打倒子爵。健二の修行編 下
あの夜から、健二の修行はさらなる段階へと進んだ。
限界だった《雷火解放》の持続時間を延ばすため、己の肉体と魔力の限界を上書きする作業が始まった。
朝に起きればまず魔力制御の鍛錬。
昼は剣術道場で斬撃の修正。
夜には再び《雷火解放》を発動し、心臓を雷で打ち、血流を炎で駆動させて走る。
失神し、倒れ、吐血し、震えながら目を覚ます健二の傍には、
いつも冷たいタオルと光の魔法を灯すリーファの姿があった。
「……毎回こんなになるまで……」
「あと……もう少し、なんだ……あと少しで、あの男を超えられる……」
リーファは何も言わなかった。ただそっと、健二の額に手を当てる。
その指先に、微かに震える魔力を感じながら。
---
【精度の研磨──双剣の修練】
そして、魔力の持続時間が**“10分”**に到達したのは、発動から五十日目の夜だった。
その日、健二は吐血も失神もせずに、立ったまま術を解いた。
「……やった、立っていられる……!」
リーファが涙を浮かべながら頷いたのを、彼ははっきりと覚えている。
だが、戦いはそれだけでは終わらない。
健二は“剣”にこだわった。
リューン男爵との戦いは素手で敗れたが、彼の本領は剣士である。
次に挑む時は、“魔法剣士”として真っ向から立ち向かうと、心に決めていた。
---
彼は雷の剣に貫通力と振動破砕の性質を持たせ、
炎の剣には極小範囲の高温焼却と切断特化の熱線構成を施した。
その研鑽の果てに、彼の双剣は“ただの魔力の塊”ではなく、
意志ある刃として、戦場で通用する武器へと昇華していた。
雷鳴を孕んだ切っ先は鋼をも貫き、
紅蓮の刃は大岩を斜めに焼き裂いた。
その様を見ていた拳闘道場のドゥーガンが、ぽつりと呟く。
「……もうあの化け物とも、五分でやり合えるんじゃねえのか?」
---
街では噂され始めていた。
「リューンに、“雷火を纏う狂剣士”がいる」と。
その名はまだ知れ渡ってはいなかったが、
ある者は怯え、ある者は羨み、ある者は――戦いたいと願った。
だが健二が見ているのは、ただ一人。
リューン男爵――ライナス・グレイ。
その背中を、追い続けている。




