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二連――シンノデアイ

 必死に走る。風を切る。少しでも早く、あの「境目」がどうなったのか、この目で見たかった。

 ―――そして、境目が見えてきた。

 正確には、境目「だった場所」が。

「ああああああ・・・」

 私は、その場に崩れ落ちる。

 なんだか、私のせいだと感じてしまった。心が苦しい。

 その時、異変を感じた大人たちが、両方の世界から、ぞろぞろとやってきた。

「君・・・何をした?何か知っているのか?」

 闇の妖精の一人が、私に聞いてきた。私は、その時、ぞくっと鳥肌が立つのを感じた。この人たちには、私が見たことは・・・言ってはいけない。そう思った。

「私は、何も知りません。壁がなくなっていたので、あった場所に入ってみただけで……」

 つい、こう言ってしまった。言っているうちに、罪悪感が出てきたけれど、大人たちは、「そうか、分かった。それじゃあ、君は、帰っていいぞ」と言って、納得してくれた。

 私は、帰らずに、声が聞こえるところで会話を聞いてみた。

「きれいになくなっているぞ」

「空もなんか変わってないか?」

「伝説には聞いていたが・・・」

「これで、やっと光の世界と闇の世界がつながる」

 会話を聞いていると、大人たちは、儀式に失敗していたこと、竜巻のことを覚えていないようだ。

 そもそも、なんで妖精界の住人は、二つの世界をつなげようとしているのだろう。

 私は、光の世界の野原へ駆け出した。

「ここらへんだったはず」

 探しているのは、あの花。私に「秘密」を見せてくれた、あの花。

「・・・あった。」

 見つけた。

 花は、まだ輝きを出している。

 手を組んで、花に話しかける。

「教えて。本当の―始まり。」

 そう言いながら、目を瞑る。優しい香りが、あたりに漂う。

 その香りは、まるで、「いいよ」と答えてくれるようだった。

 ”声が聞こえた。さっき聞いた声だ。声は、まるでおとぎ話を読むかのように語り始めた。

『ずっと昔、まだ光と闇の区別がなかった頃。妖精界には、「ひとつの空」と「ひとつの森」しかありませんでした』

 それと同時に私が見たのは、今と同じ空の世界だった。

 なんだかみんな、今よりもうれしそうだった。楽しそうだった。

『妖精たちは、光も闇もなく、朝も夜も混ざった“やわらかい時間”の中で生きていたのです』

『でもある日――森に落ちた一粒の「ちがう色の雫」から、光と闇の分かれ目が生まれました』

 気づけば森の中にいて、白と黒にはっきりと分かれた雫が落ちるのを見た。

 その瞬間。

 世界は光と闇に分かれ、間には壁ができた。

『その雫の名は、”ウロ”』

『世界の調和が乱れたのは、妖精たち自身のせいではなかったのです』

『始まりは、小さな「外から来た何か」。その“ウロ”は、光と闇に「分ける力」を持っていました』

『世界が二つに分かれた後、妖精たちは自分たちの意思でつなごうとしました――』

 例の謎の儀式が、早送りされて流れてくる。

『けれど、なぜか何度やっても失敗しました。その「失敗の記憶」も、その都度消されました』

『なぜなら――“ウロ”は、まだどこかにあるから』”

 目を開けると同時に、ものすごい風が吹きつけた。

 花が、根こそぎ抜けて、飛んでいく。思わず目を閉じた。


 目を開ける。風は止んでいた。

 その代わりに――女の人が立っていた。全身に、森のような気配をまとっていた。見た目年齢は、この世界と年の取り方が同じなら、20歳前後。

 呆然としていると、女の人が、口を開いた。

「私の名前は、フォレス。あなたを、『手伝う』ために、別の世界からやってきたの。あなたの名前は?」

 そう聞かれて、はっとした。私は、自分の名前を、知らない。そもそも、名づけられても、いないかもしれない。だって、私が生まれるとすぐに、壁が戻ってしまったんだから。それぞれの世界でも、「君」や、「あなた」としか呼ばれたことがない。

 すると、フォレスは、ふっと目を閉じて、言った。

「なら、これから見つければいい。あなたの“本当の名前”は、あなた自身が見つける名前だから」

 まるで、私の心を読んだかのように。

 このとき、私の胸に、ほのかに浮かび上がる“音”があった。

 それは、まだ“言葉”にはなっていないけれど、どこか懐かしくて、力強い響き。


「ミ……」

「…ラ……」

「…?」


 音が、どこからともなくささやくように聞こえる――

 でも、まだ完成していない。

「どこに行こうか。あなたが決めていいんだよ」

 私は―――

「先代の墓に行きたい。確かあそこに、不思議な紋章があった」

「そう、あの場所には、世界の深層に触れた者しか見えない“紋章”があると聞いている。あなたが、それを知っていたということは……やはり」

「??」

 少し気になったけれど、フォレスさんはそれ以上は語らず、私にすべてを委ねるように、静かにうなずいた。

「行きましょう――先代の墓へ」

 私とフォレスさんは、同時に走り出す。

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