力こそ王の器
雷火国の旗のもと、領地を広げた健二の前に次々と現れるのは、
旧来の支配体制に懐疑を抱きつつも、「服従」ではなく「信頼」を望む者たちだった。
だが彼らが健二を見る目は甘くはない。
口先だけでは誰も従わぬ。力なき王には、何も与えられぬ――
その証として、彼らは決闘を申し込んできた。
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■【第一の決闘】獣人部族の戦士長・ガロム(熊人族)
雷火国の南東、モルトの森に根を下ろす熊人の戦士部族。
その族長ガロムは、巨岩を素手で砕くと噂される猛者であった。
彼は健二に向かい、唸るような声で言い放つ。
> 「お前が“力の王”を名乗るなら、我が腕をねじ伏せてみろ。
それができれば、我ら五百の戦士を預けよう」
決闘は素手。健二は甲冑も纏わずに挑み、幾度も叩き伏せられながら、
逆転の関節技で巨体を封じ、右腕を極めて勝利をもぎ取った。
ガロムは吠えるように笑い、血の滲む腕を掲げた。
> 「この腕で戦える限り、俺はお前の兵だ!」
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■【第二の決闘】魔族の女傑・ヴァイネラ(血の貴族)
西方の廃都に拠を構える、純血の吸血鬼族の長。
黒衣のドレスを纏い、鋭い赤瞳で健二を見下ろす。
> 「人間風情が“魔族の王”を名乗るとは愚か。
血に裏打ちされた誇り、それをあなたは理解できるかしら?」
決闘の形式は剣。だがヴァイネラは血を刃とし、影を使う魔法剣士。
健二は雷火解放を制御しつつ、木剣一本で彼女の剣戟に応じ、
あえて致命を避けて**「一太刀だけを通す」**戦い方で勝利した。
> 「……力だけではないのね。
ならばこの血を、あなたの野望に注ぎましょう」
彼女の従者二百名もまた、影の兵として雷火国に加わった。
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■【第三の決闘】王国北辺の旧騎士領主・ベリク卿(人間)
次に現れたのは、王国時代には“鉄槍の騎士”と呼ばれた老将・ベリク。
> 「わしは王に忠を尽くしてきた。だが、その王はもういない。
お前が“正しい力”を持つならば――試させてもらう」
形式は馬上槍試合。老騎士の操る戦馬と技はまさに騎士道の粋。
健二は一撃で槍を折られるも、受け止めた勢いのまま反転し、
跳び上がってベリクの兜を叩き落とすという妙技で勝利。
老騎士は地に伏し、仰いで微笑んだ。
> 「なるほど、これが新しい時代の王か……。ならば老骨も捧げよう」
ベリク卿の名のもと、王国北辺の元騎士たちが雷火国に合流した。
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■【第四の決闘】風の民・セレナ(鷲人族の少女)
風高き山岳に住む翼ある亜人族。
その族長の娘セレナは若干十四歳だが、空中戦では誰にも引けを取らぬ。
> 「飛べない王に、風の自由はわからない。
空の戦場を知りたくば、あたしと飛んでみせて!」
決闘は崖からの空中槍戦。セレナは滑空しながら槍を突き、健二を翻弄する。
だが健二は自ら谷へと飛び降り、崖壁を蹴って宙返り、
彼女の翼を読んで一瞬のタイミングで飛び移り、肩を制して地に落とした。
> 「飛べなくても、空を見上げる覚悟はある。
その覚悟で、お前たちと生きたいんだ」
セレナはしばし黙し――やがて泣き笑いした。
> 「あんた、カッコよすぎでしょ……雷の王様!」
鷲人族の空中偵察部隊三百名が、雷火の軍旗のもとに加わった。
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【新たなる王の影】
こうして健二は、ただの征服者ではなく
**「戦って認めさせ、共に歩む王」**として広く名を知られることになる。
血を求めず、恐怖で支配せず、
しかし剣を抜けば誰よりも強く、誰よりも正面から向き合う――
魔族も、獣人も、騎士も、少女も。
誰もが彼の背に、自らの誇りと未来を託した。
雷火国の勢いが各地に広がる中、健二の傍らに立つべき「右腕」を巡り、
二人の英雄が静かに火花を散らしていた。
一人は、雷火国の象徴たる少女剣士――リーファ。
そしてもう一人は、剣聖の家にして百戦錬磨の軍指揮官――エルデリオン。
互いに譲れぬ想いがあった。
健二への信頼、忠義、そして自らの剣の誇り――
ついに、二人は雷火城の演武場にて相まみえる。
> リーファ:「私は剣で国を支えてきた。誰よりも近く、誰よりも血を流して――」
エルデリオン:「私もだ。だが戦場とは剣の技量だけではない。私は軍を動かし、民を守った」
リーファ:「なら剣で決めよう。どちらが“あの人の刃”に相応しいか!」
観衆が静まり返る中、健二は一歩前に出て言う。
> 健二:「……勝った方を“右腕”とは決めない。ただ、この国の未来に必要な剣を、俺が見極めたい」
リーファの構えは低く、鋭い――まるで獣のような直線の殺気。
エルデリオンは柔らかく、品格すら感じさせる古式の構え。
試合開始。
リーファが一閃。軽やかに踏み込み、足下から斬り上げる。
エルデリオンは一度退き、懐へ誘うように刃を受け止めた。
剣と剣が交わるたび、火花が走る。
リーファの剣は怒涛、まさに攻めに特化した嵐。
対するエルデリオンは受けと転じる「読み」の技術に長け、
幾度もリーファの刃を無力化してみせる。
だが、次第にエルデリオンの眉間に汗が滲み始めた。
リーファの剣は「殺し合いの剣」。
何百もの死線で磨かれた生き残るための本能の剣。
それは時に理を超え、理想を裂く。
> エルデリオン(心中):「これは……ただの才気ではない。“戦場の獣”だ」
その瞬間、リーファが重心を落とし、剣を水平に構えた。
“斬る”ためではない、“通す”ための姿勢。
エルデリオンは応じた。全てをかけた、一撃の打ち合い。
――衝撃。沈黙。
二人が交差した後、観客が息を呑む中、
リーファは振り向かずに言った。
> リーファ:「……私の勝ち。……でも」
健二:「ああ。分かってる。勝っただけじゃ、“右腕”にはなれない」
リーファが剣を収め、エルデリオンに手を差し出す。
> リーファ:「あなたの指揮も、剣も、認める。だから――並んで戦おう。健二を、国を守るために」
エルデリオンは一瞬驚いた表情を見せ――そして笑った。
> エルデリオン:「……なんと、雷火には猛き剣と優しき心がある。ならば、剣士としてこの国に尽くそう」
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【その後】
健二は二人に言う。
> 健二:「リーファは雷火の“鋭き刃”。エルデリオンは“剣を持つ盾”。
お前たちが並び立ってくれたら、俺はどこまでも進める」
雷火国には、誇り高き剣士たちが共に在る。
それはただの王と家臣ではなく、信頼と覚悟の絆である。




