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雷火国建国

それは雷火団が中拠点を制圧して一週間後の夜だった。

王都の貴族街、ランドルフ侯爵の屋敷の奥深く。

侯爵は静かに文書を整理していた。


彼の頭上、天井の梁から黒衣の影が音もなく降りる。

刹那、仄かな風が走り――


「……そこまでだ」


声と共に、月光のような銀の刃が空を裂いた。

吸血鬼〈セレネ〉が一閃。影の首元に刃を当てた。


が、その影は爆ぜた。

――分身。


即座に屋敷が包囲され、炎矢が飛び交う。

敵は神の騎士団残党、そして王宮直属の〈黒衣の連隊〉。

潜伏していた密偵の報せが功を奏し、侯爵の命は守られたが、屋敷は火に包まれた。


猫獣人の〈ラヴィ〉が侯爵を背に担ぎ、裏路地へ駆け出す。

後を追う追手に対し、セレネが夜の帳に紛れて足止めした。


> 「……貴様らにこの男は渡さん。雷火の理を導く者だ」




追撃を振り切った彼らは、ランドルフの身を雷火団の中間拠点へと移送する。

侯爵は血を吐きながらも、呟いた。


> 「……私は、あの男の夢を見たいのだ。

正義の強者が治める国を、民が誇れる国を……この目で」




その十日後。

ラグナ城――いや、今は〈雷火城〉と呼ばれるその地に、各地から多種多様な者が集まった。


獣人の氏族長たち


魔族の子爵ファルザスとその家臣


王国を脱し合流した元騎士団の一部


辺境から駆けつけた村長たち


そして、志を同じくする民、千を超える雷火団兵



壇上に健二、リーファ、そして傷を癒したランドルフ侯爵が並び立つ。

セレネとラヴィは控えの間にて警戒を怠らぬ。


場内は静まり返り、旗が揺れる。

その中央で、健二が前へ出る。


彼は、真新しい制服に袖を通していない。

血と汗の染みついた、かつての黒装束。

背には雷と炎の紋章を掲げる。


健二は深く息を吸い、言葉を放った。



---


> 「……我らは今日、この地に新たなる旗を掲げる」




> 「雷火国。

それは“正しくあろうとする者”のための国だ。

神でも王でもない、“志”こそが我らの頂だ」




> 「出自も種も、過去も問わぬ。

強く、正しく生きることを望む者だけが、この地に立てる」




> 「裏切り者は容赦なく斬る。

だが、手を伸ばす者には道を示す。

この国は、希望であると同時に、牙である」




> 「我らはもう、ただの反乱者ではない。

我らは――国だ。

雷火の名のもとに、我らが理を貫こう!」





---


会場は沸き、剣を掲げる者、涙を流す者が入り混じる。

その熱気の中、ランドルフ侯爵が一歩前に出て続けた。


> 「この国を運営する者たちへ告ぐ。

私はこの国の政を預かる。だが独裁はせぬ。

知恵と秩序、そして人の声が正しく通る仕組みを作る。

雷火の志は、力だけでなく理もまた伴うものとする」





---


こうして雷火国は正式に建国された。


新政府の骨格


元首:雷火王(健二)


宰相:ランドルフ・ハワード侯爵


守護大将:リーファ(軍総司令官兼任)


参謀長:ファルザス子爵


法務局:セレネ、ラヴィら暗部が所属


庶民院:各地の代表で構成される議会的機能(ランドルフ案)




---


雷火国の国旗が翻る中、

民は確かに「何かが変わり始めた」ことを肌で感じていた。


だが、その変革の灯火に気づいた王国は、

いよいよ全面戦争を視野に入れ、王都の兵を動かし始める――。

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