四連――キオクノカガミ
小さいころから、鏡や水面が苦手だった。何かが、自分を反射させているのを見るのが。見るたびに、「自分でない自分」が見えてしまうから。
「ちょっと待って。思い出したいことがあるから」
それだけ言って、目を閉じる。
――あのときのことだ。
小さいころ、ずっと引っかかっていた記憶。
おぼろげだけど、確か・・・
”幼少期の記憶
「おとおさあ~ん!みてみて!」
幼い犬みたいな走り方で、ベンチに座っているお父さんに駆け寄る私。
「お!どうした、何か作ったのか?」
「ちがうよ!ほら、これ!」
お父さんの袖をぐいぐい引っ張りながら歩く私は、まだ4歳。
「こらこら。見つけたものは見たいけど、そんなに急ぐと転ぶぞ」
そう言いながらも、お父さんもたのしそうだ。
「あった!ほら!これ!これ!」
大きな石造の前についた私は、大はしゃぎ。でも、お父さんはきょとんとして、
「ここに・・・何かあるのか?」
と首をかしげた。
「え!?なんで!?みえないの!?」
「え?どこ・・・?あ!わかった!下にあるんだな!」
地面に這いつくばるお父さん。
でも、私の目の前には、はっきりと光る――不思議な紋章が浮かんでいた。
「めのまえにあるのにぃ~!」
思わず泣いてしまった私。
「うお!?どうした!?というか、どこにあるんだ~!?」”
――あれは、ただの思い出じゃない。
あのやり取りをした場所は――
「闇の世界のナイトパーク!」
パッと顔を上げ、ナイトパークに向かって走る。あれは――あの石造は、私にしか見えないものだった。
後ろを向くと、フォレスもついてくる。
私に任せると言ってくれているように、うなずいた。
今、二つの世界はつながっているから、どっちが闇の世界か見ただけではわからない。でも・・・
間違いない。
こっちだ。
*
「ついた・・・」
息を整えながら、つぶやく。
あれから5分ほど走って、ナイトパークに到着した。
「ここから先は、慎重に行きましょう」
フォレスはそう言って、ナイトパークに足を踏み入れる。私も、そのあとについていった。
「ところで、ナイトパークはとても広いけれど、どこにある何を探したいの?」
「ああ、それは・・・」
言いながら、視界の端に映ったものを指さす。
「あそこにある石造だよ」
すぐに帰れるようにって、入口近くで遊んでたんだ。
フォレスは振り向いて・・・
「どこにある、石造・・・?」
と首をかしげる。あれ、なんか既視感・・・
「本当に見えないの・・・?」
「ええ、あそこでしょう?なにもないけれど・・・」
私が指さしたのと同じところを指すフォレス。
でも、見えていないと言っている。
つまり――
「本当に『私だけ』が見えてるの?」
「そうみたいね。でも、少し調べてみたら?私はここで待っているから」
そういって、フォレスはベンチに腰掛ける。
「うん。そうする。あ、でも図書館に伝説の大切な情報があった気がするから、1時間たったら教えて」
「ええ、いいわよ」
私は、石造のほうに向かった。
*
「そろそろ1時間経つわよ。図書館に行く?」
フォレスが呼びかける。
あれからずっと調べているが、大量の古代文字?が彫られてるのと、姿見ぐらいの大きさの鏡がはめ込まれているのを確認したあと、古代文字を解読しようとしてできない状態で、1時間経ってしまった。
「うん。そうだね。そろそろ公園から出――」
『まって!』
私の声にかぶさるようにして、誰かのこえが聞こえた。
――どこか懐かしくて、でも思い出したくない声だった。
「どうしたの?何かあったの?」
フォレスが話かけてきたが、私はそれどころではなかった。
大きな石造には、たくさんの古代文字が彫られている中で、一つだけ鏡があった。
――私は、その鏡が気にかかっていた。
心に直接聞こえた声は、一度きりで終わった。でも・・・
「鏡の中に、誰かいるの・・・?」
私は、そんな気がしてならなかった。




