炎と雷で無双したい
入学式の日、空はよく晴れていた。
ランドルフ侯爵の計らいで、健二とリーファは魔法学院の入学を正式に認められ、他の貴族の子弟や推薦を受けた者たちとともに、重厚な講堂へと足を踏み入れていた。
そこには百人近い新入生が列を成し、壇上には学院長と各科の教師たちが並んでいる。
式は淡々と進んだ。
学院長は初めにこう述べた。
「魔術とは力ではない。理である。
理とは理解であり、制御であり、学びである。
したがって、この学院において“卒業”とは──魔術の原理を知り、自らの魔力を自在に操る者と定義される」
その言葉にざわめきが走った。
続けて学院長は宣言する。
「逆に言おう。原理を理解せず、ただ力を振るうだけの者に、卒業の資格はない。
ゆえに“卒業できない者”は、年を重ねても学院に残り続けることとなる。
卒業とは名誉であり、自由である。そして、責任でもある」
──つまり、どれほど年月を費やしても、魔術の本質を掴まなければ、ここを出ることは叶わない。
健二は静かに息を吐いた。リーファはどこか興奮気味に口元を引き結んでいる。
* * *
翌日から、早速実技の授業が始まった。
まずは基礎中の基礎、「属性の適性診断」だ。
これは魔力を発することで魔術の根幹にある“属性の傾き”を可視化し、その者の得意とする魔術の系統を割り出すというものだった。
診断は一人ずつ行われる。円形の祭壇の中心に立ち、魔力を流すことで、周囲に浮かぶ水晶のような石が反応する。
そして──
「……ふむ。これはまた……珍しいな」
先に診断を終えたのはリーファだった。
祭壇を囲む魔法石のうち、ひとつは翡翠のような風の色に、もうひとつはやわらかく輝く光の色に染まっていた。
「風と……光。複属性持ちか。しかも稀少な“光”を含むとは。お主、貴族か?」
「いえ。私は村の……ただのリーファです」
そうは見えぬとでも言いたげに、教師たちは驚いた面持ちで彼女を見つめた。
続いて健二の番が訪れる。
(俺にも、何か出るんだろうか……)
多少の緊張を覚えながらも、健二は拳を握り、魔力を指先からゆっくりと漏らす。
次の瞬間、石たちは強烈な光を放った。
赤い石が燃え立つように輝き、紫の石が高く震える。
「これは……雷と、炎……!」
「実に攻撃的な組み合わせだ。しかも魔力量も高い」
周囲から再びざわめきが起こる。
健二は驚きこそしたが、なぜか納得もしていた。
炎も雷も、自分の内側に眠る「怒り」や「激情」と相性が良いのかもしれない。
壇上の教師が言った。
「風と光の少女、リーファ。炎と雷の男、マチオ。二人とも希少な適性を持つ。これからの実技で期待している」
それぞれの名が記録に記され、属性ごとの講義と訓練が始まることになる。
──こうして、魔法学院での本格的な修行が、始まった。




