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お飾り結婚だからと自由にしていたら、旦那様からの愛が止まらない  作者: よどら文鳥


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21話 訪問者

 こんなに幸せな生活が続いて良いのだろうか?

 ……と、ふと思ってしまう。


 お父様の領地運営はハイド様の手助けもあり順調。

 夜会をキッカケに仲良くなったみんなで定期的にお茶会をして女子会。

 お飾りでなくなったから、家事や掃除といったことができなくなってしまうかと思ったら、やりたいことなら自由にして構わないとハイド様からの許可を得た。おかげで使用人のみんなと一緒に布団干したり掃除したり料理もしたり。

 ハイド様との夜もようやく覚悟が決まり、時々夜明けまで寝れないこともある。


 今日は若干の寝不足ではあるが、やることは変わらない。

 午前のお掃除タイムが終わり、午後はエネたちとのティータイムでテラスで満喫中だ。


「奥様がここに住まわれてからもう四ヶ月になるのですね」

「あっという間でしたわ。奥様が来られてからは時間が過ぎるのが早い気がしますもの」

「楽しくなりましたものね。改めてありがとうございます」

「いえいえ、私はなにもしていないよ。むしろ……」


 おいしい食事、毎日違う服を着て自由な時間、夜はハイド様との時間、どれも幸せすぎて感謝したいのは私の方だ。


「お取り込み中失礼いたします」

「あら、どうしたのですかサイヴァスさん?」

「ガルム=バケットさんが奥様にご面会を希望されたいと申しておりまして……」


 表情がいつもより引きつった状態になっているのはそのせいか。

 ガルムは実質出入り禁止としている。そもそも元婚約相手がここに来ること自体がとんでもない話である。

 そのため、万が一来られた場合はハイド様に話が進んでいく。

 しかし、ハイド様はタイミング悪く外出中だ。


「用件はお聞きになられましたか?」

「言葉をそのままお伝えしますと、『レイチェルにしか頼めないことだから答えられない、ただしレイチェルを奪う気はない、それどころではないんだ今は』と申しておられたそうです」

「なにかあったのでしょうね」

「その……今にも死にそうな表情をしておられていたそうです」


 それを聞いて断ることができなくなってしまった。

 サイヴァスさんが状況まで説明してきたということは、本当に危機的状況でガルムを放置していたら死にかねないといったところだろう。


「わかりました。至急応接室へガルムさん’’だけ’’お通しください」

「かしこまりました。旦那様に代わり、私が命をかけてでもお守りしますゆえご安心を」

「冗談に聞こえないのが恐いですね」


 信用しているわけではない。

 あくまでも緊急性が高いから仕方なく話を聞くというだけである。

 これでろくでもない話だったとしたら、今後ガルムと関わることは一切なくなる。

 領土関係のお隣付き合いも終わるだろう。


 ♢


 応接室にはすでにガルムが待っていた。

 椅子に座ることもなく立ったままそわそわとしている。

 挨拶をしようとしたが、その前にガルムの交渉がいきなり始まった。


「金貨を……貸してほしいんだ……」

「はい?」

「レイチェルは金持ちだろ? 領地の金もたくさんあるだろ……?」


 今までとは違い、明らかに焦っているガルム。

 私の護衛役として同行してくれているサイヴァスさんは、早速ガルムを追放しようと動く。だが、それは私が止めた。


「ひとまず落ち着いてください。なにがあったのか話してくれますか? 今後とも’’可能であれば’’お隣同士の領主関係は良好にしていきたいと思っていますし」


 すでにガルムに対しての信用などない。それでも子爵側の領民が直接困るようなことがあるのならば助けられることは助けたい。

 そう思って話は聞く体制になっているのだ。


「金が……盗まれた」

「具体的には?」

「……父上の金が盗まれた」


 ガルムの言っている詳細はなんとなく想像がついた。

 おそらくはガルムの父親、つまりガルム=バケット子爵が領地運営用に管理していたお金がなくなったということだろう。

 その情報はお兄様経由で知っている。


「そうですか」

「なぜ他人行儀なんだ!?」

「他人でしょう?」

「いや……それはそうかもしれないが、もっと温情ある反応とか……そういったことをしてくれないのか?」


 バケット子爵が訪ねてこられたら違う反応をしていたことは間違いない。

 ガルムも本当のことを話してくれていれば、ほんの少しは同情していたかも知れないが……。


「具体的にはいくらほど盗まれてしまったのですか?」

「全部だ……」

「全部と言いますと?」

「領地で使う用の金全てだ」


 横にいるサイヴァスさんも、この件はなにがあったのかなんとなく知っている。

 私が話したわけではないが、噂というものは自然の広がっていくものだ。


「それほどの大事件にもかかわらず、どうしてバケット子爵は公言しないのでしょうか」

「それはわからない。とにかく大変な状況なんだ! だから力を貸してほしい!」

「おかしいでしょう? それほどの大金を盗まれたのなら、本来であれば国へ報告。そして国家勢力をあげてでも犯人探しをしますのに」

「そ……そうだが……」


 ガルムの口調が徐々にゆったりとしていく。

 まるで威厳ある態度が減っていくかのように。

 私は、こう答えるしかないだろう。

 ガルムに鋭い視線を向けた。

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