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【4000PV 感謝】カロ - 黒魔術の子 と 人形少女 - 【第1章・第2章 完結済み/第3章 2月23日~(前倒しの可能性有り)】  作者: 誰時 じゃむ
2章 - 第10話 白のページ

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10-2 負けられない理由

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 枷をつけられ魔術の使えなくなった岩手は、確保される寸前で振り返ると、リボルバーを取り出す。――――そして、同じ箇所に正確に3発放つと、最後の弾丸が陽華の肩を撃ち抜いた。


「……ッ、ぁあッ、ぁああああああああああああああッ!!」


 いくら冷静で落ち着きのある陽華でも、声を出さずにはいられない。


 尋常じゃない痛みが、肩から全身に傾れ込む。血の流れさえ、神経を逆撫でているようだった。


「……《魔術:障壁(しょうへき)》、壊せないと思いました?」


「……っ! 魔石具に銃なんて……!?」


「いえ、魔石具なのは弾丸のほうです。――――とはいえ、魔石の弾は壊れやすく量産は出来ませんでしたし、さらに障壁を貫通させるには何発も撃ち込む必要があるんですがね。――――銃のほうは、既存のものを改造することでなんとか。良いでしょう? 世界に1丁だけです」


 岩手は、そう言って陽華の傷口を踏む。

 貫通していない弾丸が骨や神経を直接痛めつけているようで、それは拷問とさして変わらなかった。


「魔石の弾丸のために威力を抑え、ゆえに貫通せず、体の中に弾が残ってしまう。威力に耐久力、要改善ですね」


 地面には、ひび割れた魔石の弾丸が転がっている。3発正確な箇所に放ってようやく《魔術:障壁》を砕けるともあれば、使い勝手は悪いどころではないだろう。――――が、今はそんなことどうでもいい。


「隙とはね、こうであるという決めつけに生まれるんですよ」


 岩手はそう語りながら、


「《魔術:障壁》がある限り、どれだけ銃を撃とうと魔力を纏ってなきゃ弾丸は通らない。枷で魔術を封じたから心配ないってね」


 と、傍に落ちていた魔石の腕輪を拾い上げた。


「あーあ、金具が壊れちゃってる……」


 しかし、すぐに使えないと分かるや否や、簡単にそれを捨ててしまった。


「……さて、枷の鍵いただけますか?」


 岩手は、そう要求する。――――が、陽華は立ち上がると、脂汗を滲ませながら岩手を睨んだ。


「拒絶ですか、死に損ないが」


 その時、陽華の目がぬるりと横に動いた。――――そこに落ちていたのは、陽華が上着で隠し、囮にした拳銃だった。


 次の瞬間、2人はそれに向かって全力で走り出す。


(枷をつけられている今、拳銃を取られるとまずい……!!)


 岩手の方が、やや拳銃に近い位置にはいた。


 しかし、今、陽華は《魔術:強化》によって身体能力が岩手より高まっている。そう考えれば、これは全く有利とは言えなかった。


 タッチの差で、岩手が拳銃の元に到着する。――――しかし、それよりも早く拳銃の近くに一緒に落ちていた上着に、陽華が触れた。


 すると、上着は《魔術:浮遊》の力によって、岩手の足に向かって浮き上がる。そして、岩手の足に絡みつき、転ばせた。


 岩手がようやくそれを払った時――――目の前には拳銃を構える陽華がいた。


(死――――)


 しかし、それを直感しておきながら、岩手は退かなかった。――――むしろ、銃口に向かって左腕を伸ばした。


 パァンッ――――発砲音が辺りに響いて、それから静寂の中で薬莢の軽い金属音が踊る。


 しかし、その沈黙を破るように、遅れてゴトッと重たい音が響くと、


「……っ、がぁああああああッ! 畜生……! 痛てぇじゃねえか……!!」


 と、岩手が枷のついていた左腕を押さえながら、荒々しい声を上げた。


 左腕は、弾丸によって皮膚を荒々しく食い漁られていた。そして、滴る血の先――――地面に落ちていたのは枷だった。岩手は銃口にあえて枷を掲げることで、それを壊したのだった。


 陽華は銃を捨て、即座に空気の渦を構える。

 しかし、魔石の弾丸が入ったままの肩がズキリと痛むと、それは不安定になって、陽華と岩手の両方を吹き飛ばすように全方位に暴発した。


 2人とも、吹き飛ばされた勢いを上手く受け流して着地する。と、岩手は腕を押さえながら、


「代償は大きかった。……だが、これで魔術は復活だ」


 と、魔力を練り、周りにふわりとした風を起こした。


 それは、魔石から供給されたものではなく、この戦闘の中で初めて岩手自身の魔力を使った瞬間だった。


 そうして、岩手の傷は魔術によって、みるみるうちに癒え――――なかった。


「……チッ、やっぱダメか」


 腕の傷は、多少血の流れが緩やかになったが、それでもほとんど変わりはなかった。傷口だって、瘡蓋にすらなっていない。


「何か、事情があるのですか?」


 その様子を見て、陽華が問う。すると、岩手は青筋を浮かべながら、


「言うわけないでしょう」


 と、当然に答えた。


(……あの腕の出血量が緩やかになったのを見るに、多少の変化はあったはず。それでも足りないのは、胆汁に魔力量の問題なのか。――――それとも、魔術自体に何かがあるのか)


