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ヴォルネス将軍撃破

王国南部、かつて肥沃な畑が広がっていた平原地帯は、今や焦土と化していた。

そこに陣取るのは王国の精鋭――ヴォルネス将軍率いる西王都軍主力部隊、三万。

雷火国軍は対する形で、広域に散開しながらも、その核心を慎重に削ろうとしていた。


■分断と錯乱 ― 灰刃隊の再出撃


エルデリオンの灰刃隊が、再び動き出す。

今回は武器庫ではなく、補給線そのものを切断する作戦だった。


> 「将軍の首を獲る前に、まずは兵の腹を飢えさせる」




闇の中、補給隊の隊列に交じるように潜り込み、焚き火の光を頼りに糧秣車を燃やす。

あるいは騎馬で突入し、補給路に落石や罠を設置していく。


> 「敵は堅牢だが、兵は人間。胃袋も、睡眠も必要だ」




そう呟くエルデリオンは、夜毎に王国軍を疲弊させ、次第に包囲網を絞っていった。



---


■ミノタウロスの陽動戦


健二の指示を受けたミノタウロス部隊は、王国軍の東端を何度も襲撃し、注意を引きつけていた。

ゴル=マド率いる彼らは、打って出ては一撃を与え、即座に森へ引き返す。


> 「殴って逃げろ、また来るぞってなァ!」




これにより、ヴォルネス将軍は東に部隊を割かざるを得なくなり、本隊の圧力は相対的に低下していく。



---


■雷火陣営の作戦会議と「対立」


その夜。雷火本営の会議室では、地図を囲んだ緊張感の中で健二が口を開いた。


> 「今夜の陽動で、奴らの後背を削りきる。そろそろ将軍本人を狙うべきだ」




ランドルフ侯爵は静かに頷いたが、リーファは反対の声を上げた。


> 「待って。今のあなたは、傷を押して戦っている。無理に前に出れば――」




健二は静かに、だが鋭く言った。


> 「俺たちは軍だ。俺が矛にならなきゃ、誰が行くんだ」




リーファは視線を逸らし、拳を握りしめる。


> 「……いつも一人で決める。仲間なのに」




その言葉に一瞬、空気が凍った。

だが健二は、背を向けるように地図を睨みつけ、低く言い放った。


> 「仲間を死なせないために、俺が行く。……それだけだ」




リーファは何か言いかけたが、そのまま会議室を出ていった。



---


■動き出す“雷火の矛”


