第11話 「選ばれた役割」
戦闘のあと。
誰も、すぐには動かなかった。
さっきの敵。
今までとは違った。
「……勝てたな」
蓮斗が、床に座りながら呟く。
「辛勝だ」
白峰が即座に訂正する。
「どっちでもいいだろ」
「違う。認識は重要だ」
淡々とした言葉。
でも、間違ってはいない。
祖父が壁に寄りかかる。
「……よくやった」
短い一言。
それだけで、少しだけ力が抜けた。
ぴーちゃんが、ふわっと揺れる。
「……だいじょうぶ」
疲れが、少しだけ引く。
玲奈が、静かに座る。
「……」
腕の傷は、まだ完全には塞がっていない。
「無理すんな」
「……平気」
短い返事。
でも、さっきより呼吸が荒い。
完全じゃない。
「……自己回復にも限界があるな」
白峰が言う。
「……うん」
玲奈は否定しなかった。
少しだけ、沈黙。
その中で。
俺は、考えていた。
「……役割」
自然に口に出る。
「どうした?」
「……決まってきたなって思って」
蓮斗が笑う。
「いいじゃねぇか、分かりやすくて」
「分かりやすいのは利点だ」
白峰が頷く。
「だが――」
少しだけ間を置いて。
「固定は、弱点にもなる」
「……だな」
さっき、実感したばかりだ。
役割は強い。
でも。
読まれる。
祖父が言う。
「ならどうする」
「……選ぶ」
言葉にする。
「固定するか、崩すか」
「状況で変える」
白峰が、すぐに補足する。
「それが最適だ」
蓮斗が頭をかく。
「難しくねぇか?」
「難しい」
「でも、それしかない」
それが現実だ。
玲奈が、小さく呟く。
「……私は」
全員の視線が向く。
「……削るの、慣れてる」
「……でも」
「……引くのも、できる」
それだけだった。
でも。
十分だった。
「助かる」
短く返す。
蓮斗が笑う。
「俺も前だけじゃなくて動くわ」
「それでいい」
白峰が頷く。
「役割は“選ぶもの”だ」
祖父が最後に言う。
「決めつけるな」
それだけで。
全部、繋がった気がした。
ぴーちゃんが、小さく揺れる。
「……いいね」
ノワールが、静かに目を細める。
何も言わない。
でも。
そこにいる。
変わらず。
俺は、少しだけ前を見る。
まだ、足りない。
でも。
確実に、形になっている。
役割は、武器になる。
でも、それに縛られるな。
それが。
今、分かったことだった。




