11-end それぞれの行く道は【第2章 完結】
その後、アザミとシズクはカロが連絡を入れた回収班に回収される。と、同時に何者かが総司令の元へ届けた証拠が決め手となり、アザミの回復を待って会議が開かれた。
赤木陽華及び赤木家に対する処分を含む岩手動乱の会議では、アザミが中心となって監視カメラや文書、工場などを材料に岩手の反抗を立証することができた。
何よりその後押しとなったのは、岩手が負けた時刻になった途端――――岩手の率いていた隊が丸ごと特魔から消えたことだった。
さらに、手錠をしていたはずのリトリーとレンの姿は旧特魔から消えていたらしく、岩手派の行方は知れないままだった。
一方で、副司令はそれを聞かされていなかったのか、特魔に捉えられると追放処分となった。――――が、その一族に関しては、岩手のことがあったのを鑑みて一族追放とするかどうか再度検討されるようだった。
その後、改めて漁られた工場も、機械類は全て壊れていた上に魔石具は特魔で保管してあるもの以外は全て消えてもぬけの殻となっていた。
そうして、岩手動乱事件は多くの謎を残したまま、終焉を迎えるのだった。
▼ ▼ ▼ ▼
「――――以上が、会議を含めて記録された内容です」
総司令室。
机の上にタブレットが差し出される。総司令と対峙するのは、アザミだった。
「……禁書《妄信》は、回収できずか」
「ええ」
「表向きは、岩手の残党が持ち帰った。ということになっているが、本当はどうだったんだ?」
「……分かりません。ただ赤髪の男が骨喰加那太ごと連れ去って行きました。そばには、黒髪に眼鏡の男も」
「――――!」
「やはり、心当たりがあるのですね」
顔色を変えた総司令を見て、アザミは確信を持つと、
「もしかして、あの赤髪は赤木家の人間なのではないですか?」
と、聞いた。
その追求に、総司令は言葉を選ぶように息を吐くと、それから、
「あれは、赤木天日。――――私の弟で、お前の叔父だ」
と、ゆっくり答えた。
「叔父……。そんな近しい関係だったんですね。ですが、黒魔術師だとするなら、なぜ捕まえないのです。まさか、近親だから――――」
「――――違う。捕まえられないのだ。なにせ、奴こそが“禁書災禍“を起こした張本人であり、防衛に成功したドイツ以外の全ての禁書を盗み出した魔術師なのだから」
「全てを……!!」
「奴に対抗するには、少なとも同じ禁書を使うか、あるいは禁書に対抗しうる力を持つ者を集めるしかない」
「対抗しうる力……」
「ああ。――――そして、その象徴がお前なのだ。アザミ」
「え?」
「お前は禁書との戦いから2度生還している。それだけで、十分に実力者といえよう。さらには、家柄も十分。そこで――――」
すると、総司令は重みのあるしっかりとした言葉で、
「――――対禁書特化隊として、赤木アザミを長に隊を結成することにした。メンバーは未定だが、それ相応の実力を持つ者を送るつもりだ」
と、宣言した。
「た、隊長……!?」
「ああ。それに限り、玉砂シズクの所有を認める。奴も、メンバーに入れろ」
岩手動乱の事後報告に始まった総司令との会話は思わぬところに着地すると、アザミはそんなことを言い渡される。
いつか来る大きな戦いの時。
それに向けてまた時計の針が1つ進む音が、確かに聞こえた。
▼ ▼ ▼ ▼
バンッ――――車のドアが閉まる。
姿を現したのはアザミだった。そこは、墓場だった。
アザミはその中をずんずんと進み、やがて1つの墓場の前で立ち止まる。と、そこにいたのは、掃除をしていたシズクだった。――――刻まれていたのは、『赤木陽華』の文字だった。
「そこまでやらなくていいよ。……まだできたばっかだろ」
アザミが声をかけると、シズクは、
「アザミ……」
と、歩み寄って来た。
「どうだった?」
「……ひとまずは、丸く収まった。――――とは、言い難いな。あたしを、対禁書に特化した隊の隊長に任命するんだとよ。他メンバーは未定だけど、でもシズクはメンバーに入れろってさ。じゃないと、寮に置いとけないって」
「分かった」
アザミの浮かない報告に、シズクは二つ返事で答える。
「分かったって、お前……。対禁書ってことは、カロと戦うことになるかも知んねえんだぞ」
