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お飾り結婚だからと自由にしていたら、旦那様からの愛が止まらない  作者: よどら文鳥


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23話 五分間の考え

「まずひとつ。借りたと言ったが勝手に借りたのか? そうでなければここに来るべき人間はガルム殿ではなく、子爵なのだからな」

「は……はい」

「ではガルム殿の父、バケット子爵はこの件を話しているのか? 今ここに融資を求め対談しにきていることや、ガルム殿が金庫の金貨を持ち出したことも含めてだ」

「い、いえ……」

「ならば直ちに話してくるがよい! 話はそれからだ」


 ハイド様の容赦のない発言がガルムの心臓をえぐっているかのようだ。

 私に助けを求めようとしないでほしい。


「ほかにも疑問があるのでしたら、そちらもお聞きしたいのですが……」

「どのようにして資金を集め返済するか聞きたい。なお、領地からの資金集めは禁止としたうえでの問いになる」

「そんな! 領民からの税以外でお金を集める……ということですか!?」

「そういうことだ。今考えていることを話してくれるだけでよい」


 ガルムは黙ってしまい、言葉がすぐに出てこなかった。

 すかさずハイド様からの指摘が続く。


「話を聞く限りガルム殿の不注意により生じたことだろう。その責任と賠償を領民にやらせる……などと思ったりしていないだろうな?」

「それは……いえ、でもレイチェル……じゃなくてレイチェル公爵夫人のためを思ってのことで仕方なく」

「ではなにをどう思って実行したのかという問いも増えるがよろしいか?」

「そ……それだけは……」


 ガルムが慌てふためいているが、ハイド様の質問が容赦ない。


「ガルム殿が今どう思っているのかはわからないが、これだけは言っておく。レイチェルは誰にも渡さない。たとえ誰であってもレイチェルを狙う者には一切の容赦はしない。絶対にだ!」

「は、はい……」

「そのうえでもう一度問う。領民からの資金集め以外でどうやって集める?」

「そ、その……」

「五分だけ時間を与える。今ここで答えられないようであれば融資はできないと思ってくれてかまわない」


 ガルムが必死になって考えている。

 こんなに必死になっている姿は初めて見たかもしれない。

 どんな答えが返ってくるのだろうか。


 私自身もほんの少し期待していたのかもしれない。

 ガルムの答えが楽しみになっていた。


「五分だ。答えを聞こう」

「は、はい! 資金集めですが……」


 ガルムが一度唾をゴクリと飲み込んでいた。

 ひと呼吸して、覚悟を決めるかのようにしてこう答えるのだった。


「今後入ってくる国からの給金でなんとか……」

「つまりガルム殿はすでに子爵として継承されると思っての発言か」

「そうです。だからこそ領地のことも考えてすぐに金貨が必要だと思っていますし、父上の足を引っ張らないようにしたいんです」


 ガルムが必死に訴えている。

 本心で思っていることなのかもしれないが、私には全く響かない。

 何度もバケット子爵の迷惑にならないようにと言ったことがあったが、全く改善されなかったのだから。

 おそらくハイド様も呆れていることだろう……。


 しかしハイド様はこくりと頷き、交渉を成立させるような仕草を見せた。

 えっ!? と心の中で思っていたが、そのまま心の中に止めるよう全力を尽くして我慢した。


「わかった。では最初の問いで言ったように、バケット子爵に全てを話してきたまえ。 今ここに融資を求め対談しにきたこと、ガルム殿が金庫の金貨を持ち出したことも含め全てだ」

「わかりました」

「もちろん後日バケット子爵にはこの件は確認をとる。余すことなく話すのだ。よいな?」

「は……はい。金貨を借りれるのであれば!」


 ガルムは怯えながらもゆっくりと退室していった。

 ハイド様はきっと貸すつもりなど考えていない。

 真実を白状させてしっかりと責任を取ってもらおうと誘導したんだ。


 私はそう思っていたため、それ以上のことは聞かないでおいた。

 こういった対談や交渉に関しては第三者が介入しない方がいい。

 モヤモヤしていはいるが、ハイド様もなにも言ってこないため私もこの件に関しては黙る選択をとった。


 しかし……。

 翌日再びガルムが訪れた。

 今度はバケット子爵も一緒に。


 私は対談の席にはいなかったが、どうやら本当に金貨の融資を行うらしい。

 帰り際のガルムの表情がそう主張していたのだ。

 バケット子爵はとても申し訳なさそうな雰囲気だったし、おそらく間違いない。


 モヤモヤは加速する。

 だが、ハイド様の行動や判断はとても信頼しているし不安はない。

 むしろ、そのうち話してくれるのだろうなという気持ちが先行しているため楽しみにしておこうと決めた。


 夕食時にハイド様はこう言っていた。


「これでレイチェルにまとわりついていた害悪駆除ができたと思うとホッとするよ」

「は、はい!?」

「さすがはレイチェルだとも思った。私のパートナーとして本当に嬉しいよ」


 後半の言っている意味がわからなかった。

 ただこれだけは理解できた。どうやらガルムはハイド様のなんらかの作戦に引っ掛かったようだ。


 ♢


 ハイド様がガルムに金貨の融資をしてからおよそ一年の歳月が流れた。


 その間にガルムはバケット子爵の後継人として子爵になった。

 だが、すぐに爵位を剥奪されることとなったのである。

 それはハイド様との契約に交わした規約に引っ掛かったからだ。


 しかもそれだけではなかった。

 ハイド様からものすごいことを知らされることになるのである。

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