いざ開戦
薄曇りの空に、風がざわついた。
雷火国の陣――静かなる熱気が充満していた。
前夜の奇襲で王国軍は前線を下げ、今まさに崩れかけている。
機を逃さぬため、健二は決断した。
「出撃する。……今度はこちらが押し返す番だ」
広場に集ったのは、精鋭中の精鋭。
飛竜大隊、魔術大隊、雷火兵団の正規部隊、灰刃隊、吸血鬼部隊、猫族部隊、そして剣術師範ライナス子爵を中心とする前衛戦力。
剣を手にした兵たちは、全員が凛としていた。
だが、城にはまだ、多くの者が残っていた。
学生、農民、職人、漁師、教師――いわゆる「非戦闘員」たち。
彼らに、健二は静かに語りかけた。
「俺たちは前へ出る。だが、城を守るのは、お前たちだ」
沈黙が落ちた。だが、その言葉の意味はすぐに理解された。
城の守りは、戦場の背中を預けるに等しい大任。
リーファやギルも言葉を添える。
「この国の柱は皆だよ。兵だけじゃない」
「台所を守る者がいるからこそ、剣は振るえる」
そして、指揮はランドルフ・ハワード侯爵が担うこととなった。
「城内警備は、私が預かる。信頼しているぞ、君たち」
その声に、青年の農民がふと呟く。
「……ならば、恥ずかしい真似はできねえな」
静かに笑みが広がる。
誰一人、逃げる者はいなかった。
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そして午前――
雷火城の城門が重々しく開かれた。
まず飛び立つは、飛竜大隊。
健二とリーファ、そして魔術大隊が続き、
空から火と雷の雨をもって、敵軍を更なる混乱に陥れる。
その隙に、灰刃隊と猫族部隊が再度潜入の準備を整え、
地上からは剣士たちが次々と進軍。
その中心には、ライナス子爵の姿。
無言で剣を携え、その背中が兵たちを牽引していた。
「敵陣を蹴散らすぞ。後悔させてやれ、雷火の怒りを」
遠く、王国軍の陣には焦燥の色が浮かび始めていた。
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こうして雷火国は、攻勢へと舵を切る。
背を預けた者たちの信頼を力に、
健二は再び空を駆ける。
その手に、雷火の光を纏わせながら――。
雷火、轟く――開戦本番
戦場は黒雲に覆われ、まるで天もこの一戦を見下ろしているかのようだった。
雷火国軍一万五千。
対する王国軍は五万――だが、数だけが戦ではない。
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■ 空を裂く先陣:飛竜大隊
号令と同時に、飛竜大隊が空を裂く。
「行けッ!! 落とせ!!」
健二の叫びと共に、魔法の嵐が降り注ぐ。
火球、雷撃、氷槍――複数属性の攻撃が王国軍の前衛を焼き尽くす。
リーファも後方より援護魔法を連発し、空中からの支援を続ける。
空中を自在に滑空する飛竜たちは、囮と攻撃を同時にこなす精鋭ぞろい。
彼らの奇襲と継続攻撃で、王国軍の布陣は崩れ始めた。
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■ 夜の牙:吸血鬼部隊と猫族部隊
日が傾くと共に、吸血鬼部隊が動き出す。
漆黒の外套を翻し、夜陰に紛れて敵陣へ潜入。
音もなく忍び寄り、指揮系統を狙い撃ち。
王国軍の伝令所、後方の補給陣地をことごとく破壊していく。
そして、猫族の亜人部隊――。
彼らは驚異的な俊敏さで、敵の将官クラスを狙う特化型部隊。
「見えた……首、いただくよ」
軽やかな足取り、無音の殺気。
指揮官を斬られた部隊は、音を立てて崩壊していった。
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■ 無音の刃:灰刃隊
灰刃隊――雷火国の秘密部隊。
偵察、破壊、撹乱を一手に担う影の部隊。
健二の開戦魔法に続き、敵の武器庫や食糧庫をすでに破壊していた彼らは、
今や敵陣内部で混乱を拡大させる役割を担っていた。
火を放ち、毒を撒き、偽情報を流す。
「敵は五万」――だが、灰刃隊がすでにその半分を機能不全にしていた。
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■ 地を駆ける猛将:ライナス子爵
そして、雷火国軍本体を率いるのは――ライナス・グレイ子爵。
重厚な鎧を纏い、二振りの長剣を携えたその姿は、まさに地上の王の如し。
一騎で敵の小隊を薙ぎ払い、兵たちの士気を高めていく。
「――恐れるな。我らが教えた強さ、今こそ示せ!」
かつての教え子たち、農民や若い兵たちまでもが
「ライナス先生の前では退けない」と進軍し続けた。
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■ 魔術大隊の砲台化
後方では魔術大隊が列を成し、火砲のように連携魔法を放ち続ける。
雷と炎が交差し、大地を穿ち、王国軍の重装兵を無力化していく。
リーファが中心となって座標指定と魔力の再分配を行い、
戦術級の魔法を連続して運用可能な状態にまで高めていた。
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■ 健二、再び吼える
そして再度、空から健二の声が響く。
「雷火の矢――全弾、斉射!!!」
雷の槍が百を超えて一斉に撃ち込まれ、
敵軍中央陣形が完全に瓦解する。
「……ここまで来たら、後は斬るだけだ」
彼は飛竜から飛び降り、剣を構える。
地面に降り立ったその瞬間――まるで地が震えたかのようだった。
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■ 戦局傾く
この時点で、王国軍は完全に混乱。
全体の3割が壊走。指揮系統は崩壊し、後方の補給線は断たれた。
雷火国軍は未だ損害小。
雷火国式の「教養ある武力」が、ここに真価を示しつつあった。




