8-end 約束の刻、重なる針
【お知らせ】(11/21)
今朝、更新した”8-7”を"8-6"に統合しました。内容自体は変わっていません。
もし見逃された方がいらっしゃいましたら、後半部分を読んでからこの話を読んでいただけると幸いです……!!
翌日。
庭には、再び4人の姿があった。
カロはまず、糸人形をいきなり出すのがコントロール不可の原因と仮定して、複数出した糸を操る訓練をすることにした。
1本の《魔蜘蛛の糸》を振るうと、その途中で3本に枝分かれするムチたち。
すると、ムチたちは強度はそこまでないものの、突っ立っていたシズク、アザミ、陽華をそれぞれ捕まえた。
そして、それは3人が動き回ってみても変わらなかった。ある一定の範囲内であれば、3人が飛ぼうが走ろうが捕まえることができた。
そうなると、やっぱり課題は――――糸人形自体である。
「《魔蜘蛛の糸》だと、視界に収まってれば感覚を送り込む感じでできるんですけど……」
「感覚を送り込むですか?」
「その、曲がれっていう意思を、《魔蜘蛛の糸》を通して各糸に送り込めるというか」
そこで、うんうんとカロたちが悩んでいると、アザミが、
「なら、こうやって戦ってほしいみたいに想像すりゃあいいんじゃねえの?」
と、提案した。
「想像?」
「元から2人前提の戦い方をするんだよ」
「ふむ……」
カロは少し逡巡し、それからものは試しということでとりあえずやってみることにした。
「あたしからは仕掛けないから」
アザミと対峙する、カロ。
(2人前提の戦い方……。それって、どうやって想像するんだ?)
すると、陽華が横から、
「1度、私と一緒に戦ってみましょうか。そのほうが想像が現実味を持つはず」
と、言った。
カロは誰かを想定した戦闘初めてだったし、武術の心得も全くなかったからついていけるか心配だった。――――が、結果は想定以上のものだった。
まず初めにカロは《魔蜘蛛の糸》を取り出し、アザミに向かって振った。
しかし、それをアザミは見慣れたように簡単にしゃがんで避ける。
すると、その隙に詰めていた陽華が、しゃがんだアザミの顔を蹴り上げようとした。それをアザミは横に飛んで避ける――――その時だった。
カロは、振り上げたムチを振り下ろすのを躊躇した。――――視界の中に陽華がいたからだった。万が一充てるわけにはいかなかった。
「当たったらどうしようと考えるんじゃない! 私を糸人形だと思いなさい! 人間じゃない! 人形と!!」
しかし、それ陽華は一喝する。と、カロは、
「――――ッ! 当たっても知りませんよ!!」
と、ワンテンポ遅れてムチを振るった。
結局、アザミはムチを躱し、陽華も躱すことができた。そして、そこで一度、戦闘が止まる。
「骨喰特等。私は人間ですが、糸人形は人間ではありません。これは、糸人形との共闘を前提とした訓練なんですから遠慮はしないでください」
陽華がカロにそう声をかける。と、カロは、
「……ん? そうか!」
と、何かに気がついたように言って、それから、
「あの! 陽華さん、ちょっと退いてください! 1人でやってみます!」
と、告げた。
何をするのかと思いながらも、陽華はアザミから離れてそれを見守る。
すると、カロは、
「――――《魔蜘蛛姫ノ手鏡》」
と、唱え、糸人形を呼び出した。
「あれは……」
しかし、それはいつもとは違い、カロの心臓と魔術の糸で繋がっていた。まるで、カロとシズクが持っていた繋がりのように。
カロがポーズを決めると、糸人形は鏡合わせのように動く。
そして、2人は同時に走り出すと、アザミに襲いかかった。
ドロップキックのようにカロが蹴りかかると、アザミは下がって避ける。と、そのカロを踏み台にして、もう1人のカロがアザミに殴りかかった。
アザミはその拳を顔だけで横に避けると、掌底で腹を突く。と、アザミの手のひらは、簡単にカロの腹を貫いた。それは糸人形だった。
「そりゃ、こんな動ける方が偽物だわな!」
すると、アザミは地面に寝そべていた――――おそらく本物であろうもう1人のカロに、
「《魔術:障壁》で受け止めろよッ!」
と言って、かかと落としをかました。
しかし――――そこにも、手応えはなかった。
「なっ、これも糸人ぎ――――」
そう言いかけた時、アザミの首にはムチがかかっていた。もちろん、カロの魔術が込められたものだ。
「どやっ!」
カロそう言ってから、アザミの首元からムチを外す。と、アザミが、
「なんで急に……、どうやったんだ?」
と、尋ねた。
「今まで、糸人形を俺は操作のきくロボットとか分身とか=人間みたいな感じで認識してたんだよ。だけど、結局は糸魔術だろ? だから、糸を操る感覚でやってみたんだ。なんか体の周りをムチが思い通りに動いて回ってる感じというか……」
すると、
「ついにマスターできましたね」
と、駆け寄ってくる陽華に、カロは、
「陽華さんの言葉のおかげですよ」
と、続けた。
「え?」
「さっき糸人形は人間じゃない、って言ってくれたじゃないですか。それで気づけたんです」
「それは、そういう意味で言ったんじゃ……」
「ま、結果、身につけられましたから。あとはシズクのおかげでもありますね」
「玉砂シズクの……?」
「ええ。魔力での繋がり方も変えました。心と心を《魔蜘蛛の糸》で繋ぐっていう。最も慣れ親しんだ形に」
そこで、遅れてきたシズクが、
「次は、《魔蜘蛛姫ノ綴織》」
と、口を挟む。すると、カロは、
「だな。……でも、そっちの方が簡単な気がするんだよな」
と、答える。
「いやいや。一応、糸魔術の頂点に位置するものの1つだぞ?」
アザミのツッコミに、カロは目を閉じ、それから、
「――――《魔蜘蛛姫ノ綴織》」
と口にした。
すると、カロの体を紫色の魔力が包む。
そして、続けて、その巡りを陽華がじっと見定めると、診断結果は、
「……確かに、完成度は低いですが、体中に《魔蜘蛛の糸》が張り巡らされていますね」
と、微弱ながら、そのスタートラインにいとも簡単に立ってしまった。
カロ曰く、魔力の循環が自分の中で完全に行われるようになったことによって感覚が掴めたとのことだった。
「……コツを掴む方法としては、完全に邪道だな。まず、何年も外部に魔力供給し続けるやつ安定ねえし」
アザミが愚痴るようにそう言うと、
「でも、それもこいつのおかげだ」
と、返して、カロがシズクの肩に腕を乗せた。
その最後には、陽華がその状況を、
「ともかく、これで下地は整いました。後の数日は、全てのクオリティを上げることに専念しましょう」
と、まとめ上げ、それぞれは座禅を組んだり組み手をしたりと過ごすことで決戦の日に備えることになったのだった。
▼ ▼ ▼ ▼
「――――よっしゃ、行くか」
カロがそう宣言すると、一行は山奥を出て、旧特魔があった跡地へと向かう。
そこは、カロとシズクが崩れた足元に巻き込まれて地下に落ち、岩手にスパイの話を持ちかけられたところでもあった。
車から降りると、入り口ではリトリーが待ち構えていた。
そして、
「こちらです」
と、案内された先――――階段を降りたところでは、レン、ルイス、そして岩手が、
「ようこそ」
と、カロ一行を待ち構えていた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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