力で示せ
静寂が戻った広間にて、魔族の重鎮たちがそれぞれの思惑と共に口を噤む中、ファルザス子爵が再び立ち上がった。
白銀の瞳が、まっすぐ健二とリーファを見据える。
「――一つ、提案がある。聞け、客人たち」
健二が無言で頷き、リーファは眉をひそめたまま子爵を見返す。
「お前たちには、我ら魔族の〈闘技大会〉に出場してもらう」
一瞬、場がざわついた。
「闘技大会……? あの〈血闘の儀〉か」
「まだ残っていたのか、あの古い習わしが」
ギルが小声で問う。「あれって、まさか――」
「そうだ」とファルザスが静かに応じた。「古より続く、魔族にとって最も分かりやすい選別法だ。力なき者は語る資格もない。異邦の者であれば尚のこと」
彼は杯を置き、声の調子を少しだけ落とした。
「神の騎士団と戦うためには、我ら魔族の戦士や技師、知恵者たちの協力が要る。
だが我らは、“血の言葉”よりも“拳”を信じる種族。言葉では仲間は集まらぬ」
そして、杯の中の深紅の酒を傾けながら言った。
「――勝て。優勝せよ。力でその価値を示すのだ。
さすれば、己の背に民が従う。お前たちの戦に、魔族が名を連ねることを許そう」
健二は視線を落とし、ゆっくりと拳を握った。
リーファもまた、静かに息を吐くと、言った。
「……理解しました。
魔族のやり方に従いましょう。私も健二も、戦う覚悟はとうに出来ています」
ファルザスは口角をわずかに上げた。
「よかろう。大会は三日後。出場者は百名を超えるだろう。
剣士、術師、獣人、吸血族、死霊使い…多種多様な猛者が集う」
ランドルフ侯爵が腕を組んで言う。
「勝てば、魔族の名誉と支持を得る。負ければ……?」
ファルザスは静かに答えた。
「――命までは取らぬ。だが、“名”も“志”も、ここでは死ぬ」
場の空気が重くなる。
しかし、健二は一歩前に出て、雷火の片鱗を右手に灯した。
「かまわない。おれは命を懸けてここに来た。今さら後ろは見ない」
リーファもまた、瞳に淡い緑の光を宿して微笑んだ。
「ならば私も。隣に立ちます。誰が相手でも」
その言葉に、魔族たちは小さく唸りを上げた。
まるで、獣が仲間を見定めるような眼差しで、彼らを見始めていた。
ファルザス子爵は、杯を掲げた。
「――ならば、祝福を。
“外より来た剣”と“神々の血”よ、闘技場にて我らを唸らせてみよ」
こうして、闘技大会参加が決定する。
健二とリーファは魔族の信頼を得るため、そして戦力を集めるため、血と闘志の儀式へと身を投じるのだった――。




