」


「違う」


 即答だった。


「無駄だ」


 短い一言。


 でも、妙に納得した。


「……無駄?」


「そうだ」


 白峰は続ける。


「余計な動き。余計な判断。余計な迷い」


「それが全て、遅れになる」


 確かに。


 さっきの戦いでも。


 ほんの少しのズレが、危険に繋がっていた。


「……じゃあ、それ消せばいいのか?」


「できればな」


「簡単に言うなよ」


「簡単ではない」


 白峰は、淡々としている。


「だが、削れるものはある」


 祖父が、短く言う。


「やってみろ」


 それだけで、決まった。


 その時。


 気配。


「来るぞ」


 黒い影が現れる。


「三体」


「……ちょうどいいな」


 白峰が言う。


「実験だ」


「実験っておい」


「いいから動け」


 いつも通り。


 でも。


 意識だけ変える。


 無駄を削る。


 蓮斗が前に出る。


「こっちだ!」


 引きつける。


 でも、動きが違う。


 踏み込みが少ない。


 余計なフェイントがない。


「……速いな」


 玲奈が横に入る。


「……削る」


 最短距離。


 無駄がない。


 白峰が言う。


「左、処理可能」


 短い。


 説明がない。


 でも、分かる。


 身体が動く。


 考える前に。


 最短で。


 ズレを埋める。


 黒い影が、一体崩れる。


「……早い」


 蓮斗が呟く。


 次。


 無駄に動かない。


 必要な分だけ動く。


 それだけで。


 時間が変わる。


 最後の一体。


「今」


 短く言う。


 蓮斗が止める。


 玲奈が切る。


 終わり。


 静寂。


「……なんだ今の」


「無駄が減っただけだ」


 白峰が淡々と答える。


「いや、でもさっきより――」


「速い」


 玲奈が、ぽつりと言う。


 祖父が頷く。


「無駄は命を削る」


「削れば、生き残る」


 単純な話だ。


 でも。


 それが、一番難しい。


 ぴーちゃんが、ふわっと揺れる。


「……すごい」


 ノワールが、静かに尻尾を動かす。


 少しだけ、機嫌が良さそうだった。


 俺は、手を見る。


 さっきより、動きが軽い。


 無駄が減っただけで。


 ここまで変わる。


 でも。


「……まだあるな」


「何がだ?」


「削れる無駄」


 白峰が、小さく笑う。


「当然だ」


 祖父が言う。


「終わりはない」


 その通りだった。


 削れば削るほど。


 見えてくる。


 まだ足りない部分。


 まだ遅い部分。


 まだ、弱い部分。


 無駄は、いくらでもある。


 だから、強くなれる。

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