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マチオ式尋問

重く閉ざされた石の扉が軋んで開き、健二が入ってくる。

灯りは蝋燭一本。薄暗い牢の奥に、ボロ布を被せられた男――司祭が鎖に繋がれていた。

その口元は裂け、目元には拷問の痕が刻まれている。だが、なお狂信の色は消えていない。


健二は何も言わずに腰を下ろすと、手に持っていた細い金属線――針金を無言で取り出した。


「……またか。いい加減にしろ……」

司祭が嗤うように呟いた。

「何度やっても同じだ……我は神の言葉を守る者……貴様ら異端の言葉など、耳に入るものか」


その言葉に応えるように、健二は黙って針金を一本、左手の人差し指の爪の隙間に差し込んだ。

司祭が歯を食いしばる音が聞こえる。


次に、中指。


そして薬指。


「く……っ……」

口元から唸りが漏れるが、それでも叫び声はあげない。目にはなお、侮蔑と狂気が浮かんでいた。


健二は四本目、小指に針金を通した。深く、丁寧に。

そして、淡く発光する左手を添える。魔法陣の紋様が空中に浮かび――


「――雷火制流」


淡い青白い電流が針金を伝い、司祭の骨を焼いた。

「う、ああああああああああああっ!!」


全身を仰け反らせ、司祭が悲鳴をあげた。


そして――


「話す! 話すっ!!」


健二は電流を止め、静かに問うた。


「リーファは、何者だ」


司祭は肩で息をしながら、震える唇で言葉を紡いだ。


「……リーファ……あの少女は、神と勇者の血を引く……神聖な器……!」


「神と……勇者?」


「そうだ……神の娘にして、勇者の種が宿った……異端の象徴だ……だが、神に近づくためには……あのような存在を喰らわねばならぬ……」


健二の目が細められる。


「それが、お前たちの“儀式”か」


司祭は笑った。唇が切れ、血がにじむ。


「選ばれし者のみが神の騎士となれる……そして女神や勇者の血を食らえば、不老不死となり……魔力も……神の域に近づける……!」


健二の拳が震える。だが、そのまま続けた。


「公爵は……貴様らの仲間だったのか?」


司祭は目を細め、ほくそ笑んだ。


「……ああ。今回の件で貴様は、“ハーベン公”を殺したのだ……貴族会議では揉み消されるだろうが……いずれ必ず、追っ手が来る……」


健二は目を閉じ、深く息を吐いた。


「……この国は、思っていたより腐っているな」


司祭が何かを叫ぼうとした時、健二は指先で電流を切り、再び牢を静寂が包んだ。

その瞳にあったのは怒りでも悲しみでもない――ただ、静かな決意だった。

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