無給の王
リーファとエルデリオンの和解・共闘が成り、
国土も拡大した雷火国は、いよいよ軍制度の確立と軍政改革へと乗り出した。
健二はこの国に集ったあらゆる種族と戦士たちに対し、堂々と告げた。
> 健二:「これより雷火国軍の制度と報酬を明らかにする。
ここは“強く正しく働いた者が報われる国”だ。階級も、貢献も、すべてを明文化する」
演武場に張り出された布告には、こう記されていた。
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【雷火国軍 給与制度(抜粋)】
将軍級(戦団指揮官):月給 金貨40枚
副将級(大隊長・軍参謀):月給 金貨30枚
百人隊長(中隊長):月給 金貨15枚
十人隊長(小隊長):月給 金貨10枚
一般戦士:月給 銀貨60枚(約金貨6枚相当)
さらに以下の制度が加えられた:
師範職(剣術・魔術教官):基本給+35%
夜間哨戒・隠密任務従事者:危険手当+20%
有給休暇制度:年に10日、負傷者・家族死亡時は別途特別休暇
功績査定制度:討伐数、統率、民間支援などでボーナスあり
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将兵たちは歓喜した。
魔族の若者は叫ぶ。「こんな制度、見たことない!」
獣人の傭兵は尻尾を振って喜び、人間の元農兵までも涙を浮かべていた。
> リーファ:「皆が報われる国。それがあの人の、健二の望み……!」
だが――翌朝。
ランドルフ・ハワード侯爵が、顔面を引きつらせて執務室に怒鳴り込んできた。
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【現実の壁:ランドルフの叱責】
> ランドルフ:「――貴様、正気か!? 貨幣の価値も安定せぬこの国で、王国以上の給与など払えるかッ!」
> 健二:「理想を語るだけでは民はついてこない。報いがなければ志も折れる」
> ランドルフ:「貴様の志は立派だ。だがな、“金の出所”がなければ机上の空論だ!
各地の耕作地はまだ復興途中、商業は王国の圧力で滞っている。主要産業もない!何を担保にこの金を払うつもりだ!」
> 健二:「……俺の命と覚悟だよ。金が尽きるまで、しばらく無給でいい。将も兵も食わせる」
一瞬、部屋が静まり返った。
ランドルフは額に手を当て、大きく息をついた。
> ランドルフ:「まったく……貴様という男は……。やってみろ。だが“借金”は残るぞ、雷火の若き王よ」
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【無給の王、民の心を掴む】
その日から、健二は本当に無給で働いた。
王の衣も、鎧も、食も、兵と同じものを使い、寝床も地べた同然。
それでも彼は笑い、働いた。誰より早く起き、誰より遅く眠った。
この姿が、さらなる忠誠を生んだ。
獣人の戦士は言う。「王は我らの群れの長。命を賭けられる」
魔族の兵は言う。「これぞ“真の力”だ。力と信義の王」
人間の民は言う。「この国には夢がある。戦ってでも守る価値がある」
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雷火国は、確かに王国より貧しい。
だが、王国よりも誇りと絆に満ちた国として歩み出していた。




