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2-4 代わる代わる染まる

 実は書き溜めてあるので第1章自体は完結してるんですが、まとめて話ごとに更新するのか、分割して毎日更新するのか……。どっちが良いんだろう……。


挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)


 それからも、松永によるファッションショーは続く。


 次に現れたのは――――韓流スタイルのシズクだった。


 クロップド丈と呼ばれるタイトな白シャツにデニムシャツ、ダボっとしたパンツを合わせたヘソ出しコーデ。

 それは、シズクの端正な顔立ちと、持ち前のスタイルの良さを遺憾無く発揮している。


 かと思うと、今度はどこかのお嬢様かと見間違うような可憐さを纏い、シャツワンピース姿で現れる。


 シズクは自分が回ると、遅れてスカートがふわっと開くのが面白いのか、クルクルと回る。それが余計、魅力的だった。


 最後のコーデに着替える、シズク。

 それを待つ中で、カロは松永に言った。


「なんだかんだ言って、ついてきてもらって良かったかもな」


 どれも、自分にはインプットされていない組み合わせで、今時な感じ。

 服を選んでいる最中、いくら店内が広いとはいえ松永を見かけなかったのは、そもそも頭に引き出されるファッションも見ているものも全く違ったからだろう。


「別に。AIに聞けばいいだろ」


 そう言って松永は、右耳につけている三日月型のデバイスを数回タップする。


 これは近未来型ガジェットで、さっきの広告ような3Dホログラムやモーションキャプチャ、アイキャプチャなどを利用して造られたスマホに代わる通信機器だった。


 今、カロから見た松永は宙を右手でくすぐっているように見えるが、実際にはガジェットから松永にだけ見える光が放たれており、目の前に画面が表示されている。

 また、イヤホンとは違い、耳を塞がずに引っ掛けて使うことができることからも、最近はスマホから移行する人が増えてきているらしい。


 すると、松永が手を出し、言った。


「ほら、ジャンルとかニュアンスを伝えれば、いろいろ提案してくれるし」


 松永が再び近未来型ガジェットをタップすると、ガジェットの放つ光が他人にも見えるようになり、松永の差し出してきた手のひらの上にチョイスした服が立体的にいくつか表示される。

 そこには、まだまだ魅力的なコーデが並んでいた。


「……そういうところも含めて言ってんだ」


 カロは感心する。

 こういう最新機器をさらっと扱えるところが、松永の要領の良さを表している。

 そこも松永の魅力の一つだろう。が、同時に、


(そういえば、ヒュウガさんもこういう最新機器好きだったな。……ま、あの人はモテなかったけど)


 と、顔や印象も大事なのかもしれないとも思った。


 すっかりシズクのことを忘れてそんなことを話していると、最後のカーテンが開かれる。


 姿を現したシズクは、白のシャツとミニスカに淡いピンクのカーディガン、いかにも歯が溶けそうな甘いかわいさに包まれていた。これも似合っている。


 すると、それを見るなり、


「ま、最終的には顔が良いからなんでも似合うな」


 と、松永が言った。


 「かわいい」とか「綺麗」とか「顔が良い」とか、そういうことをさらっと言えるところ。そこにも、松永が女子人気が高い所以を見た気がした。シズクも可愛い服を着れて、満更でもなさそうだ。


「で、どれにするんだ。好きなの買ってやるよ」


 カロはそう言って、スマホで電子マネーの残高を見る。


「……2コーデまでなら」


「おいおい……」


 松永が、呆れたように言う。


 と、その時――――ちょうど2人の視線が外れたタイミングで、不意にシズクが店の中を歩き出した。


 それにいち早く気づいたのは――――カロだった。


「絶対戻ってくるから、ちょっと待っててくれ!」


 カロは松永にそう告げて、シズクを追いかける。


「おい、シズク! それ着たまま、試着室を出るんじゃねえ!」


 幸いシズクは、試着をしたまま店を出るようなことはしなかった。


 シズクの行動はどれも突発的で赤子のようだ。


 が、手紙にもあった、


《冥界にいた期間が長かったのと、土人形に魂を張り付けたから、魂自体の反応が鈍くなってる。だから、人の言葉は理解できても、初めは赤子みたいな行動をとるはずだ》


 という言葉通り、衝動的ではあるものの最低限のことは理解しているのかもしれない。


 シズクが立ち止まっていたのは、最初にカロが頭を悩ませていた4色のブラウスが並べてあるコーナーだった。

 そして、シズクはカロが来ると、スッと商品棚を指差す。


 シズクの指し示した先にあったのは――――白ではなく薄紫色のブラウスだった。


「あん? 紫? お前、白が好きな色なんじゃ……」


 そう言うと、シズクはふるふると首を横に振る。

 そして、もう一度意思を示すように、カロの目を見て薄紫色のブラウスを指し示した。


 結局、シズクは薄紫に黒のロングスカートを合わせたコーデで、店を出た。



   ▼ ▼ ▼ ▼



「タグ取ったから、返品効かねえからな」


 カロが、釘を刺すように言う。

 が、シズクはどこ吹く風。どこかご機嫌そうに、前を歩いていた。


「そっちの紙袋は?」


 松永が聞く。

 カロがシズクが着ていたジャージを入れた紙袋には、他にもシズクが店内を歩き回った時に着ていた白色のコーデも入っていた。


「最低でも、2着くらいはあった方がいいと思って。シズク、白好きらしいし」


 そう言って、シズクを見る。


 その姿は、行動は先ほどまでと同じでも、一気に大人の女性感が増していた。

 きっと、今シズクの魂がしっかりとしていてこの年齢差で出会っていたとしたら、自分が相手にされることはなかっただろう。それぐらい別世界な人の雰囲気があった。


 それから少しショッピングモールを歩くと、シズクは小さなドリンクショップの前で立ち止まった。


 すると、そのカウンターに備え付けられたソフトクリームマシンの前で、子供が1人。駄々を捏ねていた。


「いーやーだー! ソフトクリーム食べたい!」


「はぁ……。邪魔になるでしょ! お母さん、置いてくよ!?」


「いーやーだ! いーやーだ!」


 子供は、お店の前から退くために母親にズルズルと引きづられていく。と、近くにいた客がソフトクリームマシンを使ってソフトクリームを巻き始めた。


「やるか?」


 カロの問いに、シズクは頷いた。


 お金を払ってコーンを受け取ると、シズクはハンドルを下げ、ぬるっと出てくるシンプルなバニラソフトをぐるぐると巻いていく。


 そんな姿でさえ、今は子供っぽさの残る大人の女性って感じで、17歳と22歳という歳の差をしっかりと感じる。――――が、それも束の間のことだった。

 ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


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