 陽華がそう考えた時、――――密かに岩手がジリッとつま先の向きを、魔石の腕輪が転がっている方へ変える。そして、右手に持ったままだったリボルバーを不意に放った。


 陽華は反射的に横に飛び退く。――――と、放たれた3発の魔石の弾丸は陽華に向かってバラバラに飛び、陽華に向かって真っすぐとんだ唯一の弾丸もその《魔術:障壁》にひびを入れることしかできなかった。――――さらに、岩手の持つリボルバーは弾切れになる。


 しかし、それこそが岩手の狙いだった。


「腕輪……!!」


 陽華の赤い瞳の中、岩手は魔石の腕輪を拾っていた。そして、それが光を放つ。


 次の瞬間、陽華はそれを撃ち抜くように空気のビームを放った。――――が、もう遅い。


 陽華のビームに撃ち抜かれて、完全に砕け、機能を失った腕輪が地面に落ちる。しかし、腕輪から溢れた魔力はすでに岩手の体の中に取り込まれており、腕の傷は塞がっていた。


「――――ふははははッ!! 戻ったッ!!」


 腕を見上げながら、岩手が叫ぶ。と、陽華は、


「……! “戻った“……!? 魔力を得て、“治った“ではなく“戻った“と……!?」


 その言葉に違和感を覚えた。


 すると、脳裏に記憶が呼び起こされる。それは、陽華がルイスたちに果樹園で襲われて逃げ延びた後で、子供姿の岩手に背中を刺された時のことだった。


 あの時、岩手は魔力を放出しながら大人の姿に戻っていた。――――だが、今なら分かる。あれは、進んでいたんだ。魔力を放出することで、進んでいた。


「そうか。あなたの生得魔術は――――“自分の時間を操る”こと。魔力を吸収すれば若返り、逆に放出すれば歳を取る。――――しかし、魔力は他者から無理やり奪えない。分け与えてもらうしか。だから、あなたは魔石の腕輪をつけていた。自らの意思で魔力供給を可能にする腕輪を。――――さっき傷が塞がらなかったのは、腕輪がなかったから。だから、魔力を放出することしかできず、やむ無く時を進めることにした。しかし、少し進んだ程度では、傷は塞がらなかった。だから、あなたは口にしたんです。――――『やっぱりダメだったか』と」


「……名探偵だな。だが、それがどうした」


 岩手はそう言うと、


「自分の姿を見てごらんなさい。どうやって勝とうと言うのです。今の状態から」


 と、陽華を指差した。


「見たところ、魔力はもう尽きかけている。枷は外れ、拳銃でだってボクのことは殺せなくなった。あなたを殺すのに、こんなものはもういらない」


 岩手は手に持っていたリボルバーを、後ろポケットにしまう。


「あなたたちの負けだ。あなたは死に、ボクは禁書で他の奴らもまとめて殺しに行く」


 陽華を確実に殺すために歩み寄る、岩手。その間、陽華はただただ項垂れていた。


「ほら、もう抵抗もできない。――――あなたにできることなど、何もない」


 岩手は、追い詰められた人間からどんな言葉が出てくるのかを期待する。


「――――本当に、そうでしょうか」


 しかし、次いで出てきたのは、命乞いでも助けを求める喚きでもなかった。


「あ?」


「まだ、ここにありますよ。――――最後の弾丸が」


 ぞくり――――陽華の光のない目が、岩手を捉える。と、次の瞬間、陽華の肩に入りっぱなしになっていた魔石の弾丸が螺旋状に回転しながら飛び出した。


 しかし、それは岩手の《魔術:障壁》を砕くも――――頬を掠めるだけで、命中することはなかった。


「は……。ははっ、はははははっ!!」


 岩手は、安堵するとともに笑い出す。


「残念だったなぁ!! 出し抜いた気になって、最後の一撃すらまともに当てられず、後悔の中で死んで行くんだよ、あんたはッ!!」


「違う……」


「違くない! 奥の手だったんだろう!? ずっと狙ってたんだろう!? なのに、外したんだ!! 絶好の機会を! 会心の一手を! もう、詰んでるんだよ!!」


 爛々と目を輝かせ、魔力を纏い、ぐっと手に力を込める、岩手。


 しかし、その直後――――背後で、パラパラと本のページが捲れる音がした。


 次の瞬間、振り返った岩手を――――黒い魔力が貫く。それは、禁書《妄信(アイポニー)》の霧だった。


「な、ぜ……」


 岩手は、崩れ落ちるように尻餅をつく。と、岩手はその目で禁書《妄信》が解放された理由を目にした。


「まさかさっきの弾丸で、壊したのか……? 柱の魔石を……」


 すると、陽華が落ち着いた様子で、


「空気の渦が当たって、既にヒビが入っていたんです。そこを、弾丸でさらに撃ち抜いた。1つ壊しただけで解放されるかは賭けでしたが――――禁書の名は、伊達じゃありませんね」


 と、説明した。


「そんな……。そんな、ことが……」


 今度は、陽華は立ち上がって岩手を見下す。禁書《盲信》の黒い魔力の霧に貫かれた岩手の腹は、どくどくと血を流していた。


「復讐心。……その行き着く先が、これで良かったんですか?」


「あ……?」


「今なら、まだ禁書《妄信》で治せます。そうすれば、手術で魔力を使えないよう制限する器官を埋め込んで、それで勤めを果たせば人間として生きていけるかもしれません」


 それは、陽華からの最期の譲歩だった。


「……なめるなよ」


 しかし、その提案を岩手はあっさりと、血と共に吐き捨てる。


「何を、そこまであなたたちが……」


 すると、岩手は、


「ボクたちには権利があるんだよ。――――この世界を壊す権利が」


 そう言って、ぽつりと語り出した。


 ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


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