まずは訓練
傭兵団結成から数日。
健二たちは即座に、兵たちの鍛錬に着手した。
雷火を操る剣士・健二は、自らの魔力操作と応用魔術の技術を中心に教えた。
彼が示すのは、一撃必殺の破壊魔法ではない。
身体強化、間合いの制御、攻撃の連携、戦場で生き残るための“使える魔法”である。
「魔法は“勝つための手段”であって、“見せ物”じゃねぇ。
当てろ、仕留めろ、死ぬな。それだけでいい」
そう口にした彼の指導は、常に実践を意識していた。
模擬戦で撃たれた者は容赦なく地面に叩き伏せられ、
生き残る術を、皮膚と骨に刻み込まれるように学んだ。
一方でリーファは、剣術と戦闘技術の教導を任された。
彼女の動きは流麗で、無駄がなく、ただ美しかった。
だがそれは“芸”ではない。殺意と理性を兼ね備えた“実戦剣”である。
「力はいらない。技と意志で殺せる。
あなたが殺されそうになったら、“迷い”のない剣を振るうのよ」
そう語るリーファの周囲には、彼女を慕う若者や女性兵も多く集まり、
“無駄に傷つかない技術”を求めて彼女の教えを請う者は日々増えていった。
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【ファルザス家の協力】
また、魔族領の主・ファルザス子爵はこの鍛錬を全力で支援した。
彼自身も魔族特有の重魔術に通じており、
その家臣たち――長命の魔術師や獣化能力を持つ戦士らが、
傭兵たちの多様な資質に応じた訓練を施してくれた。
特に、魔族の侍――“セジロウ”と呼ばれる男は、
重厚な鎧を身にまとい、冷静に剣を振るうその姿で、多くの兵士たちの尊敬を集めていた。
「我らが手を貸すのは貴様の理想に価値があるからだ、雷火の健二。
腐った王国に対抗するには、“命を繋ぐ力”を育てねばなるまい」
そう語るファルザス子爵のまなざしは、もはや一介の傍観者ではなかった。
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【一ヶ月後――模擬戦闘】
そして、訓練開始からちょうど一ヶ月後。
健二たちは、大規模な模擬戦闘を実施することを決定する。
参加兵力、計800名。
本隊、遊撃隊、魔術支援班、斥候部隊などに分かれた実践さながらの布陣が敷かれた。
健二は青の外套をまとい、指揮本部に立つ。
リーファは赤の帯を締め、遊撃隊の先頭に立って出陣する。
「本気でやれ。
この訓練で死人が出るなら、戦場では百人死ぬ。
そうならねぇための模擬戦だ」
開始の角笛が鳴り響いた。
雷の如き突撃、霧のような隠密、空からの魔法砲撃――
模擬戦とは思えぬ凄まじい戦術が交差し、草原はまるで実戦のような熱気に包まれた。
リーファは自軍を率いて敵の魔術支援班を奇襲、健二は中盤に雷火で敵前線を貫き、勝敗は刻一刻と動いていった。
戦の終盤、健二は木剣一本で三人の獣人隊長を倒し、勝敗は明らかとなる。
模擬戦は健二軍の勝利で終わった。
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【試練を越えた者たち】
夕暮れ、集められた兵たちの顔には、疲労と誇りがあった。
「――いい顔だな、みんな」
健二が小さく呟いた声に、
リーファは隣で静かに頷いた。
彼らはもう、単なる寄せ集めではなかった。
戦える軍として、ひとつの力となりつつあった。




