神の騎士団 四
狐目からの最後の情報、それは「神の騎士団の有力な地方支部が王都の南、交易の要衝ヴァルメル市にある」というものだった。
人口二万、王都に次ぐ規模を誇る街。石畳の広場と高くそびえる教会、往来する荷馬車と露天商。活気の陰に潜む不穏な気配を、健二たちは肌で感じていた。
「……分かれて行動しよう。ギル、お前は?」
「地元の商人ギルドに顔が利く連中がいる。そこを押さえれば、隠れ家と情報の両方が手に入る」
ギルは短く頷き、顔を隠すためのマントを深く被った。
「有力者への賄賂も用意してある。夕方には連絡を寄越す。そっちも気をつけろよ」
「任せろ。俺たちは神殿の連中を追う。尾行が可能ならそのまま、いけるなら突入だ」
健二はそう言うと、横に立つリーファと目を合わせた。
少女は緊張と覚悟の入り混じった瞳で、ただ小さく頷いた。
街の中心部、尖塔を備えた神殿には、既に複数の衛兵と、銀鎧の神の騎士団員が出入りしていた。
「支部長格の司祭は“セイラス”という男。昨日、街の貴族と接触してた。神殿内にいる可能性が高い」
ギルが残していった言葉を思い返しながら、健二とリーファは物陰に身を隠す。
リーファが呟く。
「……この街の神殿、他と違う。装飾が豪華すぎる。神を祀るというより、“力を誇示”してるように見える」
「だな。俺たちが見てきた地方の祠とは違う。ここは……要塞だ」
その時、扉が開き、一団が出てきた。
その先頭に立つのは、一目で分かる威圧感と高慢な歩調の男。身長は高く、金と黒を基調にした儀礼服を纏っている。
「……セイラスだな」
健二が呟き、リーファが後を追う準備を始める。
「人混みを利用してつけよう。見失すなよ」
「うん。でも……もしも戦闘になったら――」
「その時は、誰にも気づかれずに仕留める。静かにやるぞ。今回は“生け捕り”が目的だ」
そう言って、健二とリーファはセイラスの一行を尾行しはじめた。
日が傾き始め、ヴァルメルの街並みが金色に染まる中――
三人は別々の場所から、それぞれの手段で、神の騎士団の正体に迫っていく。
そして、事態はやがて“潜入”という言葉では収まりきらない、闇の深層へと足を踏み入れることになる――