「うん。でも、大丈夫」
すると、シズクは胸に手を持っていく。
「コアに魔力を供給する小さい魔石、家から無くなってた。でも、魔力供給は止まってない。きっと、カロが持っていった。魔力を通じて、それが分かる」
そして、墓のほうを向くと、
「陽華さんが残してくれた、繋がりのおかげ」
と、続け、
「カロ、変わってない。きっと何かやるべきこと、あるんだと思う。だから、大丈夫」
と、言い切った。
「……相変わらず、バカップルだな」
そう呆れたように言って、花を添えるアザミはどこか寂しそうな目をしていた。
「……それより、アザミのほうが。大丈夫……?」
シズクの言葉に、
「大丈夫じゃねえよ」
と、アザミは返す。
「けど、泣きっぱなしだったからな。もう流れねえってだけだ。――――それに、せっかく赤木家の墓とは別のところも用意してあげられたのに、あたしがずっと泣いてちゃ、お姉ちゃんも安心して眠れねえだろ」
そうは言っても、思い出せば涙が流れそうになる。だから、アザミは涙が地面に落ちる前にそれを拭って立ち上がると、
「お姉ちゃんのような人間は、もう生まない。生ませない。そのために特魔も変えるし、禁書も全て封印する。それが、あたしの目指す道だ」
と、決心を口にした。
「だから、手伝えよな」
アザミはシズクにそう告げる。と、シズクは、
「うん」
と、それに力強く答えた。
風が、2人の髪を靡かせる。
その風は、2人の背中を力強く押してくれているようだった。
▼ ▼ ▼ ▼
日本よりも遠く遠く、波が岩にぶつかっては戻っていく暗闇の海を見つめながらカロは紫色に淡く輝く魔石を握っていた。
「――――ねえ、カロ。何見てるの?」
すると、そんなカロにアイポニーが話しかける。
現実か幻想か、それは少なくとも視覚的には実体を持ってそこに存在していた。
「別に。……温かいんだよ、これ」
カロがそう答えると、アイポニーは宙をゆらゆらと浮きながら、
「あー、夏なのに寒いもんねぇー……。ドイツの海って」
と、共感する。そこへ、今度は、
「なら、あたしがもっと温めてあげようか? そこらの街でも燃やしてさ」
と、後ろから寄りかかるように、緑髪の大人っぽい女がカロを抱きしめた。
「ちょっと! なら、サラよりアイの力でしょ!! サラなんて、魔力集めるしか脳がないんだから!」
「あら、色々とやりようはあるわよ♡ ね?」
サラ――――そう呼ばれた女が、カロの耳元で囁く。しかし、カロはそれを拒絶するように、ギュッと膝を抱えて自分を抱きしめると、
「大丈夫、大丈夫だ」
と、繰り返すばかりだった。
「――――加那太、行くぞ」
そこへ、父――――安久良の声が、届く。と、カロは腕の下から、クマのできた目元を覗かせて、
「ああ。父さん」
と、応えた。
「無理しなくても、いいぞ。お前は最後の時にいれば――――」
「――――大丈夫」
心配をする父にカロは一瞥もせず、そう告げる。すると、それを側から見ていた天日が、
「遅めの反抗期か?」
と、安久良を揶揄った。
「うるさい。……だがまあ、事情が事情なだけに家族らしいことはしてやれてなかったからな」
「なら、これからたくさんすればいいさ。時間はある」
「ああ」
そうして、カロ、天日、安久良の3人は船に乗り込む。
そして、海のど真ん中へ向かうと、3人はあるエリア一帯を警備する船の集団を見つけ、
「じゃ、取りに行きますか。――――最後の禁書」
という天日の言葉を合図に、夜の海よりも暗く深い魔力を宿し、それぞれの禁書を発動させた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
これにて第2章完結です!!
来週からは「クローシュ」という推理ものを、2~3週間(予定)連載し、年明け後ショートショートor短編の連載を挟んでから、第3章(おそらく最終章前編)へと取り掛かりたいと思います。
ですので、ブックマーク等をして待っていただけると嬉しいです!
また、来週からの「クローシュ:もチェックしていただけると嬉しいです!!
今回も、良いと思ってくださった方は【☆】や【ブックマーク】をポチッとしていただけると嬉しいです!




