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海底の壁の向こう側で



「…」


静かに海の上をぷかぷかと浮かぶ。

待機状態の白夜を見て今の時間を確認する。


「…23時24分か」


気が付けば12時間以上海の上にいた。

長距離水泳なら世界とかギネス取れるんじゃないかってくらい泳いでは潜ってを繰り返した。


「…!!」


12時間以上続けた動きを再度繰り返す。

また潜ってパイルバンカーを構え、壁に向かう。

そこには人一人どころかAG1機が普通に通れそうなくらいの大穴が開けられていた。

俺の努力の結晶だ。

でもまだ終わりじゃない、俺の目的はこの壁をぶち空けて壁の向こう側にある反応が何なのかという事。反応は近づきつつあるが先の何かを拝めたわけじゃないしな。

そもそもこんな海底に黎蝶が拾える反応があること自体おかしい。


(もう少しなんだ…!!)


同じ行動を繰り返す。

何度も、何度も、何度も。

パイルバンカーの杭を一心不乱に叩き込む。叩き込むたびに湧き出す泡、破片、そして音。

もしかしたら本当に何もないかもしれないとかいう弱音や疑問を全て頭の中から償却する。

…すると。


――ボゴォッ!!


「!!!」


先程とは違う音を感じ取れた。

一旦両腕につけたパイルバンカーを消し、一応持ってきた水中用の懐中電灯で穴の中を光で灯す。

そこには。


(く、空洞だ!空洞につながったのか…!)


壁の先にまた別の空洞があることを確認した。

丁度、俺が普通に通れるくらいの穴が開いたので…一応空気を補給してから行こう。

ここからは慎重にだ、下手してこんなところで死ぬなんてことはしたくない。


「ぷはぁ!…ふぅ…!!」


海上に上がり目いっぱい息を体の中に取り入れて、潜る。

そして俺が開けた空洞の中に入る。

懐中電灯で周囲を確認すると、空洞があり道は上と下だけ。

んで…黎蝶から来る反応、それはこの上を指している。

じゃあ下は何なんだと疑問が浮かぶが、今はそんなことを考えている場合じゃない。


(とにかく上に…)


懐中電灯で上方向を照らしながら泳いでいく。

…周囲を見てもこれといったものもないな。空間として考えるならAG丸々一個通れそうなくらいで、まぁまぁ広い。


(…?)


とにかく上へ上へと泳ぎ進めていると…。


「…ぷはぁ!…ど、洞窟…?」


空気穴かと思ったらめちゃめちゃ広い洞窟につながった。

空気はやや薄いが…人は活動できるくらいだ。

とりあえず、水の中から出て洞窟に踏み入り、久々の地上で安心感と共に寝っ転がる。


「はぁはぁ…何だここ…?」


結構神秘的な場所だ。

観光名所にしたらそれなりに儲けそうだが…ここにたどり着く前に死にそう。

海岸からもかなり遠いし、訓練していない一般人がここまで来るのも至難の業だしな。

よし…ある程度地面の感触を噛み締めたし、進むか。

立ち上がって懐中電灯で周囲を照らしつつ洞窟の先を歩く。

周囲を見れば自然が作り出す美しさが広がっている。見たこともない石のようなものが輝き、聞いたこともない聞き心地の良い音が響き耳を刺激する。


「黎蝶」


身体から黎蝶を出して周囲に展開して反応をキャッチしつつ、洞窟内のマッピングを頭の中で立てる。


「…近い?」


洞窟としてはかなりの広さと長さを持っているが、キャッチした反応は目の前の二方向の分かれ道があり、反応は右側の先にあるようだ。

寄り道している場合じゃないし、このまま右に曲がろう。

左側の道を無視して、そのまま右側の道へ進む。

そこには…。


「!!!」


綺麗な球体型のバリアに身を包み、ボロボロのAGと…それに乗り込む傷だらけのやや赤色の髪色を持つ女性がAGと一緒に中心で座り込んでいた。


「これが反応の正体か!」


俺はすぐさま駆け寄ると共に白夜を装着し、このAGと状態を確認しつつ黎蝶で状態も確認。


「識別信号…『コマンド・ストリーム』!!」


識別信号を確認すると、相手の正体は…『コマンド・ストリーム』。

ジュリアスを含めたタービュランスの全員が探していた宝物が…今、俺の目の前にある。

しかも。生命反応を見る限りストリームは生きているが生命反応が微弱でかなり弱っている。

無理もない。ジュリアスがストリームを失ってから何年たっていると思っているんだ。

むしろ生きていること自体、奇跡だろう。てか、よく生きていたなと逆に驚きしかない。


「…状態はしれないか」


クソ…コマンドストリームの状態を知れない。

今までAGのチェック等々は椿にやってもらっていたからな、いざやれってなっても俺じゃ出来ねぇ。


「とりあえず…触れてみるか」


俺は…この球体のバリアに手を触れる。


「!?」


バチッと音が鳴り、白夜のシールドエネルギーにダメージが入った。

…カウンター持ちのバリアか。

となれば触れることはできない。


「…黎蝶も無理だな、隙間一つない」


恐らくになるが、この状態のコマンドストリームに黎蝶を放っても意味がない。

黎蝶が入る前にダメージを負ってしまう。

どうすると考え込んでいると。


『動力低下、残りパワーエネルギーが100を切りました。警告、警告、このままでは治療状態が出来なくなり搭乗者の生命にかかわります。今すぐにパワーエネルギーをチャージしてください』