翌日未明。

灰刃隊によって敵の補給路が断たれ、ミノタウロス部隊の陽動が功を奏し、

王国軍の戦線にほころびが見え始める。


健二はその隙を見逃さず、ついに号令を下した。


> 「全軍、第二段階へ移行。ヴォルネス将軍のいる中枢を――削り落とす」




次の戦は、“将軍ヴォルネス”その人との直接対決への道を切り開く布石となる。

だがその一方で、健二とリーファの間には、不穏な影がじわじわと差し始めていた。



雷火本陣の中庭に、朝霧がかかっていた。

その中で、静かに二人の姿が向かい合う。――健二とリーファだ。


リーファの声は穏やかだったが、強い意志を帯びていた。


> 「一度、私と戦って。木剣で。……納得させたい」




周囲で見ていた兵士たちはざわめいた。

将が挑まれる――それも、かつて決勝で打ち倒した少女に。


誰かが冗談のように言った。


> 「この試合、勝ったほうがヴォルネス将軍を討つってのはどうだ?」




笑い混じりの声だったが、すぐに誰も笑えなくなった。

リーファが本気だったからだ。



---


■【試合開始】


音もなく霧を割り、二人の木剣が交わる。


健二が雷火解放を抑えたまま、鋭く突きを放つ。

だが、リーファの剣は風そのものだった。わずかな風圧を剣先に纏わせ、受け流し、切り返す。


数合。健二の胴に、肩に、脚に――軽やかに打ち込まれる木剣。

痛みよりも、「追いつけぬ」という感覚が、健二の奥底に響いた。


> 「……速い……!」




最後の一撃は、空中から振り下ろされた。

風刃を纏った剣が、雷火の残滓を吹き飛ばし、健二の木剣ごと叩き落とした。


沈黙。


やがて、見ていた将兵たちから歓声が湧いた。


> 「リーファ様だ!」 「風神の剣が将を超えた!」




健二は剣を拾わず、笑った。


> 「お前が行け。ヴォルネスを斬れ」





---


■【雷火国軍、本隊突入】


その日の午後。雷火団の先鋒は再編され、リーファを筆頭に突撃部隊が組まれた。


風刃部隊、亜人の遊撃隊、そして吸血鬼の夜襲部隊。

リーファはその全てを統括する司令官として、雷火の矛の先端に立った。


> 「目標はヴォルネス本陣。中間陣を突き崩して、一気に斬り込む!」




旗が振られ、号砲が鳴る。

リーファの風を纏った剣が、開戦の狼煙を切り裂いた。



---


■【中陣突破】


王国軍の中間陣は、盾兵と槍兵を中心とした堅陣だった。

だが、風と速度を生かしたリーファの戦法は、それを無力化した。


> 「風よ、刃となれ!」




風刃が盾ごと兵を弾き飛ばす。

その背後から亜人部隊が突撃し、吸血鬼が日陰から現れ背後を裂く。


わずか二刻。中間陣は瓦解した。

リーファは剣を収めぬまま叫んだ。


> 「行くぞ! ヴォルネス将軍の陣へ!」




その声に、兵たちは応えた。

雷火の名を冠する軍が、その名に恥じぬ嵐となって進軍を始める。


夕陽が赤く染め上げた戦場に、ひとつの円が開かれていた。

それは兵たちが自然に作った戦の舞台。剣士二人の名に敬意を表し、誰もがそこに踏み入ろうとしなかった。


向かい合うのは――風の剣士リーファ。

そして王国軍の重鎮、ヴォルネス将軍。


白銀の鎧に身を包んだ老将は、静かにリーファを見据え、口を開く。


> 「子ども……と思っていたが、風格は将のそれだな。見事だ」




リーファはただ、無言で構えを取る。風が、彼女の背に寄り添っていた。


ヴォルネスは深く頷き、剣を抜いた。重々しい斬撃に特化した、重剣。

一歩ごとに地を踏み締める。正統にして堂々たる剣士の歩み。


> 「ならば問う――この国を捨て、貴様らの理を選ぶ理由は?」




リーファの声は澄んでいた。


> 「……強くて、正しい者が報われる国。それを作る。私は、それを信じる者の剣だ」




「ならば来い」



---


■【剣戟、風雷の如し】


開戦の号令はなかった。

風が揺れた瞬間、リーファが消えた。


まるで風そのもの。

地を蹴った音さえなく、リーファはヴォルネスの間合いに入り――鋭く突き出す。


しかし老将も伊達ではない。

反射的に重剣を振り下ろし、リーファの刃を逸らす。


ギィィィィィイン!!


金属音が耳を裂いた。

リーファはバックステップで一度距離を取り、風を纏わせる。


> 「風刃――双破!」




風が二重に巻き起こり、目にも止まらぬ斬撃が奔る。

ヴォルネスは地を蹴り、重剣を盾のように構えて凌ぐ。


が、衝撃の余波でその場から数歩よろめいた。


> 「この歳で、これほどの圧に晒されるとは……!」




なおも畳みかけるように、リーファが跳ぶ。

斬撃と魔術を交えた猛攻。風刃・斜旋、風脚・真空脚、そして魔術を用いた高速移動。


ヴォルネスは懸命に応戦するも――次第に防戦一方となる。


老将の息が荒くなったその時、リーファが最後の一手を放つ。


> 「終わりです、将軍」




剣を逆手に持ち、彼女は空中から落下するように突撃した。

風雷一閃――風と剣気を一つにした渾身の突き。


ヴォルネスはそれを迎え撃たんとしたが、すでに剣を支える力すら尽きていた。



---


■【静寂、そして終焉】


一拍。


リーファの剣が、老将の胸元を正確に貫いた。


ヴォルネスは、わずかに目を見開き――そして、笑った。


> 「……これなら……捧げてもいい……この命……この国を……」




そのまま、力尽きた。


リーファは剣を引き抜き、静かに膝をつく。

敵将に対する礼だった。


それを見た王国軍の兵士たちが、剣を地面に突き立て、次々に膝をついた。


――勝敗は、明らかだった。


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