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第二話「彼の言葉」



私の中の時が止まった…。



…。



それから少しして私と一樹は帰った。


無言のまま、並んで歩いた。

こんな事があると

陽がおちてきた空はもっと暗くみえる。

下を向いてうつむいていると、一樹が口をひらいた。


「ねぇー。紗江。俺の病気のこととか聞かないの?」


聞いて欲しそうな顔していう。

最初から聞いて欲しいなら自分から言えよ、って冷たくするのがいつもの私だけど

今回ばかりはそうはいかなかい。

そう考える私もどうかしてると、少し前の私は思ってるだろう。

さすがに、今の一樹に今までの私で接していられない。なんとなく。


「なんの病気なの?」


「あててみてくだされー!」


即言われた。

まじなんなのこいつ。すごいはっちゃけた顔で言われたんだけど…。


「…ガン?」


「あったりいいいいいい!!」


…単純だなぁ。


「ガン、治せないの?」


「俺の中のガン馬鹿にすんなよー!消しても再生するんだぜ!」


…こいつ、自分の中のガンをまるで最強の我が部下のように褒めてる。

しかも何このテンションの高さ。


私、こういうの嫌なんだよね。

つらいくせして笑顔振り向くやつ。

…あ、それって私もいうのかな。

…ん、私 笑ってないか。


「余命宣告されて、その原因となるガンを褒めるってアンタどんだけお人よしなの」


一瞬顔を曇らせた一樹は言う。


「俺の中のものは俺のものだからな」


今にも崩壊しそうな緩い笑顔をみせ、そっぽを向く。


「ちゃんと治療はしてるの?」


「そんなの当たり前だろー。治療しても意味ないからもう手は加えないのー。」


そしてその短い人生の間を私で暇つぶし?…って言いたい前の自分がでてきそうになった。


「自然消滅すればいいのにね」


余命宣告もされりゃあ自然消滅なんかありえないか。


「そーだよな!この俺のみなぎるパワーとエネルギーと紗江の貴重なめったにない笑顔で!」


ちょ、近所迷惑。薄暗い夜の7時半によく住宅街で叫ぶよ…。

しかも恥ずかしいセリフを…。


「ふぁふぁふぁ…」小声で笑ってみた。


そしたら、しらけた。

なんか私馬鹿みたいじゃん。


「なぁー。結局俺と付き合ってくれるわけ?」


…忘れてた。

っていうか…私、一樹好きじゃないし。


「付き合うってさ、両想いじゃなきゃ意味ないじゃん」


「うん、まぁそうだなー。だから付き合おう?」


「いや、私、その、いや…」


ハッキリ言っていいのかね…。


「…いやぁ?いいよ?別に。付き合ってくれないならそれで。」


いいのかい。それじゃあ、付き合わない、を注文しまーす。


「もう、俺と会わないっていう条件つきで!はははー」


…なにこいつ?


「クラス同じなんだから会っちゃうじゃん」


「だーかーら、紗江は学校きちゃだめなんですー」


「…」


いや、ムリ。まじ。

私、こう見えて中学生からずっと無欠席無遅刻無早退なんで…。

この4年ちょいの記録を…。


「記録を壊したくなければ俺と付き合うといい!全て嫌なら俺、死んだらお前にとり憑くからなー!」


「…。そこまでいうなら、別にいいけど。」


なんかめんどくさいからいいや。


「やったあぁああああああああああぁああああああ!!!!!!!」


「いや、近所迷惑だから叫ぶのやめてくれる…?」


満面の笑顔でこっちをみる。

少し赤くなった頬を伝うのは、涙だった。


「ありがと、まじで。」


一樹の軽く茶色がかった髪が揺れた。


「そんなに嬉しいの」


「俺、どんな顔してんのさー!」


一樹は携帯を取り出して、私の肩を抱いてひきよせる。


「ハイ、チーズー!!!」



ピロリーン。



一緒に写メとられた。

まぁもう今更いいけどさぁ。


「うっわーーーー!!照れー!!!/////////////」


撮った写メをみてしゃがみ込んで照れまくる一樹。


なんか、ここまではっちゃけてると笑いたくなる…。

笑いたくないんだけどさぁ?


「お!!紗江、笑ってる!」


「えっ?」


ピロリーン。



うっわぁ!!


「ちょっと消してよ!!てか、笑ってないってば!!」


必死で携帯をとろうとしたら、画面がみえた。

少し口元が上にあがって緩く笑ってる私がいた。


「…んー。そっか…。」



この一樹の異変をきっかけに私も変わっていくのかもしれない。

私の過去も覆すくらい良いことがあるかもしれない。

笑った証拠を撮った一樹にだけは、心を、許せるかも。




「紗江。」


「うん?」







「俺、死ぬまでの間、俺が紗江を幸せにするから」








顔はみえなかったけど、今までの言葉より心に沁みた。



私も、一樹が死ぬまでの間、一樹を幸せにさせたい。

私を選んでくれた、私を救ってくれたやつだし…。



変わってく自分にちょっと違和感を感じる私だけど、

これもなんかいいのかな。




今の私からみると、少し前の自分がアホにみえる。

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