コマンドストリームから鳴り響いた。

…この何十年間、ずっとパワーエネルギーを使い続け搭乗者の肉体を治療してきたのか。

すさまじいな、色んな意味で。


「だが、エネルギーが足らないだけなら問題は無いな」


俺は…黎蝶を右腕に纏わせる。

エネルギーの回復なら容易い。黎蝶には無尽蔵のエネルギーの生成及び吸収が出来る。

なら…エネルギーを作り出し、その一部をコマンドストリームに分け与えることも容易だ。

…俺がどれだけ赫蝶と翠蝶と過ごしてきたと思っている。こんなこと、練習せずに出来る。

黎蝶を放ち、コマンドストリームの球体のバリアを包み込むように黎蝶を纏わせ、中心部分に向けてエネルギーを放出する。


『パワーエネルギー、シールドエネルギー、ヘルスエネルギーの回復を確認。回復効率工場の為、完全防御形態を解除』


その音と共に周囲を包み込んでいたバリアが消えていった。

…これでコマンドストリームに信用されたってことかな。

俺は一歩バリアがあった境目を越えて、女性の元に近づく。


「この人が…」


タービュランスが血眼になりながら探したストリーム、かもしれない。

この人が本当にストリームなら…流石にこんな場所は見つけられないし、死んだって思うのもしょうがない。


「…コマンド・ストリーム。ログや起動履歴を見せてほしい」

『現在周囲でログ転送可能機器は識別信号白夜しかありませんがよろしいですか?』

「あぁ」


そうして白夜にコマンドストリームの起動ログが送られてきた。

…これは、すごいな。

俺の父さんと母さんが死亡したと思われる日に起動し、そこから今年の3月まで起動しっぱなしで、そこから再起動して今日までずっと動き続けたというログが残っていた。

起動内容は最初は戦闘などに使っていてが中盤から今日にいたるまで専用アビリティに尽力し搭乗者の治療に専念、か。

その影響か搭乗者の女性は定期的に覚醒しては寝てを繰り返している。

ずっとギリギリに立っていたんだな。


「とんでもないことをしてくれる」


ログを見た後に搭乗者のストリームと思わしき女性を見る。

気が付けば見る見るうちに傷が治っていく。

これがコマンドストリームの専用アビリティか…ジュリアスの言っていた通り回復機が故の力なのだろう。

…スペックがわからないのが惜しい。


「…」


そうして俺は隣に座り込んだ。

このまま黎蝶からエネルギーを送り続ければ傷は完全に塞がるが、問題は目覚めた後だ。

俺は今日にいたるまで何度も気を失ったり、死にかけたりしたが身体は全然動くし訓練の成果もある。

だが、この女性は今まで通り動くことはできないだろう。

今目覚めたとしても何十年も動いていないと思われる。肉体は成長しているだろうし、リハビリもできない。

ここでリハビリして外へ出るまで待っていられるかと言われれば無理だ。

栄養やら何やらが足らず、人知れず死ぬ可能性も高い。

…だが今は待とう。

この女性が目覚めてから、考えよう。


「俺も…ちょっと疲れたしな」


白夜を待機状態にしてその場で寝っ転がる。

忘れちゃならないが今は深夜で俺は何十時間も海の中に居て、何度も何度も壁を攻撃し続けた。

流石に…疲れた。


「…」


自然と俺の瞼が落ちていき、視界が真っ暗となり…俺は夢の中に一歩踏み出した。


◇◇◇


無限に続く暗闇。

無限に続く先が見えない道のり。


「ジュリアス、アテナ、イル…克樹博士、夏樹博士…」


私の記憶の中にある人の名を呟く。

返答は、やっぱりない。

…名前を呟くのはこれで何度目なんだろう。

もう数を数えるのはやめた。


「はぁ…本当、どこなのここ」


何度も考えた、ここはどこなんだろうって。

…思い返すあの時。

皆を逃がしてから鳥と一人で戦い、倒し切れるところで鳥が私を足でつかみそのまま海底へと沈み込んだあの時を。

何とか鳥の足を切り裂き逃げようとしたけど、身体は言う事を聞かずそのまま意識を失って…そこから暗闇の中を無我夢中に歩き続け、気が付けばこんな場所に。

最初も今もずっと暗闇の中。

先も後も、淡い光は一つもない。

あれから何日、いや何年たったんだろう。


「どうすれば…いいんだろう」


そう考えても今できることは歩き続けるだけ。

たとえ先が見えなくても、今できることをとにかくやる。

それが…私がスラムで覚えて、あの時までし続けたことだから。

…でも疲れてきちゃった。

眠くなってきたし、久々に寝ようかな。

そう思って私は足を止めようとした。


――次の瞬間。


「…ぇ?」


私が歩いている方向に光のオーブと黒色の蝶々が見えた。

その蝶々は光のオーブの周りを飛び、待っているようにも見える。

…私は久々に見た光に両手で触れた。


「――温かい」


久々に感じる温もりと温かみ、そして安心感。

すると蝶々がオーブに止まり…私を見てくる。

何故か、懐かしい気持ちに襲われると同時に周囲が光で包まれていく。

あぁ…やっと私はこの暗闇から解放される。


――何年待ったんだろう…。


そうして私は…地獄から解放された。


ーーー


「…んぅ…?」


目を覚ます。

肉体が信じられないくらい重いし、痛い。


『搭乗者が意識を取り戻しました』

「コマンド・ストリーム…」


久々に会う私のAG。タービュランスのジュリアス、アテナ、イル…皆を支える衛生兵。

…ここは何処なんだろうと思い周囲を見ると


「この黒い蝶々たちは…?」


私とAGを包み込むように球体を描き黒い蝶々が私を囲んでいた。

とりあえず動こうとすると、何かに私の右腕のアームが当たった。

下に目線を向ける。


「この子は…?」

「んん…」


一人の青年が眠っていた。

そして…私はこの子の顔を見た瞬間、克樹博士と夏樹博士がよぎった。


(すごく…二人に似てる)

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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