雷火の軍
王都から遠く離れた魔族領の一隅。
健二は、ランドルフ侯爵と共にひとつの大きな決断を下していた。
「俺たちだけじゃ足りねぇ。想いと力を持った奴らを集めよう。
人間だろうと魔族だろうと関係ねぇ。――傭兵団を作る」
それが、彼の口から出た言葉だった。
するとランドルフは頷き、静かに杯を置いた。
「よかろう。では、私が事務の中心を担おう。
貴様は戦の柱、ギルは現場の総括。私が全体をまとめる」
それは冗談半分のようでいて、実に現実的な采配であった。
健二もそれを理解し、ふと口元を緩める。
「頼りにしてるぜ、侯爵」
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【集う者たち】
翌日、魔族領の広場には驚くべき光景が広がっていた。
張り紙ひとつ、声がけひとつだけで――
魔術師、吸血鬼、獣人、亜人、隠者、傭兵、騎士崩れ、元貴族の落人――
あらゆる背景を持った者たちが集まってきたのだ。その数、一千人超。
だが、集まった者すべてを迎え入れるわけにはいかない。
国を創るには、力と人格の両方が必要だった。
こうして、健二、ランドルフ侯爵、ファルザス子爵の三名を中心とした大規模な面接と試験が始まった。
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【試験の日々】
その選考は極めて実戦的で、また厳正であった。
◆身体能力試験
剣術、徒手、魔術、それぞれの分野に応じた実力を確かめる。
◆協調性と忠誠度の確認
軍律を理解し、命令を守る意志があるか。健二の理想に共鳴しているか。
◆過去の経歴調査
過去に裏切りや反乱の兆候がないかを調べる。
中でも、リーファとギルは模擬戦の審査を任され、参加者の底力を見抜く役割を担った。
ある日は、吸血鬼の姉妹が二人がかりで健二に挑み、圧倒された。
またある日は、獣人の斧使いがリーファに真っ向からぶつかり、善戦した。
ランドルフ侯爵はというと、冷静に書類と人柄を照らし合わせ、
「こやつは帳簿向きだな」「後方支援に置け」と配属を指示していった。
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【一ヶ月の果て】
怒涛のような面接と選抜。
日が昇っては落ち、選ばれし者たちの姿が形になっていく。
魔術師部隊、斥候部隊、重装歩兵、遊撃隊、工兵団。
一つひとつが、健二の描く“新たな軍”の礎となっていった。
最終的に残ったのは――
◆戦士系 400名(亜人、魔族、獣人が中心)
◆魔術系 150名(魔術師、死霊術師、呪術師など)
◆後方支援・補給系 200名(薬師、大工、料理人、補給官)
◆情報・斥候系 100名(スパイ、隠者、狩人など)
◆予備兵・訓練生 150名(試験は通ったが未熟な者たち)
――計1000名の精鋭部隊が誕生した。
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「これが……俺たちの、“最初の軍”か」
健二は、闘技場跡地に設けられた訓練場で整列する者たちを見下ろして呟いた。
ランドルフ侯爵はその隣で腕を組み、短く言った。
「理想があるなら、まずはこの者たちを導け。
道を示すのが、主たる者の務めだ」
「――ああ。絶対、後悔させねぇ。俺たち全員にとって、後悔のねぇ国を作ってやる」
こうして、“雷火の健二”の旗のもとに集った一千の魂は、
いよいよ王国との戦争に向けて、動き出すのだった。




