表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

92/93

英雄最後の戦い

長年の戦いの果てに得た、穏やかな日々。

だがそれは、確実に彼の命を削っていた。


雷火解放。

その技は、魔術と肉体の限界を超えて放たれる、“電撃と熱の奔流”による一撃。


全身の神経を焼き、脳を過負荷に晒し、骨を軋ませ、関節を削り、

筋肉は瞬間的に収縮・断裂を繰り返し――


雷火解放を繰り返した健二の身体は、もはや「生きて動いている」のが奇跡のようなものだった。


王都の医師たちは診察の後、誰もが沈黙し、頭を垂れた。

リーファでさえ、何も言えなかった。


「……余命、二年もないでしょう。酷使すれば、半年」


医師の声は震えていた。

だが健二は、苦笑するだけだった。


「――そうか。やっぱりな」


その夜、彼はひとり城の高台に立った。

街の灯が遠くまで続き、子供たちの笑い声が微かに届く。


(これが……俺の命で得た国か)


そして思った。


(なら――もう少し、やるべきことがある)



---


静かな宣言


翌日。

健二は親しい者たちを集め、簡単な酒宴を開いた。


ライナスとドゥーガン、リーファ、ランドルフ、そして長子から末子まで。

互いに笑い合い、過去を語り、未来を語った。


だが最後、健二は杯を置き、全員に向かって言った。


「……この国には、まだ“膿”がある。放っておけば腐る」


「力を持った者が慢心し、特権階級のように振る舞う者が増えた。

一部の役人は民を見下し、貴族出の若者の中には農民に暴力を振るう奴もいると聞く」


「……だから、掃除をしようと思う。俺がまだ動けるうちに、全部だ」


一同は沈黙した。


だがライナスは、杯を掲げた。


「――やれ。お前が動くなら、俺も動く。弟子として当然だ」


ドゥーガンは重々しく頷き、

リーファは何も言わず、ただ涙をこぼした。


ランドルフ侯爵はしばし沈黙し、そして静かに言った。


「“膿”を出すというのは、内側に敵を作るということだ。

それでもやるのなら、我らは剣となろう。お前の名誉が汚れぬように」


健二は頷き、立ち上がった。


「これは戦争じゃない。だが、命を懸ける覚悟は必要だ。

――この国を、“真に正しき国”にするために」



---


こうして、健二の**最後の戦い――「内部浄化作戦」**が始まろうとしていた。

それは、敵国との戦争以上に困難で、痛みを伴うものだった。


彼はもはや、自らの死を恐れていなかった。

むしろ、それが来る前にやり遂げねばならない使命こそが、今の彼を動かしていた。


この先に何が待つのか。

それは未だ、誰にもわからなかった。


だが確かなのは――


雷火の英雄は、最後まで「正しさ」と「強さ」に殉じる覚悟を持っていたということだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